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第四章☆不退転の決意
「警察へ届けなきゃ」とようやく思った時。美里のところへ隆也と良平が自転車を凄い勢いでこいで駆けつけた。
「間に合わなかったか」
隆也が息を切らして言った。
「上谷君!利香ちゃんが誘拐されること知ってたの!?」
美里は茶色い制服の両脇を両手で掴んで揺さぶった。
「落ち着いて」
「やだ!」
美里はぼろぼろ涙をこぼした。
「利香ちゃんと、陽子ちゃんの劇、見に行くんだ!」
錯乱している美里の身体を、良平が隆也の方から自分の方に向け直した。
「女の子はひっこんでろ」
「何で?」
「現実は甘くないんだ。自分の書いている小説の主人公気取りで死にでもしたら、俺の方が化けて出るぞ」
「死ぬ・・・?」
ざあっと美里の血の気がひいた。
「利香ちゃん・・・大丈夫かな」
「大丈夫」
「本当に?」
「本当に本当」
美里は歯をくいしばって右手の甲で涙を拭った。
「神沢さんのおじいさんが有名な科学者で、今研究中の極秘データが欲しい奴らが、孫の利香さんを連れていった」
隆也が言うと、美里は黙ってうなずいた。
「警察に届けると、本当に神沢さんが危ないから、違う手段をとろう」
「どうするんだ?」
良平が聞いた。
「神沢さんが連れていかれたのは、南区のガスタンクの敷地内だ」
「何でそんなところに?っていうか何でお前知ってるの?」
良平がすっとんきょうな声をあげた。
「上谷君は未来人なのよ」
「みらいぢん?・・・そんなアホなこと、今言ってる場合か?」
「本当だってば」
美里はイライラしながら言った。
「説明は後。急ぐぞ」
隆也が自転車にまたがった。
美里と良平もすぐに自転車で隆也の後を追った。
「二人とも、体操服持ってるか?」
「持ってるけど何で?」
「汚れるから着替えて」
途中の公園で体操服の袋を持って、隆也はトイレに入っていった。何か考えがありそうなので、美里と良平もそれに従った。
3人は南区まで体力が無くなりそうになりながら自転車をとばした。
「自転車は近くの中学校にとめて行こう。まだセコムとかなかったよな?自由に出入りできたはず」
「セコム?警備会社でしょ?」
「まだ自動でとんでこないだろ?」
「何の話???」
誰もいない中学校の校門を開いて、木陰に自転車をとめた。荷物も制服も自転車にくくりつけて、体操服姿で身軽になると、ガスタンクを目指した。
「ガスタンクの敷地に入るには検閲があるから、正面からは行けない」
「どうすんの?」
「ここから行く」
そう言って隆也は足元の下水の蓋を足で蹴った。
「マンホール?」
「うえー」
しかめっ面の良平。下水を通るのかよ、と嫌がっている。
「私は行く」
美里は言った。
「利香ちゃん連れ戻すまで帰らない」
「おいおい」
「良平!嫌なら帰って!」
「帰るかよ」
しぶしぶ二人を手伝って良平もマンホールの蓋を持ち上げた。
「行くぞ」
「「オーケー」」
三人は地下へもぐって行った。