[(an imitation) blood orange]
レビュー執筆日:2019/11/13
●『SUPERMARKET FANTASY』の延長線上にありながらも、様々な工夫によりマンネリ感が回避された一枚。
【収録曲】
1.hypnosis
2.Marshmallow day
3.End of the day
4.常套句
5.pieces
6.イミテーションの木
7.かぞえうた
8.インマイタウン
9.過去と未来と交信する男
10.Happy Song
11.祈り ~ 涙の軌道
ベストアルバムを経て約2年ぶりにリリースされたMr.Childrenのアルバム。彼らはアルバムごとに明確に雰囲気を変える傾向があるのですが、今作に関しては、2作前の『SUPERMARKET FANTASY』に近い印象を受けます。『hypnosis』や『祈り ~ 涙の軌道』のようにストリングスが目立つ曲も多く、『イミテーションの木』の「人の心を癒せるならたとえイミテーションであっても構わない」という世界観の歌詞は『SUPERMARKET FANTASY』の「消費される音楽」というコンセプトに近いものを感じます。
アルバムのコンセプト自体が過去作の延長線上にあるため、従来の作品と比べれば目新しさは若干減っているように感じられます。それに合わせて、『祈り ~ 涙の軌道』や『End of the day』のように若干マンネリ感がある曲もあるのですが、その一方で、そういった点を感じられない曲も多く収録されています。『イミテーションの木』は飾り気の無いシンプルなサウンドと美しいメロディが上手くマッチしていますし、配信限定でリリースされた『かぞえうた』は全編ほぼ「サビ」と言える構成が印象に残ります。また、彼らにしては速めのテンポで駆け抜ける『Marshmallow day』や、『世にも奇妙な物語』のような雰囲気の歌詞を聴かせる『過去と未来と交信する男』のように、曲調や歌詞の面から新しいアプローチをしている曲もあり、アルバムの中で常に新しい面を見せようとする点にはやはり彼ららしさを感じられます。
前述の通り、一部の楽曲に関してはややマンネリ感があるのですが、メロディの組み立て方や新しいアプローチ等といった工夫が上手くなされている楽曲も多く、結果としてアルバムとしてのマンネリ感が上手く回避されているように感じました。前作のレビューでも似たようなことを書きましたが、常に安定したクオリティを維持しながらどこか「新鮮さ」がある、という点に彼らの力量を感じられる一枚でした。
評価:★★★★★




