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君が降り立ったその場所が、僕たちの記憶とつながる  作者: 夢咲 言葉
第1章 分かたれた選択

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12. エリオス:AIの都市への戸惑い(後編)

昨夜のオンライン交流会の終盤、誰かが提案した。


「明日、第3陣の到着を盛大に祝いに行こうぜ!」


変わり映えしないAI制御の都市、淡々と始まったエリオスでの暮らし。

到着時に誰にも迎えられなかった寂しさが、今もどこか心に残っていた。

賢人と聡太は迷わず賛同し、撮影機材を背負って街の中心部へ向かった。


円形広場にはすでに人が集まっていた。

一夜にして精巧な横断幕やポップな看板を作った者もいて、歓待ムードが漂っていた。

言語も肌の色も様々な移住者たちが、笑顔で談笑し、スマホやカメラを構えている。


「ちょっと賑やかすぎるくらいがちょうどいいな」


聡太が笑うと、賢人もうなずいた。

気づけば、腹の底に響くような重低音の振動が地面を伝ってきた。

上空を見上げると、楕円形の巨大な飛行物体が、まるで空から滑り落ちるように降下してくる。

音はまったくない。


「うわ……すげぇ」


「あれ……俺たちも、これに乗って来たんだよな」


今さらながら、その“船”の異様な存在感に圧倒される。

やがて物体は地上1メートルで静止し、数秒後に側面のパネルがスライドして開いた。


待っていた人々から、歓声が一斉に上がる。

大音量の音楽、空を舞う紙吹雪。

出てきたのは、やや緊張の面持ちを浮かべた新たな移住者たちだった。

まるで凱旋パレードのように花道を進んでくる彼らに、賢人と聡太も全力で声援を送る。


そのとき、1人の少年が駆け寄ってきた。


「賢人さんですよね!?『都市伝説チャンネル』全部見てます!わー、本物だー!」


驚いて言葉に詰まる賢人。

地球では時折声をかけられたが、エリオスではこれが初めてだった。


「あ、ありがとう。ようこそエリオスに。名前は?」


「高瀬 拓実です。あの、お願いがあって……日本にいる親友に、俺の配信見てほしいんです。手伝ってもらえませんか?」


「ちょ、拓実。ご迷惑でしょ」


母親が慌てて頭を下げる。


「いえいえ。オレより聡太の方が詳しいですよ。な?」


「おー、任せろ。オレらのチャンネルに落ち着いたらDMして」


「ありがとうございます!やったー!」


父母が再度深く頭を下げる傍らで、拓実は手を振りながら離れていった。


「オレたちの人気、まだ健在だな」


「……なんか、こっちが元気もらったわ」


エリオスに来て初めて、賢人は心から晴れやかな気持ちになった。


―――――


翌日、聡太の端末にDMが届いた。


拓実からだった。


《今日の午後、学校が終わったら会えますか? 撮影したい動画の相談もしたいです!》


「なあ、あいつ――拓実って子、早速連絡来たぞ。

オレらの動画、全部見てたって」


「オレらの人気、小学生にまで拡大してたとはな」


「親友に動画を見せたいんだってさ。地球に残ってる親友に」


“地球”という言葉に、賢人は一瞬言葉を失った。


あの日、何を持ち出すか迷いながら、結局はスーツケース一つで旅立った。

残してきたもの。親、友人、故郷。

それが今、“あちら側”になった現実を、あらためて突きつけられた。


―――――


夕方、三人はオンラインで繋がった。


画面越しに映る拓実は、学校帰りらしく、エリオスでの初登校に高揚していた。


やれ、AI先生は面白くないだの、英語がぜんぜん分からないだの、日本の給食がなつかしいだの。

堰を切ったようにしゃべり続ける拓実を、母親がたしなめるほどだった。


そんな拓実の後ろに映る住居の造りは、まるで日本の団地のような既視感がある。

だが、そこは明らかに地球とは違う。

窓の外には、整いすぎた街路とAI管理の公園が広がっていた。


「ここ、どこなんだろうね……」


賢人の独り言に、聡太も小さくうなずいた。


「なあ賢人、俺らさ、ここで何すればいいと思う?」


「配信者ってさ、“誰に向けて”発信してるかで、意味変わるんだな」


地球にいた頃は、ただ面白いもの、驚くようなものを追ってきた。

でも今、伝えたい相手ははるか彼方の地球にいる。

それだけで、言葉の重みが変わってくる。


「拓実の親友が動画を見るその瞬間……そのために、やる価値あるかもな」


そう言って、聡太は笑った。

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