願い
今日は天気がいい。太陽の陽射しが教会の白い壁に反射して、まるで輝いているようにも見えた。子供達の駆け回る姿に舞は微笑を向けていた。
全たちは無事に帰ってきた。
戻ってきた二人は、それ以前よりも少し大人びて見えた。でも、それはきっと彼らが東京で抱えてきたもののせいなのだろう。
全はお父さんを亡くしたらしい。でも彼の抱えているものはそれだけでもなさそうだったが、それ以上は話そうとしなかったから敢えて聞きはしなかった。その時が来れば話してくれるだろう。
護は景ちゃんを自分の力で助けたことが自信になったのか、少し落ち着いて見えた。でも、護もまた時折表情に影が射すことがある。大事な何かを一人で抱える。それも大人になるということなのかもしれないが、少し寂しい気もした。子離れの出来ない親とはこんな感じだろうかと考えてしまう自分に舞は苦笑した。
全たちが戻った後、黒く焼け焦げていた教会に戻ると、朝倉という人と一緒に何人かの人がやってきた。彼らは一時間もかからず教会をすっかり綺麗に直してしまった。焼け焦げた壁はもちろんひび割れていた柱や老朽化していた全てを新品同様にしてしまった。
その時彼らの身体には光る紋章があるのに気がついた。黄色い光は土の紋章なのだと全は教えてくれた。その作業の様子は本当に魔法か何かのようで舞は目を丸くするだけだった。
教会の前庭にあたる部分についでに作ってくれた花壇に舞は花の種を植えた。
この花が咲けば、鉄と錆びの溢れるこの廃れた町のオアシスになることだろう。乾いた砂に染み込む水のように、人々の心にほんの一時でも安らぎと未来への活力を与えられればいいと思う。
そんな願いを込めて舞はまだ芽も出ていない花壇に水を撒いた。
「舞ネェーっ」
護の声が聞こえた。振り向くと大きく手を振りはしゃぐ護とその姿に呆れながら歩く全の姿があった。
このささやかな幸せがいつまでも続きますように。
そう願いながら暖かい陽射しに照らされ、舞は金髪をなびかせて手を振り返した。
西暦2128年。
これが梶尾の叛乱にまつわる物語。
そして
ハレーの子供達に課せられた運命の始まり。
彼らはまだ、その意味を知らない。
彼らがそれを知るのはまだ訪れぬ未来。
そして彼らが手にするのは――
希望か…
絶望か…
その未来はゆっくりと
だが確実にその姿を現し始めていた。
ハレーズチルドレン 第一部 完




