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新感覚『般若心経』 〜蒼龍くん物語スピンオフ〜  作者: 佐藤 堅明


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9/10

第九話:色即是空(しきそくぜくう):価値なんて、お天気次第。

すべてが空っぽ、なんて言われても「損したくない」のが商人の性。

 そこでカモメは、「価値なんて、その場の空気が決めてるだけだぜ」と身も蓋もない現実を突きつけます。

 手帳を握りしめたまま、シャリホが初めて自分の「恥」を真正面から見つめる、再生の第九話です。

「ああ……何も残っていない」

シャリホは膝をつき、泥だらけの手を見つめました。


宝石は沈み、

オネーチャンもいない。


手帳だけが残っている。


「おじさん」

カモメが静かに言います。


「本当に“なくなった”のか?」

「すべて失いました!」


「その石、最初から石だったぞ」

シャリホは泥の中を見ます。


確かに石は石です。


昨日までは“成功の証”だった。


今は、ただの濡れた石。


「笑顔も」

カモメは続けます。

「照明が変われば、違う顔になる」


風が吹きました。


泥の水面が揺れ、宝石の姿が歪みます。


さっきまで“価値”だったものが、

ただの光の反射に見えました。


シャリホは、しばらく黙っていました。


それから、ふっと息を吐きます。

「……では、私は何を失ったのです?」


カモメは答えません。


ただ空を見ます。


シャリホは手帳を開きます。


(17時30分。

石は石だった。

笑顔は笑顔だった。

私は……勘違いしていただけかもしれない)


泥の重さは変わらない。


けれど、

胸の奥の重さが、ほんの少しだけ軽くなりました。


「……やれやれだぜ」

石は、石でした。

笑顔は、笑顔でした。

そこに意味を足していたのは、

泥に立っている自分だったのかもしれません。


次回、最終話。

すべてが「空くう」であると知ったとき、世界は虚無になるのではなく、むしろ鮮やかな輝きを取り戻します。その美しい夕焼けを最後に見上げるのは一体誰でしょう。

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