1.ないはずのトビラ
小さな私はおばあちゃんと手をつないで玄関を出る
同じ住居ブロックにある駄菓子屋の角を曲がって、その駄菓子屋の横壁にある黒いトタン壁にある横開きのトビラの前まで来た
おばあちゃんがそのトビラを開け、中に入っていく
すると真っ暗な中に長い階段が伸びているのがわかる
その階段は足元も見えないくらいあまりにも真っ暗だった
私はおばあちゃんに手を引かれ、足元を確認しながら1歩1歩登っていく
ときどき段が抜けているところがあり足を取られそうになるが、手摺りとおばあちゃんの手があるので、ギリギリ踏み外さないでいられた
登って行く途中、真っ暗なその先に光が見える
近づいていくとその光は明るい和室だった
そこまで上がっていくと
床の間もあるとても立派な和室があり、そこにはおばあちゃんの友人が座布団に座って待っていた
私とおばあちゃんはその人の向かいの座布団へ並んで座った
目の前の立派な木のテーブルには既にお茶が出ていた
◇
お茶を飲んだか、どんな話をしたかも分からないが
気がつくと私は一人で階段を下っていた
手摺りを頼りに相変わらず足元も見えないくらいの真っ暗な中を下りていく
途中、やはり段が抜けている箇所があり
足を取られそうになる
腕の力で必死で堪える時もあった
上りの時よりも抜けている段が多かったような気がするし
階段の長さも長かった気がする
何とか下までたどり着き、私は外に出る
そのまま一人で家まで帰ったのだった
この出来事は、私は長いこと、実際に体験したことだと思っていました
あの駄菓子屋の壁には昔、確かにトビラがあった
そう記憶していたのです
ところが大人になり、何度かその場所を通るうちに
ふと違和感を覚えました
「あれ?トビラがない・・・」
改築されたという記憶もありません
気になって家族に尋ねてみると、返ってきたのは意外な答えでした
「昔からそんなトビラなんてなかったよ」
・・・え?
じゃあ、あの記憶はいったい何だったのでしょう
もしかしてトビラがあったことも含めて、全部夢だったのでしょうか




