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おじさんはおいしい2


ぐまい?


愚妹かな?


それと縮んでない?


大きな姿と人間の姿は自由に変えられるのか?


分からないことだらけだな。


「妹さんですか?」


「はい、未熟ゆえに傷つきそちらへと迷い込んだのです」


ここにいるってことは助けられたってことか


「良かったです。助かったみたいで」


血を飲ませたことが助けになったのかは分からないが、なんにせよ良かった。


「ああ……なんというお言葉、見ず知らずどころか異物でしかない愚妹を助けていただいた上に良かったなどと……」


涙ぐまれても困る。


俺が俺の為にやったことなんだから感謝されるいわれはない。


「いいんです、好きでやりましたから」


「このような聖人君子を失わせるところだったとは……恥を知りなさい!!」


「んっ!?」


大声の規模がすごい、声というか咆哮だ。


「本来ならばここで顔を出すことすら憚られるのですが、ケジメがありますので。顔を上げなさい」


微動だにしなかった土下座の人が顔を上げる


「っ!?」


その顔はひどくやつれていたが、確かに目の前の女性と顔立ちが似ている。


「この度は……我が身を助けていただいたこと誠に感謝いたします」


掠れた声で告げられたがこっちは気が気じゃない。助けられたはずなのに今にも死にそうじゃないか。


「どうしたんですか、そんなにやつれて……」


「これがケジメです、愚妹は死の間際であなた様に生かされました。つまりは一度死んだのです。生きるも死ぬもあなた様次第。あなた様が与えるもので生き、あなた様が死を望めば死ぬ。そういう誓いを立てたのです」


いや重いよ。


「どうか命じてください。目障りならば消えろとおっしゃれば宜しいですし、生かすならば側にお引き寄せください」


せっかく助けたんだから生きていてほしい、がそれで俺に縛られるというのは違うだろう。


そこまでは責任持てない。


「その誓いを破棄させることってできますか」


「可能です、そう命じればよろしいのです。恩を忘れ自由になれとおっしゃればその通りになります」


良かった、破棄が不可能なら困るがそうではないようだ。


「じゃあ、恩を忘れて自由に「ぐすっ……くっ……ふっ……ずずっ……」


肩を震わせて泣き始めてしまった。なんでだ自由になるのに。


「えっと……?」


「申し訳ありません、今すぐ黙らせます」


扇子のようなものを振り上げている、殴って黙らせるのか!?


止めねば。


「いや、なんで泣いているのか聞いてもいいですか?」


「……それは愚妹の口からということでしょうか」


「そうです」


「……分かりました。発言を許します、その醜態の理由を話しなさい」


「我が身は……既に我が物ではありません。いわば主の慈悲で存在しているものです……主に捨てられたならばどうやって生きればいいのか……恩を忘れることなど……とても……何卒……侍ることをお許しください」


主呼びが気にかかったが……まずいな、そこまで言われるとは思わなかった。


ここまで不安定な状態を放置するのも気がひける、一時預かりにして時が来たら開放すればいいだろうか。


「私は聖人君子などではありませんし、特別なことは一つもありません。それでもいいですか」


「ありがとうございます……」


平伏してしまった、ここまでかしこまられると逆に居心地が悪い。普段はかしこまる側だったからな。


「生かすのならばお引き寄せください」


伏せてある手を引いた。


「これで正式に縁が結ばれます」


「えにし?」


女性がにやりと笑った。


「計画通りです」


「え?」


両肩が掴まれる。


「え?」


なにこれ万力かな、体が全く動かないんだけど。


「あーん」


目の前で妹さんが獣顔状態で大口開けてるんですけど。


やっぱり食われるのか!?


「うわあああああああああああ!?」


べろり。


「ん?」


べろべろり。


「えっと……え?」


猛烈に顔を舐められている。


「くーん」


いやくーんじゃないでしょ、頭を擦り付けられても困る。


「あの……説明を……」


「あら?分かりません?」


一気にくだけたなこの人。


「一体全体何が何やら」


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。あなたがとびきりおいしいだけです」


「は?」


「聞こえませんでしたか?あなたが非常に美味しいんです」


美味しい?


「あの……私はこれから食べられるんでしょうか?」


「ええ、妹に食べられます」


やっぱりかぁ……


「……出来るだけ痛くないようにお願いします」


生かすために死ぬならまあいい方だろう。


「うふふふふふ!!」


そんなに笑わなくてもいいじゃないか、どうせ餌としか見てなかったってことか。


「姉者、脅かすのはそれくらいでいいだろう」


うわ、いつの間に戻ったんだろう。


「ごめんなさいね、あんまりおかしいものだから」


こっちは諦めに入っただけだ。


「姉者のそういうところは、我よくないと思う」


「あらあら?そんなこと言って良いのかしら。いきさつを洗いざらい話してしまっても良いのよ?」


話についていけない。


今はなんの話をしているのだろう。さっきまでもかっちりした雰囲気はどこへ行ったのだろう。


「うう……それはやめて欲しい。恥知らずの我といえど限界というものがある……」


「じゃあ説明お願いね、私は忙しいから」


あ、いなくなってしまった。


「えっと……どういうことですか?」


「騙そうとしていたわけではないのは分かって欲しい……さっき主から手を取ったのは縁というの儀式の最終手順なのだ」


「はぁ」


「簡単に言うと、主がこの世界で喰われぬようにするために印をつけたということになる」


「印ですか……」


「うむ、主のような迷いは……その……大変美味なのだ。さっきは丑虎の奴に絡まれたそうだがいきなり食いつかれてもおかしくなかった」


そんなに美味いのか……俺。


「それで安全に行動するためには誰かとも縁を持たなければならない、持ち物を勝手に害するのはご法度だからな」


法があったのかここは……思ったより高度なのかもしれない。


「人間と縁を結ぶためには人間から触れてもらわなければいけない、そうでなければ勝手に縁を結んで独占できてしまうからな」


「そんなに人間は貴重なんですか……」


「貴重……というか……消費が早いというか……取り敢えずは価値があると思ってもらえれば良い」


「ちなみに、さっきまでのはなんだったんですか?最初から言ってくれれば面倒なことをしなくて済むでしょう?」


「さっき主がいらないと言えば我はこの場で自害していたが?」


「え?」


「ケジメというのは本当だ、堅苦しく話さないのは縁を結んだからでそうでなければこのように話すことはなかった。事実我は願掛けで主が目を覚ますまで何も口にしていない」


「でも……」


今は全然やつれていない、むしろはつらつとしている。


「それは……その……主を食べたから」


顔を赤らめられても覚えがない。


「食べた、舐めたではなく?」


「縁を結ぶというのは専属の嗜好品であるということだ、人間は全身が生に満ちている。故に触れるだけでも良いが直接吸収すればその効率は跳ね上がるのだ」


美味しいってそういうことなのか。


「無論味もすこぶる良い、表皮でこれなのだ。肉や血など食べようものならば一口で虜になってしまうだろうな」


「血、飲んだよ?」


「は?」


「君を助ける時に血が足りないって言ってたから、俺の血を飲ませたんだけど……覚えてない?」


「あの天上の甘露は主のだったのか!?」


天上の甘露ってもう何が何だか。


「主!!」


なんだ、また土下座になったぞ。ジャンピング土下座だな


「小指の先からでも良いので、血を恵んではくれないだろうか!!」


「丁重にお断り致します」



























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