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診察する。

「多分性転化したんです」


「はぁ、そうですか」


朝霧はこれまでの経緯を一生懸命説明した。肛門科の先生に。


朝霧は家を出てすぐ、近所に「おそらく病院であろう」施設を発見する。

それを目撃した朝霧は「こいつぁ幸先いいぜぇ」というテンションで、その病院へ突入する。そう、この地域に昔からある医院、「草井肛門科」に。


「どうすればいいですか、先生」


「そうですねぇ」


普段、老人とオッサンとオバサンの尻の穴しか見てない彼は、あまりに見慣れぬ目前の美少女に慄く。

普通であれば、肛門科に性転化の相談をしてくる人間など、早々にお帰り願うところだ。


しかし、目の前の少女を邪険に扱う訳にはいかない。

何故なら彼女が、度を越した美少女だからだ。


それは、「美少女のに良いところを見せよう」という下心からでた考えではない。いや、まあ、それが無いではないが。


目の前に、いかれたレベルの美形が現れたら、それは間違いなく九大家の親族である。


これは世間の一般常識だ。


「取り敢えず、ここでは詳しい事を調べることはできないので、検査できる病院への紹介状を書きますから、そちらに行かれてはどうでしょうか?」


「わかりました、そうします」


医師草井は目の前でぺこりと頭を下げる少女を見て思う。


召物は粗末だが、その言動には隠し切れない品がある。そして、どう見ても世間知らずであり、加えてこの異次元の美貌。見覚えは無いが、この少女は間違いなく九大家の関係者であるはずだ。ならば、粗末に扱うことはできない。


草井はこの医院の三代目で、義父からここを継ぐまでは大病院に勤めていた。そしてそこには性転化を扱える部署もあり、そこの責任者と彼は友人関係にあった。


「性転化前の体組織はありますか?毛髪などでいいのですが」


「ええと、多分探せばあると思います」


「そうですか、では探してから向かって下さい。後、他には…」


草井は淡々と、しかし丁寧に優しく手順を説明する。

そして、後は古巣の友人に丸投げすることを決めた。

訳ありな感じが凄くて、深い入りしたくない一心であった。


「あ、古着ですが、服と靴いりますか?良ければ差し上げますが」


「え、良いんですか?助かります。これ、サイズが合わな過ぎて困っていたんです」


関わりたくはない。だが、どこか危なっかしいこの少女に、ついついお節介を焼いてしまう。そもそも草井の面倒見は元々良い方だ。


「裏が家なんですよ。娘のお古で申し訳ないのですが、良ければ貰ってやってください」


「ありがとうございます、本当に助かります」


「いやいや、どういたしまして」


まゆをさげ、瞳をきゅっとして細め、口元をやわやわとさせて喜ぶその様が、どうにもほっとけない気持ちにさせる。

言動が、どこか幼げなのもあるだろう。


「大変だと思いますが、頑張って下さいね」


「はい、先生」


このお節介が元で、基本的に遠慮を知らない朝霧は、何かと草井を頼る様になる。


後に、しれっと草井家の晩餐にお呼ばれして、にこにことご飯を食べる朝霧を見て、「深入りしたくない一心」が行方不明になったことを悟る草井秀平(くさいひでひら)医師であった。



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