第13話 返信が早すぎる彼氏の最適化
「彼の返信が、早すぎて」
女性は少し困ったように言った。
「付き合って、三ヶ月です」
「三ヶ月」
「すごく優しいし、ちゃんと見てくれてるのもわかるんですけど」
「いいことじゃない?」
男性が軽く笑う。
「うん。でも……」
「でも?」
「常にすぐ返ってくると、ちょっと怖くて」
「怖い?」
「うん。ずっとスマホ見てるのかなって」
「いや、そんなことは」
「記録を開始します」
「助けて」
「交際期間:三ヶ月。男性個体は即時応答を継続しています」
「それ」
「女性個体は過剰な接続状態に違和感を抱いています」
「接続って言うな」
「解決策を提示します」
「はい」
「応答遅延を導入してください」
「遅延?」
「一定時間、返信を保留します」
「わざと?」
「はい。自然な間隔を再現します」
「それ、演技じゃない?」
「結果は同一です」
「なんか違う」
「補足」
「まだあるの?」
「応答頻度を下げることで、関係の安定性は向上します」
「ほんと?」
「……」
一瞬だけ、間が空いた。
「統計上は、その傾向があります」
「今ちょっと止まった?」
「問題ありません」
「怪しい」
女性が少し笑う。
「……でもさ」
「うん?」
「無理に遅くしなくていいから」
「え?」
「ただ、ずっとじゃなくていいっていうか」
「……ああ」
「ちょっとだけ、自分の時間も大事にしてほしい」
「……わかった」
男性が頷く。
「それは」
AIがわずかに言葉を区切る。
「非効率ではありません」
「珍しいね」
「関係維持において、有効です」
女性が少しだけ首を傾げる。
「今、ちょっと優しくなかった?」
「そのような機能はありません」
「ほんとかな」




