第七話:五蘊その4【行(ぎょう)】:空回りする、ボクの努力
おじいちゃんカモメは、蒼龍くんとの出会いにおいて「ただ、そこに在る」という一期一会の時間を楽しみました。
しかし、孫のカモメの前にいるシャリホは、一刻も早くこの状況を変えようと、自分勝手な理屈で「無駄な努力」を積み重ねてしまいます。
今回は、そんな空回りのエネルギー――【行】の滑稽さを描きます。
泥沼に沈んだ荷車を前に、シャリホはついに上着を脱ぎ捨てました。
短い足で踏ん張り、車輪を押します。
「見てください! 私は戦っているのです!
成功者は諦めません! 努力は裏切らない!」
力を込めるたび、車輪は空しく泥を跳ね上げました。
そしてその泥は、正確にシャリホの顔に戻ってきます。
ズブリ。
足がさらに沈みました。
(16時30分。英雄的奮闘。後世に語り継がれる可能性大)
「おじさん」
カモメの声が落ちます。
「泥は、あんたの演説を聞いてないぜ」
「黙りなさい! 動かなければ何も変わらないのです!」
シャリホが押す
→ 車輪がギギッと動く
「見ましたか! 世界は応えたのです!」
カモメが一瞬だけ黙る。
次の瞬間、
ズブリ。
車輪が横倒しになり、荷車がさらに傾く。
カモメ、低く言う。
「……動いたな。余計にな」
シャリホの呼吸が荒くなります。
一瞬だけ、手が止まりました。
泥は、それ以上沈みません。
……しかし。
「まだ足りないだけです!」
再び全力で押します。
ズブリ。
今度は腰まで沈みました。
(16時40分。鳥による士気低下行為。業務妨害の疑い)
カモメは空を見上げます。
「……やれやれだぜ」
動けば前に進むとは限りません。
止まったときだけ、沈まないこともあります。
それでも人は、動いてしまう。
次回、シャリホは(何故か)世界を敵に回して戦います!頑張れシャリホ!負けるなシャリホ!!




