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35話 シロにジョブを【その1】

「ウチも強くなりたい」


 弟子入り34日目。


 唐突にシロが、俺とエミリアにそう言った。


 俺が魔法を上手く使えるよう、エミリアに魔法の勉強を教わってる最中にだ。


「お、おう……急にどうしたんだ、シロ」

「ウチももっと強くなりたい……」


 シロは俺の『剣聖』レベル上げに付き合い、以前よりも強くなっているはずだ。


 なのに、なんで今以上に強くなりたいって言うんだ?


「ふむ……じゃあ、強くなろうよ。シロくん」


 エミリアなにを言ってるんだ?

 じゃあ強くなろうよって……そんなに急に強くなれるものなのか?


「本当!? ウチ、強くなれる?」

「ああ、ホントさ。ね、カケルくん」


 俺に同意を求めるな。

 どうやったら強くなれるって言うんだよ。


「なあ……シロに適当なこと言うんじゃ……」

「……適当?」


 出た!

 エミリアお得意のキョトン顔!

 本当に分かってるのか、コイツは。


「あのねぇ。ボクが適当なことなんて言うわけないよ! それにホントに強くなる方法があるんだ」


 いや……まあまあ適当なことを言ってた時なかったか?


 顔を膨らませて、ぷりぷり怒ってるようだけど。

 そんな方法があるのか?


「エミリア! 早くその方法を教えて!」

「そんなに慌てないで、シロくん。まずは落ち着きなよ」


 エミリアは落ち着かせるように、慌てるシロの頭に手を押しつける。


 躾けられた犬のように、シロはおとなしくなり、尻尾をフリフリしてる。


 完全に飼い主とペットの関係だな……酷い言い方だけど。


「で。適当じゃない方法ってなんだ? 強くってどうやるってんだ?」


 エミリアは、にっと自信ありげに微笑んで答えた。


「シロくんに、職業(ジョブ)を授けて貰おうかなって、さ」


 エミリアはいろいろ考えてたみたいだ。

 シロは以前よりも強くなっている。


 でも、それは犬人族の特有のものだ。

 強くなるにも限界があり、頭打ちになるのは目に見えていたそうだ。


 俺もシロを強くしてやろうと思ってはいたが……エミリアの方がシロの未来(さき)のことを考えてたなんて。


 師匠失格だな、俺は。


「さあ、行くよ。シロくん。カケルくん」

「行くって、どこにだよ?」

「もちろん! ウォムの街さ!」


 いつもの転移魔法で、俺たち三人はウォムの街へ跳んだ。



 ウォムの街に着いた俺たちは、街中央部にある教会へと向かった。


 厳かな雰囲気の教会だ。


 教会なんて場所に来ることは無かったから、新鮮な感じがする。

 シロも落ち着かないのか、それとも珍しいのか。

 建物の中をキョロキョロと見渡している。


 よく有りそうな木製の椅子は並んでいない。

 広い空間に、天井支える柱が等間隔に並んでいる。


 その先の二段高い場所に、青い法衣のような物を着た神官らしき人物が立っていた。


「ようこそお出でなさいました。今日はどのようなご用件で?」


 物静かに語りかける長身の女性。

 物腰も柔らかそうな雰囲気の人だ。これが神官さんなのか。


「ああ。今日はこの犬人族のシロくんに、職業(ジョブ)を授けて貰うために来たのさ」


 神官は優しそうな瞳で、シロを一瞥すると、


「……わかりました。では……職業は何になさいますか? ご希望の職業があれば、仰ってください」


「ウチ、強くなれればなんでもいい」


 シロは拳を力強く握りしめ、神官に力説している。


「いや、なんでもはないよ。シロくんは種族特性を活かせる職業がいいんじゃないかと、ボクは考えていたんだよ」


 種族特性ね。

 犬人族の種族特性が何なのかは、俺は知らない。


 ただ、一緒に戦っていてわかっている事がある。


 シロは妙に打たれ強い。ある程度の攻撃ならかすり傷すら負わない。

 あとは鋭い爪での攻撃か。これが結構強い。

 岩系の魔物の表面を切り裂いたこともあった。


 あれ? こんな職業って確かにゲームであったような……そうだ!


「シロは武闘家がいいんじゃないか?」

「シロくんには、武闘家が似合ってるよ!」


 うん? エミリアも同じ意見か?


 エミリアも驚いた顔をしている。


「……へえ〜……さすが、シロくんの師匠だね。ボクも武術系がいいんじゃないかと思っていたんだよ」


 妙に感心されている気がする。


「まあ……そっちの方が似合ってるしな。シロが魔法や剣を使う姿が、想像できなかったからな」


「だね。シロくんは徒手空拳の方が似合ってるよ」


 俺たちの意見は出た。

 あとはシロ本人がどう思うかだ。


「シロ? お前はどうなんだ? シロは素手で戦うスタイルのが似合ってると思うんだが……」


「……ウチも自分の拳と爪で戦うほうがいい」


 どうやら決まったようだな。

 あとは職業(ジョブ)を授けて貰うだけだ。


「決まったようですね。それでは……武闘家の下位(クラス)の闘士の職業(ジョブ)を授ける準備に取り掛かりましょう」


 神官はそう言って、なにやら準備を始めだした。


 いきなり武闘家じゃなく、下位職業は闘士って言うのか。

 下位戦士と同じなのかな。


 でも、ここから職業をクラスアップさせていけば、シロも強くなっていくわけだ。


 それは楽しみだな。シロがどれだけ強くなっていくのか。



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