100 / 漫画家になるために
「漫画家になるために、何が必要だと思う?」
もう一人の僕が尋ねる。
「まずは画力でしょ」
と、僕は答える。
「それもそうだけれど、世の中には、絵のうまい人はごまんといる。彼らの描く漫画が全部面白いわけじゃないだろう?」
「それはそうだけど」
僕はしばし考え込む。
「じゃあ、お話づくりのうまい人!」
「ふふ、随分と漠然としているね。でもまぁ、それで半分正解だ。絵のうまい人でもお話づくりの下手な人が描いた漫画はとても退屈に感じられるものだ。一方で、絵はそんなにうまくなくても、お話づくりのうまい人の漫画は、とても面白い」
僕はそこで、はたとひらめいた。
「じゃあぼく、絵がうまくて、お話づくりのうまい人になる!」
「あはは」
もう一人の僕が笑う。
「それが出来れば誰も苦労はしないよ」
僕は少し、不機嫌になる。
「考えてごらん。君に与えられた時間は限られている。絵がうまくなるのにも、お話づくりがうまくなるのにも、相当な時間が必要だ。どちらもうまくやろうと思ったら、それこそ遊ぶ時間を削って時間を上手にやりくりして励まないといけない。君にそれができるかな?」
「できるよ!」
僕はむきになって答えた。
「はいはい」
そう言って、もう一人の僕が笑う。
僕はますますむきになる。
「さっき、『半分正解』って言っただろう?覚えているかな?残りの半分はね、何事も続ける根気と、時代のニーズをキャッチするアンテナの感度を磨き続けることなんだ」
「そんなの、できるもん!」
僕はすっかりむくれてしまった。
「本当にできるのかな?」
僕は無言の返事で態度を示した。
「これからの時代、そのシステムに、『こんな絵がいい、こんなお話にして』という命令を読み込ませれば漫画が出来る時代になるだろう。つまり、命令をいかにうまく書けるかで勝負が決まってくるんだ。そんなシステムが実際に出来上がれば、それこそ何千万人がライバルになる。すごい時代になるぞ」
「じゃあ、もう絵を描く必要はないの?」
「あるさ。絵の良しあしが分かるには、ある程度自分でも描けたほうがいい。あくまでも、ある程度だけどね。今まで絵の上達に割いていた時間を、今度は話の構成やせりふ回しを考える時間に充てるんだ。そうすれば、べらぼうに面白い話ができるようになるだろうね」
「ふうん」
そんな夢を見て、僕は目が覚めた。
机の上には、まっさらな原稿用紙が何枚も並べられている。




