表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

せなと翔 ~森の中で~ <せな>

「翔……さん……」

 優しく微笑み、せなは翔を見送ると、さっそく部屋の中へと入っていく。

 ベッドに小さなテーブル。イスが二つにドレッサー。テレビも完備。

 バスルームは小さいながらも、トイレとは別になっているうえ、シャワーもばっちり取り付けられている。

 洗面所には、タオルとドライヤー、それに持ち帰り可能なアメニティも置かれていた。

 せなはさっそく、大きな窓を開けると、外の美しい景色を眺めた。

「はー……」

 自然にあふれる、森林がせなの瞳に飛び込んでいく。

 そして、日の光に照らされて、湖がキラキラと輝いていた。

「はー……」

 二度目のため息を零して。

「これって“良く言えば空気がおいしい”で、“悪く言えばド田舎で辺鄙”……だよね。翔さんはこんなのが好きなのかな。まぁ、僕も嫌いじゃないけどさ」

 ふと、視線を下に向けると……見知った人影が歩いていく姿が飛び込んできた。

「どこ行くんだろ……」

 よく見ると翔は籠を持って森の中へと進んでいく。しきりに携帯を弄っているようだが……。

「おーい、翔さーん?」

 だが、遠いせいか、せなの声は翔の元へと届いていないらしく。翔はずんずんと森の中へ進んでいく。

「返事がなーい!」

 せなは勢い良く、ドアを跳ね除け、ダッシュで階段を駆け下り、猛突進!!

 そして、取り出したのは、メガホン。

「あ、えと……しょ、翔さんっ」

「えっ!? せなちゃん!?」

 せなの声に驚いたのか、それともその手に握られたメガホンに驚いたのか。

 けれど、気を取り直して、翔は尋ねる。

「あれ、どうしてここに? ……もしかして」

 翔はそこまで言うと、ニヤッと微笑み。

「俺を見つけて追いかけてくれた、とか?」

 せなは、そんな様子に驚きあたふた。

「え? いや……怪しげな姿が見えたものだから、つい……。べ、別に! 追ってきたとかじゃないですかられぇ~!」

 思わず噛んでしまったり。

 翔は思わず、くすりと笑いながらも。

「わざわざ来てくれたんだ。ありがとう、せなちゃん。俺、これから近くの菜園に行くんだ。自家菜園ってやつ? せなちゃんも来るかい?」

 どうやら、翔の持つ籠は、その菜園から新鮮な材料を取ってくるためのものらしい。

「い、いいい、行く。行きます!」

 ぐーにした両手をじたばたさせながらも、せなは同意。

「では、こちらにどうぞ、せなちゃん。足場がちょっと悪いから、気をつけて」

 翔は手を差し伸べて、せなをエスコート。

「あにゃあっ……あ、りがと……」

 どきどきする鼓動が、翔まで聞こえてないだろうか?

 動揺しつつも、せなは翔の手を取って、歩き始めたのであった。


 何事もなく、二人は小さな菜園に到着した。

 小さい規模ながらも、様々な種類の野菜が手入れ良く、栽培されていた。

 翔は、その一つ、トマトをもぎ取ると。

「今日はトマトを使った料理を作ろうと思ってるんだけど……せなちゃんは、トマト好き?」

 そう差し出すものの。

「うん、好きだよ~っ。でもね、ぬるいのは嫌いかなぁ。冷えてるトマトか、煮てあるトマトなら好き!」

 満面の笑みを見せ、にゃはっと付け足した。

「ん、了解。今からだったら……そうだな、冷たいのは無理だから、温かくしてやるか。楽しみにしておいてくれよ」

 ぱちんとウインクして、翔は微笑み、差し出したトマトは、そのまま籠に入れた。

「わぁい、やったぁ!」

 にゃはにゃは言いながら、せなは収穫する翔の側で、その終わりを待っている。

「さてっと、ここでの食材は確保できたし、そろそろ帰りますか」

 立ち上がり、泥を払って。

「さて、せな姫、お手を」

 翔はまた、手を差し伸べる。

「はぁ~い♪」

 せなは積極的に、手をぎゅっと握り、微笑み返す。にこにこと、にこにこと。

「え? あ……ちょっと……びっくりしちゃったな。せなちゃんて、積極的、なんだ」

 ちょっと小悪魔的な微笑を浮かべて、翔は続ける。

「じゃあ、この先をやるっていったら、どうする?」


「はにゃぁ! そ、そそそ、そんなの言うことじゃないよ翔さん! へ、変態出た! 変態出没注意!」

 オドオドオロオロしながらも、心の中は実はうはうはだったり?

 驚いたせなは、握った手を上下に激しく揺さぶった。

 そんなせなに、そっと近づき。

「冗談だよ」

 耳元でそう囁いて笑ってみせる。

「さて、そろそろクローバーリーフに戻るか」

 もう一度、手を差し伸べようとしたのだが。

「はっ……! えいっ」

 せなは照れ隠しに草を掴むと、根っこごと引き抜けてしまった。

「ぷくくっ!!」

 そんなせなの面白い行動が翔の笑いのツボに入ったらしく、大爆笑。

「面白いね、せなちゃんって! 見ていて飽きないよ」

 こうして、二人はゆっくりとクローバーリーフに戻っていったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ