第二章 7月
あれから三ヶ月が経った。
クラスに馴染めなかった俺は、関本との関係が良くなり、よくパシリ にしていた。
西蓮寺はというと、、、、 あまりクラスに馴染めていなかった。きっと俺を守ってくれたからだと思う。
でも、隣のクラスのギャル系の女子の斎川 あかねが、よく廉に話しかけに教室に来ていた。
なぜだろうか。心がすごくモヤモヤしている。
廉は、サッカー部に所属していて、部活で忙しそうにしていた。女子にモテまくり。身長は180超えており、はにかむ笑顔が素敵なのだ。
俺は、安定の帰宅部を選んだ。まぁラッキーなことに、この高校は部活がオッケーなので、バイトでお金稼ぐのにはピッタリだった。
放課後にたまたま見たSNSでは、この夏は酷暑日が過去最多らしい。
廉は、この酷暑の中、練習を重ね、以前よりかは焼けている。
気づけば、7月17日。もうすぐ夏休みだった。
「ねぇ廉くーん、私とデートしない?」
この女が、校則をやぶり、スカートを短くして、廉に話しかける。
心がモヤモヤで埋め尽くされた。
「俺さ、夏休み部活で忙しんだよね。ごめん」
心の中で、群衆がざまぁみろと大喜びしている。
「チッ。つまんなー」
斎川は、はっきりと廉に伝えたが、廉は興味なさそうだった。
その状況を見ていた関本がチャイムが鳴っているのにも関わらず、俺に話しかけてきた。
関本 「なぁ。はじめー。お前なんか予定あんの?」
「まぁバイトくらいかな。」
「夏休み、俺の友達連れて、プール行くんだけどさ。お前も来るか?」
「え、あ。その」
「オッケー、来るってことね。りょ」
何も言ってないのに、同意したことになっていた。
こうして、7月31日
俺は関本となぜかプールに行くことになった。
関本からDMで、
「ごめん、遅れそうだから先に入ってて。すまん」
俺は仕方なく中に入ったが、受付もなく、券売機もなく本当に薄暗い空間だった。
「すみませんー」
叫んでも何も反応がなかった。ただただ水の音が流れているだけだった。
俺は、床が汚れた男子更衣室で水着に着替えた。
「まぁ気にせず入ってみるか」
「おい!はじめー。ガハハハ。まんまと引っかかったな笑」
関本の声がプール内に響いた。関本の後ろには、大柄の男が5名以上は立っていた。
「何だよ」
関本「お前のこと好きらしいぜ。廉笑笑 だからあんなに必死で守ったんだよお前のこと。」
俺はすごく戸惑っていた。
関本「今日はそんな廉いないし、こないだの仕返ししたるわ!」
俺が使っているプールの温度が急激に下がった気がした。
大柄の1人の男が、俺の元にくる。服が濡れるのを気にせず、プールの中に入ってきた。
水圧があるせいで、思った以上に蹴りが効かない。
プールサイドでは、大柄の男たちが俺を揶揄してくる。
「は?そんな蹴りしか出来ねぇのかよ。ダッセー」
俺はもみくちゃにされた。大柄の男にひたすら殴られ、蹴られを繰り返し、俺は意識を失ってしまった。
そのまま、冷たい水の中に顔まで沈み込み、関本と大柄の男たちは去ったのだ。
「はじめ。起きろはじめ。俺は、◯◯◯なんだ。はじめが。。。」
気づいた時には、プールサイドにいた。
よく知らないおじいちゃんが俺の隣にいた。
きっとこの人が俺を救ってくれたのだろう。
「あ、ありがとうございます。」
ニコッとこちらに向かって笑い、去っていった。
「ちょ。。。待ってください」
掠れた声しか出せなかった。
俺は、また頬を地で染めながら、家に帰った。
パチンコから帰ってきた母がいた。
母 「なぁ、またお金貸して。」
「ちょっと待って、どうしたのその顔」
俺 「いや、なんでもないって」
母 「なんでもないわけないでしょ。明日学校行って説教するわ」
その言葉を聞き、母の強さを感じた。
翌日、朝一番、母と俺は学校へ向かった。
母 「うちの子どうしたんですか?いじめられてるんじゃないですか?学校に責任ありますよね?説明してくださいよ。」
校長 「いやー知りませんね。」
校長はひたすらその言葉の繰り返しだった。
母は珍しく苛立ちを隠せていなかった。
俺は何も言えなかった。ふと視線を感じ、振り向くと、
廉が扉越しからのぞいていた。
俺はすぐ廉を追いかけた。
「おい、廉」
廉は無視して夏休みで誰もいない教室に戻った。
俺が教室に行くと、廉は少し寂しげだった。
廉 「ごめん。守れなくてごめん。」
俺 「いや、易々とついていった俺が悪いよ、廉は悪くない。」
廉 「なぁ、俺とプール行こうぜ。俺関本と違って、変なプール連れてったりしねぇからよー」 冗談まじりに言った。
俺 「ハハっ。いいけど、傷跡が染みるかもなぁ。」
「廉に恥ずかしいところ見られちゃったな。実は、俺の家庭ほんと貧乏でさ。食事も毎日コンビニ弁当で。」
廉「コンビニ弁当うまいよな。俺ほんとはさ。。。あ、いいや。でも案外、コンビニ弁当の味が安心できるんよなー。」
俺「いやわかる。特にさ、俺が一番好きなのが、オリジナル
弁当って店の唐揚げ弁当。」
廉「あれうめぇよなー笑笑」
俺は廉とさらに距離が近くなった気がした。
俺 「てか、今日部活の練習だったんじゃないのかよ。いいのかよ。」
廉 「俺スタメン外れたし、もういいかなって思って、部活やめたんだよ」
俺「廉、本当かよ。廉らしくないよ。」
廉 「俺らしく?は?お前何もわかってねぇな。俺はな。。。もういいよ」 廉は憤りを隠せていなかった。
廉は、俺のそばを通り、教室を急いで出ていった。
「俺何かまずいこと聞いちゃったかな」
傷口の痛みが強くなった。俺は、傷口を押さえながら、夕焼けで赤く染まった帰り道を下を向きながら歩いた。
オレンジ色の光で、傷口の血色もオレンジに染まった。
LINEで、何を送っても返信が来ず、約束のプールに行く日になった。
俺のほうが先についてしまった。周りは畑ばかりで、コンビニもない。スライダーがすごく際立って大きくて、まるで俺の心まで飲み込んでしまいそうな大きさをしている。この間とは全く違う。
廉 「はじめ。久しぶり。」 少し掠れた声が俺の耳元を通った。
はっと振り返ると、廉の髪色が変わっていた。完全な黒髪ではなく、茶色が入ったメッシュになっていた。
俺「かっこいいじゃん。その髪」
廉は少し照れていた。
廉「まぁとりあえず中はいろ。」
俺は何かすごく緊張していた。2人で来ているのは俺らくらいだった。廉の荷物は膨らんでいて、この日のために本当に準備をしてくれていることがわかった。
廉が服を脱ぎ始めた。廉の胸筋にどきりとした。
廉の胸筋には、よくわからない言語のタトゥーが入っていた。
できるだけ廉を見ないように、俺も水着に着替えた。
廉 「よし。行くぞ。」
俺 「廉、ちょっと待って。この間はごめん。」
服を脱いだ時に、思わず口から漏れてしまった。
廉 「急にカッとなった俺が悪いんだよ。謝るなよ。」
にっこりと笑っていた。奥二重が垂れ、俺を慰めてくれた。
俺「うわ。まじかよ、すげぇー!こんなプール初めてで、なんか緊張するわ笑」
廉「ここは俺の実家が経営してるプールなんだ。だから無料で入れんのー」
俺「まじかよ。そういえば、廉は兄弟いんの?」
廉は黙った。騒がしい空間に、一瞬静けさを与えた。
俺「うわ。ごめん。聞いたらまずかったよな」
廉「まぁ。早く行こうぜ!今日は俺が全力で楽しませたる!」
そう張り切って言い、俺の手を引っ張った。
スライダーではしゃぎ、流れるプールで水をかけ合ったりした。俺は過去1幸せな時間を過ごした。日頃悩んでいることも全部忘れた。
廉「なんかはしゃぎすぎて、お腹すいたな笑」
俺 「確かに。焼きそば食いたい!なんかうまそう」
俺らは焼きそば屋の前まで進んだ。
俺 「うわぁ。たっか。俺この300円の唐揚げしか食えないや」
廉「ここは任せて。」
そう言って、廉は黒いクレジットカードのようなものを出した。
俺「何そのカード?」
廉 「あぁこれ。うーんまぁ。俺の親父のカード。」
俺「いいのかよ。」
廉「あんま気にすんな!」
廉はそう言って、美味しそうなソース焼きそばを2つ購入した。
俺「やべぇ。うまそー」
「俺、こんな美味い焼きそば食ったことない!」
そう言うと、廉はにこやかに笑い、麺を思いっきり啜った。
その後は、2人で温水プールにも行った。疲れた心を癒すためのサウナにももちろん入った。廉の仕上がった体に汗が流れるのを、俺は熱さのせいか無意識に見ていた。
プールを出ると、もう日が暮れていた。
「じゃ、俺帰るわ」
あっさり廉が言った。俺はこの後も遊びたい気持ちを抑えながら、廉の気持ちを優先した。
「明日、払ってくれた分返さなきゃな」
そう帰り際に、繰り返しくりかえし思った一日だった。
次回予告
はじめと廉の関係は停滞気味。なんと恋のライバルが登場し、恋の争奪戦が開始する!
そんな中、廉がはじめを花火大会に誘う。
2人の関係は、花火のように綺麗に咲き誇るのか。それとも、点火せず終わるのか。お楽しみに。
次回配信は、10月26日 午後10時を予定しております。
※都合によって、この時間に投稿できない可能性がございますが、ご了承ください。




