第9話 間食が増えた妻の最適化
「妻の、間食がちょっと多い気がして」
男性は少し言いづらそうに言った。
「結婚して、三年目です」
「三年」
「もともと、すごくスタイル良くて。同僚にも、美人な奥さんだなって言われてて」
「そんなこと言われてたの?」
女性が少しだけ嬉しそうに笑う。
「いや、ほんとに」
「……ふふ」
「今も、もちろん綺麗なんだけど」
「“今も”?」
「いや違う、そういう意味じゃなくて」
「記録を開始します」
「助かった」
「婚姻期間:三年。女性個体は間食頻度が上昇しています」
「言い方」
「男性個体は摂取量の増加を懸念しています」
「まあ、そうだね」
「でもさ」
女性が軽く口を尖らせる。
「仕事終わりって、お腹すくじゃん」
「それはわかる」
「ちょっと甘いもの食べるくらい、いいでしょ」
「……いいんだけどさ」
「解決策を提示します」
「はい」
「間食を“計画化”してください」
「計画?」
「一日の摂取量を事前に決定します」
「なんか管理されてる感じする」
「効率的です」
「楽しくない」
「補足」
「まだあるの?」
「間食を完全に禁止することも可能です」
「やめて」
「反動で摂取量が増加するリスクがあります」
「じゃあ言うな」
男性が小さく笑う。
「……別に、やめてほしいわけじゃないんだよ」
「うん」
「ただ、ちょっと気になっただけで」
「……気になる?」
「いや、その、健康的な意味で」
「ほんとに?」
「ほんとに」
女性は少しだけ考えてから、
「……じゃあさ」
「うん」
「一緒に食べる?」
「え?」
「間食」
「それ解決になってる?」
「楽しくなる」
「それは非最適です」
「いいの」




