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39話 召喚獣ミノタウルス

「ば、馬鹿な! たった三人でこれだけの人数を……だと!?」


 また一人残されてしまった傭兵。

 眼前に広がる光景に、彼は呆然としていた。


 人数的には優勢だったはずの鬼人傭兵団が、今は全員が倒れているからだ。


 市場になだれ込んできた二十人ほどの傭兵団。


 俺たちを取り囲んだ時は、勝ち誇ったように高笑いしてたからなぁ。

 それがあっさりと倒されたら、呆然とするよな。


 エミリアも魔法を使って、がんがん傭兵を倒していた。

 シロも奮闘して、バンバン倒していったからな。


 俺の出番が、あまりなかったのは残念だったけど。


「なあ、もう諦めて帰ったらどうだ? これ以上は時間の無駄だと思うが」


「だよなぁ、兄ちゃん! もう少しで五人分が出来るから、待ってろよ!」


 屋台のおっさんが、話に割り込んできやがった。


 五人分って、俺とシロとエミリアと……ああ、ミトとディナって子の分まで焼いてるのか。


 と言うか、このおっさん。

 俺たちが傭兵たちと戦っている間も、黙々と串肉を焼いていたな。


 俺は、このおっさんに商売人魂を見た気がする。


「……くくく……あははははは!」


 なにがおかしいのか。突然、傭兵が笑いはじめる。


「我々に失敗は無い! 確実に依頼を成功させるのが、我々鬼人傭兵団だ!」


 傭兵はなにか小さい物を取り出すと、それを突然宙に投げつけた。


「あれは召喚球! カケルくん、シロくん! 今すぐにそこから逃げるんだよ!」


 エミリアが叫んだのと同時だった。


 ズンっ! と、地響きと共に何か大きな影が降り立った。

 牛の頭に人の身体を持った魔物……


 ――ヴモオオオオオオっ!!


「ミノタウルスっ! 邪魔する連中は皆殺しにしろっ!!」


 あれがミノタウルスっ!?

 ゲームとかで見たことがあるが……デカすぎないか!?


「召喚獣ミノタウルスじゃないか! あれ一匹で一個小隊を壊滅できるくらいだけど……あの大きさのミノタウルスは伝説級だよ!

 すごいね……文献でしか見たことがなかったけど、まさか本物に出会えるなんて、幸運だよ!」


 幸運だよ、じゃないだろ!

 しかも伝説級ミノタウルスだって?

 あのエミリアが、興奮するくらいすごい化け物って事か。


 ミノタウルスの背丈は、ゆうに四メートル以上ある。


 手にはミノタウルスと同じサイズの斧。

 しかもその斧の刃の部分だけでも、一メートルはありそうだ。


 こんなヤツと、まともに戦えるんだろうかって……あれ? ミノタウルスに踏みつけられた場所は……


「お……おれの屋台があ!!」


 おお、おっさんも無事だったのか、よかった!

 シロがあの一瞬で、連れて逃げてくれたのか。さすがシロだ、頼りになる弟子だ。


 って……おれの屋台……屋台ぃ!?


 ミノタウルスに踏みつけられて、バラバラになっているのは……串肉の屋台じゃないかっ!


 串肉がぁ……俺の串肉が……


「許さねぇ……絶対に許さねぇ! 食い物の恨み、思い知りやがれっ!」


 ミノタウルスも傭兵も、食い物の恨みの恐ろしさ。身をもって知るがいい。


 腰の剣を抜き、俺はミノタウルスの前に立つ。

 改めて見るとヤツの大きさが実感できる。


 斧もミノタウルスも規格外の大きさだ。


 ヴモオオオオオオっ!!


 ミノタウルスは、自分の力を誇示するかのように斧の振った。


 ゴオっと言う音と共に、捲き上る風圧。


 うぉ!? なんつう風圧だ!

 周りにあった他の屋台が、あんなにバラバラに飛び散ったぞ。

 ミノタウルスの力がすごいのか。斧の威力がすごいのか……いや、その両方がすごいんだろう。


 ヴモオオオっ!!


 ミノタウルスは再び雄叫びをあげ、突進してくる。


 縦横無尽に繰り出される斧の攻撃。

 それを避けて反撃を試みるが、斧の動きが速すぎて決定的な一撃を当てることができない。


 オートアビリティ『予想』も使っている。

 それでも一撃が決まらないのは、ミノタウルスの動きが無茶苦茶なんだ。


 規則的な動きなら読みやすいんだが、こうも変則的な動き方をされると、避けるのが精一杯だ。


 まずはあの斧をどうにかしないとな。


 加速スキルを使うか? いや後のリスクが大きすぎる。

 不測の事態があった場合、対処できない可能性がある。


 どうするどうするどうしよう……そうだ。アレを試してみる価値はある。

 アレならリスクは最小限で抑えられるはずだ。


「どうしたっ! ミノタウルスに臆したかっ!? ならば諦めて死ねっ!!」


 うるさい傭兵だ。

 俺は臆してもなければ、諦めて死ぬつもりも無い。


 ミノタウルスの攻撃を避けながら、俺は剣に魔力を流し込む。


「頼む、上手くいってくれよぉ! (まと)え炎をっ!」


 言葉を発した瞬間。


 魔法の炎が剣を包み込んだ。だが――

 剣をまとっていた炎は、一瞬にして消えてしまった。


 失敗!? いきなりぶっつけ本番じゃ、成功しないのか……って、お……おおお!?


 魔法剣は失敗したと思っていたが、そうじゃなかったみたいだ。


 炎は出ていないが、剣の黒い刀身が真っ赤な色へと変わっている。


 もしかして、炎の魔法が剣の中に宿ったっていうのか?

 ……考えても仕方がない。


 やってやるさ!


 俺は真っ赤になった剣を、まっすぐに構える。

 ミノタウルスも攻撃の手を止め、一定の間合いを取っている。


 野生の勘ってヤツか?

 ミノタウルスも、この魔法剣に何か感じているのか。


 ミノタウルスは対峙したまま動かく気配がない。

 時間だけが経過していく。


 ――ヴォモオオオオオっ!!


 痺れを切らしたのはミノタウルスだった。


 斧の柄を両手で握りしめ、高く掲げた斧を俺に向かって、一気に斧を振り下ろしてきた。


 さっきまでの攻撃よりも、断然威力もスピードも違う。


「串肉の恨み……受け取りやがれぇっ!!」


 上段から振り下ろされた斧の刃先を、剣で受け止める。


 押しつぶされそうな重圧が、俺の両腕にのしかかってくる。


 斧の刃先を受け止めた剣が、徐々に食い込みはじめている。

 高熱を宿した剣が、ミノタウルスの斧を焼き切ろうとしているからだ。


 もちろんそれだけじゃない。スキル『剣聖』が大きく影響しているのもある。

『剣聖』スキルのレベルが上がったとき、俺は『斬鉄』を覚えていた。


 相手の力を利用し、そこに『斬鉄』と魔法剣の力を加えれば、ただの鉄の塊りなんて簡単に――


 斬れるっ!!


 俺は剣を一気に振り抜いた。


 一刀両断された斧は、重い音をさせて俺の背後に落ちた。


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