第11話 ショタの皮を被った変態に、平和の象徴(鳩)を授けてみた
「——我は、神である。
全知全能にして、無限の英知をその双眸に宿し、運命を——」
……あー、ごめん。やっぱり無理。
この「神っぽい前口上」、10回超えたあたりから羞恥心がマッハで加速してくるわ。
読者も「はいはい、わかったから」ってスクロールしてるだろ、これ。
よっ! 今日も今日とて全知全能、ゼウス様だよ!
今回のオトモは「ハニーバター味」。
この甘じょっぱい感じ、神への冒涜だろ……。と言いつつ手が止まらない。これを作った人類は、ある種、俺を超えてるね。
「ゼウス様! 自分の世界を自画自賛するのか貶すのか、どっちかにしてください!
ほら、第11話ですよ。今回用意した『救済対象』は、今まさにアニメ化もして絶好調な『魔術オタク』の少年です!」
呆れ顔でモニターを指差すのは、女神アテナ。
タイトなスーツ姿で仕事できるオーラを出しているが、口の端にハニーバターの粉が付いてるぞ。お前、俺が喋ってる間に一枚掠め取ったな。
「で、今回はどんなやつ?
そろそろ普通の剣士とか聖女とか、見飽きたんだけど」
「ふふん、今回は『転生ショタ王子』ですよ!
魔術への執着心が強すぎて、自分の体にさえ魔術をかけるのも厭わない。
見た目は天使、中身は狂気の魔術ジャンキー……そんなギャップがたまらない『第七番目の王子様』です!」
……。
「ねぇアテナちゃん。
その主人公の名前、なんていうの?」
「『ロイ』くんです! 絶大な魔力を誇る王国の第七王子ですね」
「はい出たー!
元ネタの『ロイ◯』から最後の一文字ぬいただけじゃねーか!
しかもまた『第七』かよ。一から六までの兄貴たちは何してんだよ。補欠か? 予備パーツか?
だいたいどの作品も、第七王子だけ異常に魔力が高いの、不自然だと思わないの? 確率論的にいっておかしいだろ!」
「いいんです! 数字の『7』はラッキーセブン、つまり主人公補正の証なんです!
見てくださいよ、ロイくんのこの魔術への純粋な瞳を!」
画面の中では、まだ十歳にも満たない可愛らしい少年・ロイが、巨大な書庫で魔導書を読み耽っていた。
……が、次の瞬間。
新しい魔術の術式を発見したロイの顔が、突如として劇画調に変貌した。
『……っ! なんだこの術式は……ッ! 素晴らしい、素晴らしすぎるぞ……ッ!!』
頬を赤らめ、鼻息を荒くし、目を見開いてヨダレを垂らすショタ王子。
背景には禍々しいオーラが渦巻いている。
「おい待てアテナ!!
今、ロイ(仮)くんの顔、完全にホラー映画の犯人側になってたぞ!
ショタキャラの皮がベリベリに剥がれて、中から『作画カロリーの無駄遣い』みたいな劇画が漏れ出してただろ!
これ、お母様とかに見られたら一発で精神科送りだぞ」
「これが『魔術愛』という演出なんです!
彼は魔術のためなら、自分の血を入れ替えたり、禁忌の召喚術を使ったりするのも平気なんですよ!」
「ただの変態じゃねーか!
ほら、なんか今も『面白そうだから』って理由で、隣の国の古代兵器を素手で解体し始めたぞ。
周囲の騎士たちが白目剥いて泡吹いて倒れてるのに、本人は『あはは、これどうなってるんだろう!』じゃないんだよ。
倫理観がマリアナ海溝より深く沈んでるわ。誰かこのガキに道徳の教科書をプレゼントしてやれ」
「無邪気な強者……尊いです……(サクッ)」
アテナが感極まって、俺のハニーバターを奪っていく。
「よし、決めた。
この『ショタの皮を被った魔術ジャンキー』、俺がたっぷりお灸を据えてやる。
せっかくの可愛らしい外見が台無しになるような、とっておきの『神のスパイス』だ」
「ゼウス様! ロイくんの純粋な探究心を邪魔しないでください!」
「——『魔術に興奮するたびに、鼻から「鳩の鳴き声(爆音)」が流れる』。
これな!」
「平和の象徴が、一番不吉なところで叫ぶやつーーー!!」
画面の中では、ロイが巨大な魔王の封印を解き、その強大な力に触れようとしていた。
シリアスな音楽が流れ、ロイが恍惚の表情で呟こうとする。
『……ついに会えたね。君の術式を、隅から隅まで舐めるように——』
『ポッポォォーー!!(爆音)』
『……えっ?』
ロイの鼻から、平和の象徴(の鳴き声)が響き渡る。
『……なんだ、今のは。
気を取り直して。さあ、僕に君の神髄を(ポッポォォーー!!)』
「ギャハハハ!
完全に『迷い込んだ鳩』だよ!
どんなにドSなセリフを吐いても、鼻から鳩が鳴いてちゃ台無しだわ。
魔王も困惑して『帰れよ』って顔してるぞ!」
「ひどいです! 緊迫したクライマックスが、一瞬で『平和な駅前広場』の空気になっちゃいました!」
アテナの絶叫をBGMに、俺は最後のポテチを口に放り込む。
ハニーバターの甘じょっぱさと、鳩の鳴き声。意外と合うかもしれない(合わない)。
「あー面白かった。やっぱり変態には鳩がお似合いだね。
さて、アテナ。次はどうする?
そろそろ、もっと『地道な作業』で無双するやつが見たいな」
「……(モグモグ)……任せてください。
次は、『いずれ最強の錬金術師』になる予定の男が、適当な錬成で世界をひっくり返すお話を用意していますわ」
「錬金術師か!
等価交換も無視してポコポコ金を作るようなガキ、俺が鉄クズに変えてやるよ。
アテナ、次はポテチの『わさび味』を箱買いしてこい。鼻にくる刺激が楽しみだ!」
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