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現代弱者の転生記 〜クズの俺の本気〜  作者: zjh
第一章 幼少期 転生編
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3話 魔法という名の手段

 楽しみで仕方がない。早く習いたい。

 ただ、問題がある。

 この世界では七歳になるまで、剣術・魔法を学ばせてもらえないのだ。


 理由は簡単、物心つく前に会得してしまうと暴発しかねないからだ。

 実に惜しい。

 一応転生した身なので、知能指数も引き継いでいる訳だが、口が裂けても言えることじゃあるまいし、子ども扱いを受けるしないのだ。


「ところで、母さま。僕は今何歳でしたっけ」

「確か三歳のはずよ?」


 三歳!? 三歳でここまで喋れるのか!?

 いや、これは俺の言語理解が早いだけなんだろうな。

 もしくは元々が良かったのか。

 しかし七歳まで四年かぁ……長いな。


 それはそれとして、魔法があるのはわかった。

 だが情報があまりにも少なすぎる。


「実は母さま、僕魔法に興味が湧いてきました」

「まあ!」


 子供が勉強熱心で食いつかない親がいるわけない。

 しかし魔法を教えてくれと言って了承してくれるだろうか……。

 法律上かなりグレーの域だからなぁ……いやそんなんで諦めるのか俺よ!

 ”規則(ルール)は破るためにある”

 俺が最も敬愛してやまない言葉だ。


 一か八かでやってみるか。

 俺だって伊達に10年ニートをやった訳じゃない。

 親を言いくるめるなんてことはお手の物だ。


「そこでなんですが、魔法について教えていただけませんか?」

「えぇ、でも……いいのかしら……」

「まぁまぁ、あくまで基礎を少し、ね?」

「でも……七歳までは……」

「いいじゃないですかぁ、ちょっとした予習ですよぉ」

「法律で……」

「せっかくお子様が精力的にならせられているのですよ? またとない好機でしょうに」

「7歳からでも……遅くはないでしょう……?」

「その時にまだやる気があるかどうかは誰もわからないではないですか」

「くッ、確かに」

「ほら、もういいでしょう」

「し、仕方ないですわね!」


 チョロい。

 ここが日本じゃなくてよかった。

 毎月10000円くらいはセールス共に取られてしまいそうだ。

 うちの母はもうすこし、騙し合いに慣れないと危なそうだ。


 その後色々教えてもらった。

 基本は四属性──火、水、土、風だ。まあ、王道だな。

 なるほど、こりゃすごい。しかもそれが当たり前のように使えるだなんて。


(絶対にモノにしてやる)


 これは最重要任務だ。



 ……――――――……



 それからしばらく、俺はのびのびと遊びながら村の付近の地形や配置を覚えていた。

 そして、その道中驚いたことにこの体は異常なほどに視力がいい。

 特に何もしなければ普通なんだが、本気で目を凝らせば一キロ先でも十キロ先でも問題なくはっきりと見える。

 さすがに地平線の先は見えなかったが、それでも十分だ。

 もしや……俺だけのチートか!? などといった愚かな考えを抱いたが、目がいいだけなのだろう。



 ―――翌日



 さて、俺は今潜入捜査をしている。

 まぁそれは少し大げさで、実際は父の書斎に忍び込んでいるだけである。


 ここは俺にとっては秘密基地兼宝の山になっている。

 まず驚くのは広さだ。

 書斎だけで一軒家一つ分くらいあるんじゃないかと思うほどだ。

 そしてもう一つ、宝の山の理由。それは、魔導書がそこかしこに埋まっているからだ。

 魔法のことを知った時から、父の後ろに張り付いては中に侵入し、そこらじゅう徘徊したもんだ。

 だからここの配置は覚えている。


 一つ見つけた。水属性魔法の書物だ。

 どれどれ……なるほど、たくさんありすぎて全くわからん。

 カッコイイのを使いたかったが、まだ原理も使い方もよくわかってない段階で理解できるわけがない。

 しかも、どうやら理解できない魔法は使えない仕組みらしい。

 詠唱だけしても、頭の中で結果を予測できない魔法は使えないということだ。


 このまま何もしないで帰るのはさすがにもったいない。

 せっかくバレずにはいれたのだから、一個簡単そうなのをやってから帰ろう。

 俗にいう、”ウォーターボール”だ。


「えっと...…

 水の神に我が名を連ね奉る。

 求めるは不純なき純水の玉。

 今ここに顕現せよ……

 “水球(ウォーターボール)”!」


 手のひらに何かが集まっていく感触がした。

 その直後、周辺に水滴が現れ、一点に集中する。


「おー! すごい!」


 大の大人が、無邪気にも興奮してしまった。

 生まれて初めての魔法に目を輝かせた。

 全くもって仕組みがわからん、なぜ何もない大気中から水なんて現れるのか。

 まぁそんなことはどうでもいい!

 今はただ、この米粒サイズの水球をもっと大きく、できる限りまで溜めてみよーっと。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー

<トゥー、ミニッツ、レイター> 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、おいおいちょっと待てって……!」


 目の前には異常な光景が広がっていた。

 ハンドボールぐらいの大きさだと図鑑には載っているんだが……嘘だったのかッ。


(デカい、デカ過ぎる……!)


 俺の出したやつは、部屋の端々まで届くほどの大きさになっていた。

 途中から違和感を感じてはいたが、止め方も消し方もわからず、結局放置した結果がこれか。

 タハー……いや笑えねぇよォォォ!


「おっっもい……このままじゃ……!」


 デカい分重さを支えるための力も必要になる。

 もちろん子供の俺にそんな力はない。


「こんな夜中に物音がするなと思ってきてみればお前……ってえぇ!?」


 ブラインが凸ってきた。

 その瞬間驚いた俺は気を緩めてしまった。

 巨大な水の玉はその場ではじけ、瞬く間に部屋を埋め尽くした。

 瞬時に頭の中によぎる某ネットミームは……

 終わったぁ☆


 ---


 気づけば父の書斎は滅茶苦茶だった。

 家中水浸しだ。


「……これお前がやったのか…?」


 これは流石に温厚な父でも怒るだろうな。

 どう言い訳すればいいのやら。


「大変! 申し訳ございませんでした!」


 はっきり言った。

 下手な言い訳は状況を悪化させるだけ。

 最悪の高校時代でまともに学んだことはこれくらいだ。


(さぁどうなる……!)


 なんて思っていた時、意外な言葉が飛んできた。


「マジかよ……おい、お前天才じゃないか!」

「……え」


 え? 何で?


「なんてことだ……おい母さん!」

「何よあなたったらせっかちなんだから……」

「いや聞いてくれよ! ルイが――。」

「えぇ本当?」

「あぁ本当だ!」

「やったわ! やったじゃない! さすがうちの息子だわ~」

「ここまで簡単にいくとはなぁウンウン」


 訳も分からず抱かれて高い高いをされる。

 なぜ怒られない? どんな甘い親でもここまで自室を荒らされて良い気でいられるわけがない。

 いや、そもそも何であんな巨大になるのだ!


「……怒らないのですか?」

「怒るものか! こんな嬉しいことはないぞ!」

「嬉しいッ!? 父様の書物たちはこんな有様になったのですよ?」

「あぁこれらは後で魔法でどうにかなるからいいんだ」


 なんだよ大丈夫なのかよ、心配して損したわ。


 さぁまず何から聞こうか。

 だいぶご機嫌なようで何よりだし、もう怒られることもないだろう。


「なぜあれほど大きいものが出来たのですか?」

「ああ、いや、まだ知らないのも無理はないか」


 ブラインが、なぜか神妙な顔になっている。


「実はな、魔法ってのはその使用者の魔力量に比例するんだ。」

「へえ、そうだったのですね。知らなかったです」


 こいつぁいい。

 なんせ俺の魔力総量はかなりあるということだ。

 いきなり異世界主人公キャラ待ったなしの特性だァ胸が熱くなるねぇ。

 まぁ俺が主人公なんて愚かでバカげた思想はありえないが。


 それと、さっき”やったわー”とシーラが言っていたが、いったいどういう……。

 なんだろう、痴話喧嘩に発展しそうだから聞きたくないな。

 憶測にすぎないが、兄は騎士団に入団したと聞いているし、相当な剣の使い手なのだろう。

 すると、俺は魔法の道を突き進んでほしいという思いを込めて産んだのかもしれない。

 一家から両方輩出できれば、後世の誇りになるかもしれないといったところか。



 ……――――――……



 そんなこんなで長い年月が経った。


 それからというもの、俺は書斎を自由に行き来していいと言われたので、入っては魔導書を探して試している。

 その度にちょっとした災害じみたことをしてしまったが……そんなことはとりあえず置いておいて、一応、全ての属性は初級までできるようにはなった。


 今年で俺も七歳だ。

 そこで気になったのだが、なぜ七歳と決められているのだろうか。

 八歳でも九歳でも別によくないか? なんなら六歳でもいい。

 あれこれ考えながら聞けば、この地域では七の倍数の年を節目として、その年は盛大に祝う風習があるらしい。

 何とも不思議な伝統だ。


 ということで、ついに俺にも師匠がつくことになった。どんな奴が来るのだろう。できれば可愛い女性キャラがいいなぁ……なんてな。

 どうせ(あご)ひげ蓄えたGGが来るのだろう。


 しばらくして、ドアがたたかれた。


「すみませーん、誰かいらっしゃいますかー?」


 ……ん? 年季の入ったGGにしては、子供みたいな声だ。もしかして、もしかするのかもしれない。


「はーい、今行きまーす」


 と言ってお母さんがドアを開ける。

 …………ほう。


 ドアの前に立っていたのは小柄だが凛とした娘だった。


「はじめまして。教師として参りました。リリィ・スフィローゼと申します。以後お見知りおきください」


 リリィ師匠か――いい響きだ。


 見た目は……子供より少し大きいぐらいの身長なのに、表情、仕草、口調……どれを取っても大人びている。

 ただし、声だけは子供だ。あと身長も。

 無邪気さと凛々しさをあわせ持った、不思議な魅力がある。

 ま、まさかこれが真の合法幼女か! ホウホウ……。

 ニヤニヤしてたのか、一瞬、怪訝な顔をされた。


「うちの子ちょっと魔力量が多いの。だから心配せずに叩き込んであげてください!」

「………? あぁ……はぁ…わかりました」


 い、いきなりため息だと!?

 まさか、親バカだと思っているのか?

 なんのー! ふざけやがってー!


 絶対にギャフンと言わせてやる。

 そう心に決めた。



 …………――――――…………


 ーーー母日記ーーー

「今日から可愛い息子ちゃんのために、日記をつけることにします。それにしても、ついに今日、息子が七歳になりました。

 なんとも感慨深いです。

 そして、ずっと待ち望んでいたみたいだけど、今日から家庭教師も雇うことにしました。いつか立派な魔術師になることを願っています」



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