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9.ロドルフ 自分のいないところで作戦会議が行われている

「では、今日の会議はこれで終わります。ありがとうございました」


 ロドルフ様がそう言い、参加していた皆が席を立つ。何の成果があったのかよくわからない会議だったが、一応皆が帰ろうとしているようなので、終わったということだろう。

 さっさと部屋を出て行ったロドルフ様は自室へ戻っていくようだ。私もその後を追おうと、遅れて部屋を出た。すると、意外な光景を目にした。


「あれ、さっきの人たち……?」


 なんと先ほどの、ロドルフ様が議長をしていた会議に出ていた人たちが、再び同じ部屋へ戻ってきているではないか。ロドルフ様だけは自分の部屋へ戻ってしまったのか、姿が見えない。

 大半が先ほどまで座っていた席に着き、ゴールディさんはロドルフ様の座っていた議長の席に腰掛けた。


「では、討伐会議の第二部を始める」


 ゴールディさんがこう言った。

 えぇっ、第二部? さっきのは第一部で、ロドルフ様抜きで第二部が始まるってこと?


 扉の影から見ていた私は、ゴールディさんと目が合ってしまった。


「ん? さっきの会議で発言してた姉ちゃんか。あなたも参加するのかい?」

「は、はい。私はこのたび『癒し手』としてロドルフ様に採用いただきました、ジョハンナと申します。以後、お見知りおきをお願いいたします」


 「ほう……」とか「うちにも『癒し手』が……」といった声が上がる。ゴールディさんも少し驚いたようだった。


「そうか、こちらこそよろしく。私はゴールディだ。戦士をやってて長いこと雇ってもらっている。ジョハンナさんもモンスター討伐に同行するということなら、これからの会議についても聞いていかれるとよいだろう」


 あっさりと受け入れてもらえたようなので、私は先ほど座っていた入口付近の席に再び着いた。


「よろしくお願いいたしますわ。ええと、会議においては参加者の理解度のレベル感がある程度そろっていることが大切だと思いますので、よろしければ私にわかるような形で、まずは討伐の目的や最終的な目標値をお話しいただけますか」


 とりあえず前提のところから始めてもらうことにした。


「ふむ。そうだな、チアゴ、話してくれるか。あと予備の資料があったら、それも渡してあげてくれ」


 小柄で勤続年数が長そうな男性が席を立ち、私に紙束を渡してくれる。


「はい。ではジョハンナさんにこちらをお渡しします。えー、今回のモンスター討伐ですが、そもそもはうちの領土内から発生したモンスターではござんせん。領土外にあるダンジョンから無限にモンスターが外に出てくるんですが、そこから出てきたオーク達が我が領土の森に勝手に住み着いてしまっとります」

「うむ、その中でも魔法を使うオークソーサラーというのがいてな。そいつの魔法で我々も手を焼いている状況なのだ。過去の討伐もこいつの魔法で大勢の怪我人が出て失敗している」


 ゴールディさんがチアゴさんの後を受けて説明してくれた。どうやらロドルフ様が議長の時とは違って、まともなモンスター討伐の会議が始まるようだ。


 ◇ ◇ ◇


 ……ふう。一時間ほどの会議だったが、かなり実のある内容だったように思った。

 現在ストルト家の領土がモンスターに脅かされているという状況や、出現モンスターとその習性や弱点、モンスター討伐時の隊列やそれぞれの役目などが理解できた。


 私が『癒し手』として採用されたことは彼らの耳には入っていなかったらしく、次回の討伐では回復役をすでに外部に頼んでいるそうだ。外部へ料金も支払済みとのことなので私は当日はお屋敷で待機。ただ次回からはきっと役に立てるよう、今回の会議で得られた知識を覚えておかなければ。


「では会議の第二部はこれにて終わる。あとは討伐の当日まで各自抜かりない準備をお願いする」


 ゴールディさんが言い、再び一同が解散となる。皆が席を立って、今度こそ本当に終了となったようだ。

 私は初めて大人の会議に参加できたという高揚感と、ちょっと疲れたのもあって少しの間席を立てなかったが、部屋から出て行こうとするゴールディさんの姿を見て、どうしても1つ聞いておきたくなった。慌てて彼の後を追う。


「あの、ゴールディさん。今の第二部の会議はとても勉強になりましたわ。ですが、どうしてロドルフ様との会議では、その、何というか、まともな内容のお話をなさらないのでしょうか?」

「ふうむ、先ほど参加していたのならばわかったかと思うが、どうもロドルフ様が仕切る会議は本質からずれた話になりがちなのだ。そこでいつからか、最初の会議が終わった後で第二部として有志だけで再度集まって話し合ったところ、そちらの方がスムーズに話ができるという結論になった」


 それはなんとなく私も察したが、ロドルフ様抜きで重大事を決めているということになりはしまいか。


「しかし、それではロドルフ様がないがしろにされているようで……ロドルフ様だってきっと討伐に向けて戦略を練っておられるはずですわ」

「ジョハンナさん、あなたがそう感じるのももっともだが、我々も何も考えていないわけではない。これまでの積み重ねがあってこうなっているのだ」


 私はそう言われてもまだ納得がいかない気分だ。そんな気持ちが表情に出たのか、私の顔を見て再びゴールディさんが口を開く。


「ふうむ、ではあなたは今からロドルフ様の部屋へ行って見るといい。会議の第二部についてロドルフ様に注進しても構わないが、そろそろペトロッシ君も部屋に行っている頃だろうから、そこで興味深いものが見られるだろう」

「そ、そうなのですか? 承知いたしましたわ」


 会釈して私はロドルフ様の部屋へ向かうことにした。

 ペトロッシさんも来ている? いったい何が行われているというのだろうか。

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