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40話 連れ去られた二人

投稿7日目で10000PV突破しました!


これも読んでくださった皆さまのおかげです。

ありがとうございます!

 ミノタウルスは、使いものにならないと判断したのか。

 斧だった武器を地面に投げ捨てた。


 捨てると同時に、ミノタウルスは両拳を前にし構える。

 どうやら肉弾戦に切り替えて、戦闘を再開ってわけか。


 大男総じて知恵が云々っていうのは、このデカブツには当てはまらないらしい。


 ミノタウルスは、脚で地面を引っ掻く仕草をしている。

 鼻息も荒い。威嚇か興奮しているのかのどっちかだろう。


 ヴモオオオオオオっ!


 ミノタウルスが突進してくる。


 毎回毎回、馬鹿みたいに叫びやがって。

 もっと静かに突進してこいって、教えてやりたいが……それはもう無理な話だ。


 猛スピードで突進してくるミノタウルスを、俺は横一閃に切り裂いた。

 何が起こったのか理解する間も与えずにだ。


 絶叫する間もなく、ミノタウルスは上半身と下半身を切り離され、その場に崩れ落ちた。


 崩れ落ちたミノタウルスの身体が、ブワァッと黒い霧に変わり霧散する。


 ミノタウルスが消えた?

 今まで倒した魔物は、そんなことはなかったんだが……まあ倒したわけだし、それはどうでもいいか。


 周囲を見渡す。

 市場は酷い有り様だ。


 壊れて潰れた屋台が、あちこちに見えている。

 屋台の持ち主たちは、散らばった屋台を片付けていたり、その前で泣き崩れたりしている。


 俺は他にも目を向けてみた。


 地面に転がっているはずの、傭兵たちの姿はどこにもなかった。

 あの混乱に乗じて、撤退したんだろうか。


「ディナ様っ! ご無事ですかっ!?」


 ボブショートの女性と長い三つ編みの女性が、ディナの元へと駆け寄ってきた。


「エレスさんとダイアさんっ! お二人も無事だったんですね!」


「はい、なんとか……鬼人傭兵団に囲まれて、ミト様とディナ様と離れ離れになったときは、どうしようかと……それで、ミト様は今どこに?」


 ボブショートの女性が、誰かを探すようにキョロキョロとしている。


「エレスさん、大丈夫ですよ。ミトならここに――え?」


 振り向いたディナは、言葉を失っている。

 さっきまで隣にいたはずのミトの姿が、そこになかったからだ。


「ミトっ!? どこにいったの、ミトっ! 返事をして!」

「……まさか……ミト様っ! いたら返事をしてください!! ミトさまーっ!」


 ディナと二人の女性は、必死にミトの名を呼んでいるが、ミトからの返事はない。


 俺としては早く帰りたいんだが、このまま黙って帰るのも悪いな。


「しょうがないな。俺たちも探してやろうぜ。シロ、エミリア」


 シロが俺の袖を、ちょいちょいと引っ張る。

 何か言いたそうな顔している。


「なんだよ、シロ。どうした?」

「……師匠。エミリアもいない」


 はい? エミリアもいないだと?

 そんなことがあるわけがない。


 さっきまでここにいたはず……って、ミノタウルスとの戦いに集中していて見てなかったな。


 もしかしたら、迷子になった可能性もある。

 あんのポンコツエルフが……見つけたら文句言ってやる。


「あの……お連れのエルフさんも、いなくなったのでしょうか?」


 心配そうにディナが尋ねる。


「ああ、いや。多分こっちは勝手にどこかに――」


「……いえ。もしかしたら、ミトと一緒に連れ去られたのかもしれません……」


 ディナがずいぶんと思いつめた顔をしている。


 そういえば、ディナとミトは傭兵団に追われていたな。

 それで連れ去られたと思っているのか。


 でも、それとエミリアがどう関係してくるんだ?

 たまたま背格好が似ていただけでなんて……あり得る……充分すぎるほどに。


 俺やエミリア本人ですら、ミトとそっくりなのを驚いていた。


 ましてやあの状況だ。

 傭兵団はどっちがミトかなんて、確認する暇があるわけがない。


 二人を一緒に連れ去ってしまえば、標的を取り間違えたなんて事にはならないからな。

 しかしシロに気づかれないで、よく連れ去れたな。


 でも、いったいどうやって? いや、それはどうでもいい事だ。


 今は、エミリアを助け出すことを考えないと。

 そのためには、この三人から事情を聞き出さないといけない。


「あんた達、教えてくれ。どうして二人が追われていたのかを……エミリアとミトは、今どこにいるのか、知っているんじゃないのか?」


「わかりました……ただお話するにも、もう少し落ち着いた場所がいいのですが……どこかそのような場所は、ないでしょうか?」


 そう言ったディナの顔は、困っているように見えた。


 まあ……こんな場所じゃ、たしかに落ち着いて話すことができないよな。


 落ち着いた場所っていうなら、テメングラトの塔の最上階が、一番適してるんだが……


 転移魔法が使えない現状じゃ、それも無理だな。


 牛馬車亭はどうだろう。

 いい雰囲気の店ではあるが……あそこも落ち着いた場所とは言い難い。


 どうこかないか? 落ち着いて話せる場所。


「……ねえ、師匠。ギルドならどう?」


 ギルドか……一階は依頼者や冒険者がいるから、落ち着いてとはいかない。

 ただ、ああいう場所には、会議室とか来客用の部屋とかがありそうだな。


 シロ、ナイス提案だ。


 俺はシロを褒めるように、頭をくしゃくしゃと撫でた。


 表情は変わっていなかったが、シロの尻尾は嬉しそうにブンブンと動いていた。


 俺たちはシロの提案を採用し、ギルドへと向かった。








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