番外編 兄を手にかけた弟・④
……。
兄貴は三日間耐えた。
耐えきった。
腐った肉の塊みたいになり果てて、それでも生きていたんだ。
『アハハハハ!まだ生きているぞ、何て惨めなんだ!痛いな?苦しいな?辛いな?だがこんなものでは終わらせないぞ。
――もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと――痛めつけてやる!!!』
限界だった。
俺様は風の破壊魔法を放った。
どうか兄貴が今すぐに死ねるようにとそれだけを祈って、魔力の使いすぎで文字通りに血反吐を吐きながらさ。
そうさ、俺様が兄貴を手にかけたんだ。
大好きだったし、尊敬していたからな。
……それからは地獄だった。
巫女の姉貴を人質に取られ、ほとんど常に邪神に見張られて、ニンゲンを襲うように強要される。
ニンゲンは悲鳴を上げて逃げ惑って、あの時の俺様達みたいにニンゲンの男は家族を守ろうと必死に俺様達に立ち向かってきた。
殺す時の罪悪感と、手がニンゲンの血にまみれた時の恐怖に、俺様でさえ今でもうなされることがある。
『何も悪くないニンゲンを襲いたくない』と抗ったヤツもいたが、ソイツの家族は目の前で徹底的にいたぶられた挙げ句に殺された。
俺様は対抗策として魔石の研究を密かに進めさせながら、寝ても覚めても邪神をどうにかする方法を考えていた。
……俺様が魔王になったんだ。兄貴を手にかけて。
だから何が何でも邪神をどうにかしなけりゃならねえ。