↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/53

42話 領主の企て

 街道を走る馬車の車輪の音が、ガラガラと聞こえている。


 俺たちは今、領主の館に向かっているところだ。

 馬車の御者係は、ダイアとエレス。


 馬車の中には、俺とディナが乗っている。


「……本当に上手くいくのでしょうか?」

「大丈夫だって。任せておけよ」


 俺の言葉に、ディナは不安そうな顔をしている。

 これから俺がやる事が、常識から外れているからだろう。


 一時間前。


 ギルドで、俺たちはディナから衝撃的な事実を知らされた。


「え? ミトがこの国の姫だって言うのか!?」

「はい……ミトはこの国の姫……第一皇女ミト・アーヴァンド姫ですよ」


 言葉使いからじゃ姫っぽくはなかったが、どっか生意気そうな雰囲気はしてたからな。


 それがまさか姫様だったとは……そりゃ、エレスが怒るな。

 姫を呼び捨てなんかしてたら。


 何の目的で、この国の姫を拐ったんだ?


「まさか領主がミト姫を拐って、身代金とかを要求するんじゃないよな」


 金持ちが金持ちから、身代金を要求するなんて事があるんだろうか。

 ディナの着ている服が、安っぽい素材じゃないことは、なんとなくわかる。


 だからお金に困った領主が、なんて展開じゃあないとは思うが……


「少なくとも金品の要求は無いはずです……ただ、人質としての価値があると、父は考えたんだと思います……」


「人質としての価値? 姫さんなんかを人質にしたら、それこそ王様が黙ってはないだろう? どうして、そんな事をやったんだ、あんたの父親は?」


「そこは私が教えてやる」


 エレスの話じゃ、今の国王はミトをめちゃくちゃ可愛がっているそうだ。

 ミトの身の安全を考えて、簡単には手を出せない可能性があるそうだ。


 エレスの顔は苦渋の表情を浮かべている。


「……じゃあ、このまま黙ってるって言うのか?」


「そんなわけがないだろう! 私やダイア……ディナ様もミト様のことが心配に決まってるだろう! 貴様には分からんだろ、この気持ちが!」


「……わかる。ウチたちも、エミリアの事が心配だから……」


「っ!! そうだったな……すまなかった……」


 そうだ。俺たちもエミリアを拐われているんだ。

 こっちも同じくらい心配してるんだ。


 シロに言われて恥じたのか。それ以降、エレスはずっと黙ったままでいた。


「なあ……そろそろ教えてくれても、いいんじゃないか?」


 ディナは黙ったまま、少しの間顔を下に向けていた。


「わかりました……今からお話することは、他の人には話さないでください」


 ディナが目で合図すると、ダイアとエレスは部屋の外に出て行ってしまった。


「あれ? エレスさんとダイアさん……二人は急にどうしたんですか?」


「……用心に越したことはありませんから。二人には部屋の外で誰も近づけないように、してもらったのです」


 そんなに用心するくらい聞かれたくない事なのか。

 俺たちは、ディナの話を黙って聞いていた。


 領主の無謀と言える野望を。


 今から半年ほど前のことだ。


 領主が鬼人傭兵団を雇った辺りから、おかしくなってきたそうだ。


 ガラの悪い連中や、怪しい魔道士風の人間を屋敷に招き入れた出した。

 途中から帝国側の人が、屋敷に尋ねてくるようになった更に変わった。



 そしてひと月ほど前のある夜のこと。


 寝付けなかったディナは、喉の渇き潤すために食堂に向かっていたときのことだ。


 ふと、父親の部屋から、父親ともう一人誰かが話している声が聞こえてきた。


 そして父親はその誰かにこう言った。


 ――あと半年もあれば、あの憎らしいアーヴァンドを王座から蹴落とし、ワシが国王の座に就く日がくるのだ!


 その言葉からディナは、父親が国家への反逆を企てていると考えた。


 驚いたディナはすぐに部屋に戻り、友達であるミトに手紙を書いた。


 手紙を出して数日後。

 ディナの元に、ミトからの返事が来た。


 ディナには、そのことを調べて欲しいこと。

 調べた内容を、毎回手紙に書いて送って欲しいこと。


 ただディナ一人では危険なので、内偵を数人潜り込ませるから、上手く連携をとって欲しい。


 そう手紙には書いてあった。


 数日後。

 新しい使用人が増えたことは、言うまでもない。


 ディナはそれから調べた内容を毎回手紙に書き、ミトに送り続けた。


 魔獣を操る方法と、その道具を開発できたこと。

 それを使って、多くの魔獣に亜人、それと獣人を捕まえようと計画していたこと。

 帝国の人間に、決起するときには武力介入し、共に王都を陥落させる確約を取りつけたことなど。


 館内にいた連中の話を立ち聞きしたり、父親が留守の間に、書斎でそのような内容を調べたこと。


 ディナは出来るだけ事細かに内容を書き、手紙を送り続けたそうだ。


 おそらく内偵していた人物からも、報告が行っていたのだろうと、ディナは語った。


 そして今日。


 ミトはエレスとダイアを連れて、内偵と会うためにウォムの街へと来ていた。

 それを知っていたディナも、ミトに会うために街に訪れたところを、傭兵団に襲われたらしい。


「……そんな……領主様が王都に反逆を……」


 俺は領主がどんな奴かは知らない。


 ただシアンが驚いているということは、そんな事を考える人物ではないんだろう。

 少なくとも街の人たちの前では、そうだったんじゃないのか。


「……でもですよ? 仮にそうだとしても。その話を国王陛下にすれば……」

「……領主の娘の言うことを、信じてると思いますか? たかが小娘の戯言の一言で、片付けられて終わりです」


 十代の娘の言うことを簡単に信じる大人なんて、そうそういないな。

 せいぜい、事案が発生したときくらだろ。俺の世界ではな。


「う……そうかもしれないですが、それならギルドへ依頼して――」

「どうなりますか? すぐに調べますか? 父が館を調べさせると思いますか?」


 自分よりずっと年下に、言い負かされているからなのか。

 シアンは言葉を詰まらせた。


「もし、ギルドが動いたと知ったら……父はどんな手でも使って、ギルドを取り潰すでしょうね。

 そしてギルドの人たちに、賞金をかけるかも知れません……」


 ディナの言葉に、シアンは何も言い返せなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。