59話:レベル上げブートキャンプ
「なあなあ、もっとスピード上がんねーの??」
「うう、気持ち悪い……」
「アーサーくん、このスピードでよく次々と魔物を倒せますわね……」
「くそっ、速すぎて魔物を捉えられない……!」
「綺麗な歌声だね。」
「にゃー。」
「アハハハ!楽ちん楽ちんっ!」
「 」
「ノアさん!?大丈夫ですか!?」
1ヶ月間限定のパーティー登録をした俺たちは早速B級ダンジョンに向かった。そこで説明も手短にすぐユニークスキルの"Wind"を使い今に至る。時間は有限、習うより慣れろ戦法である。そしてこれに対する反応も上記のように様々。初めての状況を楽しんでいるもの、一刻も早く慣れようとしているもの、気絶しているものなどなど。気絶している人に関しては……正直すまん。その間にレベル上げとくから許してくれ、と言った感じである。
B級ダンジョンということもあり、出てくる魔物もステータスが高いものばかりでアーサーとライナス以外は攻撃を当てることもままなっていない。ちなみにアーサーもライナスも攻撃は当てているのだが一撃で倒すことは難しく、アーサーの剣戟とライナスの雷魔法で協力して倒しているようだ。
アーサーはともかく、ライナスは時速200キロでの魔物討伐など初めてであるのにすぐに順応しアーサーに合わせているところはさすが天才と言うだけはある。
大半の魔物に関しては風魔法で切り刻みつつ、魔力にも余裕があるため炎魔法なども使いながら一匹残らず掃討している。そのため、10等分とはいえすごい勢いで経験値が入ってきており、既にルカやテオなんかはレベルが上がっている。
こんな調子で一日を終える頃には全員だいぶスピードにも慣れ、チラホラと魔物に攻撃を当てることにも成功しだしていた。最初意識を飛ばしていたノアも意識を取り戻し、攻撃に参加していた。
休憩を交えつつ、約12時間魔物を狩り続けた結果、俺とアーサー以外、全員1レベル以上のレベルアップに成功した。いちばんレベルが低かったルカなんかは急激にレベルアップしたことで体の感覚が追いつかずよたよたしている。
「つ、疲れた……。」
「……おえっ。」
「ほとんど何もしていないのに疲労感がすごい。」
「でもレベルアップしたことで身体は軽いという謎の感覚……。」
ユニークスキル"Wind"を解除し全員を地面に下ろすとライナスとアーサー以外は地面にへたりこんでしまった。ノアとマークに関しては顔面蒼白だ。
「アーサーくんやライナスもですけど、ダントツに魔物を倒したリンくんがケロッとしているのが末恐ろしいですわ……。」
イリーナの言葉にほぼ全員が頷く。
「……けほっ。そんなことないですよ……。喉は満身創痍です。」
「ずっと歌ってたもんね。すごく綺麗な歌声だった。戦闘中なのに聞き入っちゃった。」
「にゃー!」
「それあたしも思ったー!前学園で歌ってた他の歌も聞きたいな!」
イスラやアイビーが会話に加わり、楽しそうに話し出す。男性陣は死屍累々なのに比べ、女性陣は元気そうだ。
「そういえばずっと気になってたんだが、その面は外さないのか?たしか前、学園で歌ってた時はつけてなかっただろ?」
だいぶ体調を取り戻したノアから声がかかる。
最近はずっと面をつけすぎて逆にこれが普通になっており存在を忘れていた。
(まあ、ここは虫も居なさそうだし外してもいいけど……)
「これは一種の精神安定剤的なものでずっとつけるようにしてるんすよ!これ付けてると安心するって言うか、なっ!」
何故かアーサーが代わりに答える。
(そんなに俺の顔を他の人に見せたくないのか……?)
「へぇー、そういうもんなのか。」
こんな説明で納得したらしくすぐに会話は終了した。
「それより今日はここで野営をするんでしょうか?」
「そうですわね。ここは開けていますし魔物が来たとしてもすぐ分かります。ちょうどいいと思いますわ。」
「じゃあとりあえず不寝番の順番を決めようか。功労者のリンとアーサーは除外して8人で回そう。」
「俺もアーサーと同じくらいは働いてただろ!」
「お前は年長者なんだからつべこべ言うんじゃない!」
ルカの質問に4年のイリーナやマークが答える。そしてノアとライナスがギャーギャー言い争っている時にアーサーがちらっとこちらを見てきた。どうやら考えていることは同じようだ。
「あの、不寝番は大丈夫ですよ。」
「……ほういうほとひゃ?」
互いに口の中に指を突っ込んで頬を引っ張りあっているノアとライナスがこちらに顔を向ける。
「ちょっと待ってくださいね。」
そういうと俺は"Earth"を歌い土魔法を発動させる。そして四方にある出口を全て塞ぎ魔物が入ってこられないようにした。これで安心して夜を過ごせる。
「おお!こんなこともできるのか……!」
「リンはまだまだこんなもんじゃないですよ!」
感嘆の声をあげたテオに、何故かアーサーが得意げにこちらを見る。そのアーサーの思惑通りに部屋の両端に簡易な浴室を作り、水魔法と炎魔法でお湯をいれるとほぼ全員から歓声が上がった。
「ダンジョンでお風呂に入れるなんて!」
「1週間は入れないと覚悟していたのに……すごいです!」
「いやぁ、ほんと至れり尽くせりで頭が上がらないな。」
やはりダンジョンでのお風呂は誰にでも歓迎されるようだ。喜んでもらえて何よりである。
そんな感じでワイワイと男女で別れて湯につかり、互いに交流を深め合いながら一日を終えた。




