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君が降り立ったその場所が、僕たちの記憶とつながる  作者: 夢咲 言葉
第1章 分かたれた選択

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21. 地球最終段階 ~残された者たち~(後編)

「暗くてよく見えないな……よし、次は第3区画の壁面だ」


雅彦は、腰にぶら下げたLEDライトのスイッチを押しながら、防空壕の奥へと進んでいった。


もともとは戦時中に掘られた古い防空壕。

しかし、村の男性たちと石田の手で、数週間かけて補強・清掃が施され、今では十分な耐久力を備えている。


分厚い木製の扉、内部の棚には食料、水、毛布。

携帯トイレや電池式のランタンも備えられていた。


「空気の流れも確認済み。換気口、OK……温度も安定」


呟きながら手帳にチェックをつける。


「なあ、そこまで几帳面にやる必要あるか?」


後ろから石田がやってきて、笑いながら言った。


「何もないならそれでいい。でも、あったときに後悔したくないんだ」


「……だよな」


2人はしばらく黙って点検を続けた。


――――


その頃、陽子と医師の妻 梨香子は、村の女性陣と集会所で保存食の仕上げ作業を行っていた。


「干し芋、だいたい固まったわね」


「これ、オートミールの団子。ちょっと味見する?」


「ちょっと甘すぎたかも……でも子どもたちにはいいかも」


小鍋で煮込んだジャム、茹でた野菜の瓶詰、乾燥させた味噌汁の具材。

保存期間と栄養バランスを重視した「災害用ごちそう」が次々と並べられていく。


陽子は瓶の蓋をしっかりと閉めた。


「はぁ……冷蔵庫のありがたみ、今なら泣けるほどわかるわ」


「あはは、ほんとにね」


笑いが広がったその時、陽子のスマホが軽く震えた。


『政府より緊急通知:明日18時、首相からの最終メッセージが全国に配信されます』


彼女はそれを見つめて、ふっと息をついた。


――――


その後、村ではさらに具体的な防災対策が講じられた。


・耕作地の周囲に風除け兼防砂ネットを設置

・畜舎に強化シートを被せ、飼料を密封保存

・各家庭にロウソク、水、簡易発電装置を支給

・通信手段はトランシーバーとアナログ無線に切り替え


西野医師は手書きの「感染症対策マニュアル」を配布し、消毒・手洗いの励行を呼びかけた。


石田は古い山小屋を補修して、緊急避難用の“第2シェルター”とした。


―――――


「皆さん、本当にお疲れさまでした」


ひと通り今日の作業を終えた村の人々を前に、雅彦が立ち上がって話し始めた。


「政府は“明日”をもって、全通信を停止します。ラジオ放送もなくなると聞いています」


重い沈黙が広がる。


「でも、だからこそ。私たちは“明日以降も続いていく”ということを、信じてください。

この村は、皆さんがいれば、ちゃんと生き延びられます」


誰かが静かに拍手をした。それが次第に広がり、全員が手を叩いた。


―――――


夜、星空の下で篤志はそっと空を見上げた。


「明るい……こんなに明るいのに、これが“最後の夏”って……」


誰にともなくつぶやくと、後ろから春馬が毛布をかぶって近づいてきた。


「なにしてんの?」


「星、見てる。エリオスからも見えてるかな、これ」


「拓実くんのとこ? いいなー、宇宙」


「まあ、向こうもたいへんみたいだけどな。動画配信で見たけど、食事、全部AIが出すんだって。

好きなもの選べないんだぞ」


「えー! それヤダ!」


2人は笑い合った。


その横で、雅彦は懐中電灯で地図を照らしていた。


「……防空壕、もう一度点検するか」


“その日”に備えて、静かに準備は進んでいた。


深夜、雅彦はひとり防空壕の入口で空を見上げた。


月は雲に隠れ、星だけが静かに瞬いている。


背後では、寝静まった村の音がかすかに響いている。


「……生きよう」


つぶやいた言葉は、風に乗って山に吸い込まれていった。


そして、“その日”が、いよいよやってくる。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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