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第五章☆ポケベルが鳴らなくて
ごとん。
ガスタンクの敷地内のマンホールの蓋が開いた。
「誰もいないな?」
「よし」
隆也、美里、良平の順で地上へ出た。
巨大な球型と円柱型のガスタンクが2つそびえ立つ。
「うー、くせえ」
良平が鼻をつまんで言った。
「どぶどろまみれ」
「しょうがないでしょ」
美里は興奮しているのか鼻がきいていないようだった。
「ここで助っ人を呼んどくか」
隆也は公衆電話のところへ行った。
「?・・・警察には知らせないんでしょ?」
美里が首をかしげる。
「10円玉持ってるか?」
「おう」
良平が小銭をじゃらじゃら隆也に渡した。
「5848583222808313210433410323642512」
プッシュ式で数字を打ってゆく隆也。
「相手誰?」
「内緒」
「何で~?」
ぶーぶー言う美里と良平。
「しー、静かに」
「・・・・・・」
三人は口をつぐんだ。
「今、話し声がしなかったか?」
懐中電灯の光が美里の横をかすめていった。
三人は地面に伏せた。
辺りはだいぶ暗くなっていた。
下水道を通る時に隆也が懐中電灯を使っていたが、それをつけていると、ここにいます、といっているようなものだから、今は消してある。
「あっち」と隆也が指差した。
見ると、建物の陰に黒塗りの車がとめてあった。
三人は姿勢を低くして小走りに車の方へ行った。
「近くに倉庫があるよ」
「多分そこだ」
こそこそ小声で話す。
「誰だ!そこにいるのは」
野太い男の声がした。三人はちぢみあがった。
男のいる方から倉庫の方へ追い詰められるかたちになった。
ままよ、と倉庫のドアを開くと、果たして中に利香と見張りの男が1人いた。
「なんだ!」
「利香ちゃん!」
男の声と美里の声が同時だった。
中にいた男と、後ろから来た男を、隆也と良平が囮になって気をそらしている間に、美里が利香に駆け寄り、さるぐつわを外した。
ばん!
凄い音がした。銃声だった。
「まさか本物?日本で銃?」
美里がぎょっとして、みんな無事か見回した。
「みさっちゃん、逃げるぞ」
良平が美里と利香の手をひいて倉庫から外に出た。
いつの間にか隆也の姿がなかった。
「どこへ逃げたらいいの?」
不安で一杯になりながら美里が言うと、男たちが追いかけて来た。迷っている暇はなかった。
「しゃーねー、こっちだ」
良平は球型のガスタンクの周囲についている階段を登り始めた。
「なんで‼まさか上に逃げるの?」
「他に逃げる道、ないだろ!」
良平がやけくそで言った。
利香が真っ青な顔で押し黙ったままついてくる。
「高い!怖い!」
「うるせー」
良平が美里を叱咤した。
「こらっ!部外者がそこで何しとる!」
ガスタンクの警備員のおじさんが、さすがに異変に気づいてこっちへ走って来ていた。
ばん!
また耳をつんざくような銃声が響いた。
「きゃあ!警備員さん、撃たれた」
足に命中したらしく、もがき苦しんでいるのがわかった。
「ひどい」
「もう、だめだ」
良平が絶望して言った。
その時。
「大丈夫か?」
美里たちはかなりの高さまで登っていたのに、やけにすぐ近くで声がした。
見ると、いつか大騒ぎだった高橋一馬の造った乗り物が浮かんでいて、中から隆也が手をさしのべていた。
「わあっ、助かった!」
三人は隆也の手を借りて乗り物に乗り込んだ。
「いらっしゃい」
中で一馬が操縦しながら声をかけた。
「なんで高橋君、来たの?」
「ひどいな」
「ポケベルにさっき暗号送ったんだ。『SOSシキュウガスタンクヘコイ』」
と隆也が言った。
パトカーのサイレン音がいくつも聞こえて来ていた。救急車も来ているようだった。
「後は大丈夫」
「じゃあ、行こうか」
五人の乗った飛行物体は、ガスタンクを後にした。
とりあえず、一段落つくところまで。まだ少し続きます。




