再会は奥底へと
春は出会いと別れの季節。そんな言葉があるらしい。
別れはもう経験した。だからあとは出会うだけ。あと何回目の春で出会えるだろうか。
俺が会いたい、唯一の人に──────。
「それでね……」
「…!」
この声
「みつき?」
「────え?」
瞳、髪。
忘れるはずない。
「あ!────ゆうちゃん!!」
その笑顔。
君だけが呼ぶ俺の名前。
「みつき」
「わぁ…!ゆうちゃんだ!久しぶり〜!!」
「久しぶり」
なんか大人っぽい。髪も伸びてるし、あ…でも目がくりくりしてるのは変わってない。ていうか…可愛くなりすぎてる。
「え、なにみつき。知り合い?」
「うん!中学の時の友達で、なんと!三年間クラスが一緒だったんだよ!すごいでしょ〜!」
笑顔も変わってない。あの頃のまんまだ。話し方とか声の感じも。みつきはずっとみつきのまま。……よかった。変わってなくて。
「えーそんなことあるんだ。すごいじゃんみつき」
「うん!ふふ、ゆうちゃんもこの大学に入ってたんだ」
あ、こっち見た。…………このまま抱きしめたい。
「…うん。……みつきがいてびっくりした」
「わたしもびっくりしたよ〜。それしても、よくわたしって気づいたね。さすがゆうちゃん!」
「気づくよ。…みつきだから」
卒業式のあの日から、一瞬だって忘れたことない。
ずっと……一緒にいられると思ってた。なのに…みつきは引っ越すし、みつきがスマホ持ってないから連絡取れないしで、もう…二度と会えないのかと思ってた。それでも────ずっと、ずっと、待ってた。みつきと会えるのを。
「えへへっ…なんか照れちゃうね」
「みつきー。そろそろ行かないと遅れるよー」
「あっ、ちょっと待って。ゆうちゃん、連絡先交換しよう?」
「ん。……今度ゆっくり話そう」
「うん!またね!ゆうちゃん!」
これで、二度と離れることはない。
画面に映る "詩葉みつき"。その名前を指でなぞり、悦に浸る。
みつき─────やっと、会えた。
「ねえ、みつき。さっきのって葉之崎優人でしょ」
「え、うん!なんでゆうちゃんの名前知ってるの?」
「そりゃああの顔だし?女子の注目の的だからねー」
「おぉ…!ゆうちゃんここでもそうなんだ〜。中学の時もそうだったんだよ」
「でも、あれでしょ?たしか……女子に興味ないって」
「……うん。ゆうちゃんはねとっても優しくてかっこいいし、それからね……笑顔がかわいいの!だからきっとみんな夢中になっちゃうんだね」
「……そうだねー」
私の知ってる葉之崎優人は、誰に言い寄られても眉ひとつ動かさないし、何が好きとかの情報もなし、誰とも喋らないし、関わろうとしないクールでミステリアスなイケメンなんだけど……みつきの前では違う、ね。
みつきに再会してからすぐ、メッセージを送り二人で会うことになった。
「ゆうちゃん!!」
「みつき。おつかれ」
「ゆうちゃんもおつかれさま〜!ふふっ、またこうしてゆうちゃんと話せて嬉しいな」
「……俺も嬉しいよ」
「よかったぁ〜」
楽しそうに笑う姿、ほんと……変わってない。その笑顔で名前を呼ばれるのが嬉しくて、隣にずっといてほしいと願ったんだ。離れてた時間はこれから埋めていく。だから、みつきにはちゃんと言おう。
「みつき」
「ん?」
「言わなきゃいけないことがある」
「……うん。なんでも言って」
「…中学の時も、ここでもある俺の噂。あれ、全部嘘だから」
「えっ、えええぇ!?そうだったの…!?全然知らなかった……」
あぁ……ほんとみつきって最高。ころころ変わる表情も見ていて飽きない。真剣な顔も、驚いた顔も。全部、全部…俺の瞳にだけ、映っていてほしい。そして、みつきの瞳にも俺だけ映して。
「みつき以外に言ってないから知らなくて当然」
「わ…わたしに教えていいの?」
「…みつきだから平気」
「……えへへ、なんかうれしいね」
「できれば誰にも言わないでほしい。女避けだから。言い寄られるの苦手で」
「うん。大丈夫!絶対誰にも言わない!!わたしがゆうちゃんのこと守るね…!!」
守る…守る、か。それってずっと一緒にいるってこと?そうだって言って。この特等席は永久にゆうちゃんのだよって…言って、みつき。
「あ、ゆうちゃん聞いて!わたしね友達できたんだよ」
「…この前一緒にいた人?」
「ううん。あの子とは別の人。ゆうちゃんにも紹介したいなって」
「ふーん。どんな人?」
「琉兎くんっていうんだけど、とっても優しくて…あとすごくオシャレな人。笑顔がね、ふわ〜ってしててかわいいんだよ〜」
るう…?……男?あぁ、いや──────誰でもいい。
知らない奴に向ける笑顔が心臓を抉る。
「…ゆうちゃん?」
無意識で伸ばした手に、柔らかな髪が触れ、そのまま優しく撫でると、抉られた心臓が徐々に戻っていく。できた傷は縫われて、みつきの為に鼓動しはじめる。
「よかったな。友達できて」
撫でた瞬間、みつきの全てが俺のものになる。俺の全てだって…みつきのだ。
「うん…!ゆうちゃんとも会えてすっごく幸せ!」
会えなかった時間を無にする笑顔。俺を虜にしたそれは、二度目の恋へと落としてくれた。一度目よりも更に深い、奥底へと──────。




