11話 幼き獣耳 後
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病名:「先天性魔溢病」
人族には基本見られない。もしくは観測されたことがほとんどない病。
子供を作る際、それぞれの種族が違う時にのみおこり、両者の間にできた子供におきる。
本来すべての生命体には、魔力を溜め、貯蔵するための器官が備わっている。
その”タンク“とでも言うのか、それに不具合が生じているのだ。
なお、この病気はかなり稀である。
両者の魔力量の差がかなり大きい時にのみ起こりうるからだ。
それも、かなり大きい差が必要である。
なので、私も見たことがほとんどない。
クラウシュ・ノベルティア
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って言う本が、父の書棚から出てきた。
あの病気に関して、何か知っていることはないか、何なら治療法とかは知らないか?
とブラインに聞いたら……
「あぁそういえばそんなのがあったな」
なんて簡単に言って、パッとこれを渡してきた。
本当に良くできた父だと素直に思う。
上から目線すぎたかな。
俺は今、あの子の治療について情報を集めている。
あの日からすでに3日が経っているが、今の所めぼしい治療法が見つかっていない。
ほとんどの医術本は読み漁ったが、それらは全て症状しか書いていなかった。
今までは街の書庫に行っていたが、今日は思い切って父の書斎で調べ物だ。
なんで初めから書斎で調べなかったのかだって?
いや、考えてみろ。一般人が持っている本なんてたかが知れてるだろ?
しかし、やはり父は俺の期待を裏切らない。
――本にて――
患者には、必ず魔力が漏れ出ている「排出口」が存在する。
これは決して外傷ではなく、魔力の器となる器官における目に見えぬ穴が存在する。
ふむふむなるほど、つまり薬があるとしたら塗る系なのかな?
そして日焼け止め系オチみたいに……
「どこ触ってんのよもう」
って! いかんいかん、妄想癖はおれの専売特許だが、今の俺にそんな時間はない。
彼を待たせているのだ。
さて、続き続きーーおっ。
求めていた文がそこにあった。
…………
<治療法>
神聖タルタロス連邦国における王都から西にしばらく行ったところに存在する、”シルタール魔森”と呼ばれる森に生息する、「ユアース」という薬草の花びらを4枚採取する。
これを火の魔法で分解し、中の毒素を抜く。
注意:上級以上の火魔法であること。中途半端に熱した場合、毒素がさらに増える(人体実験済み)
…………
ひぇぇ! 人体実験済みだってさ、おい!
作者のノベルティアとかっていうやつ怖すぎんか。
それにしても、“ユアース”……か。
はて、どこかで見たかな……?
…………
しっかり熱されたことを確認したら、その4枚を積み重ね、土魔術によって押し固める。
注意:上級による魔法であること。決してそれ以外の級による魔法は使ってはいけない。
やわらかいままでもダメであり、硬めすぎも良くない。
その理由は次のことである。
<治療手順>
1.花びらの塊を削り、人が飲み込める粉末状にする。
2.おおよそ塊の半分の量を用意する。
3.それを患者に飲ませる。
注意:大変苦いため、大人でも気絶する。
なので、シロップなどの甘い液体か好きなものと一緒に服用するが良い。
…………
って言うことだ。
そして俺は久々に俺の努力の結晶を引っ張り出してきた。
皆覚えているだろうか。
そう、俺自作のあの生態図鑑である。
あの森を調べ尽くしたあとに、もう使い道もないって父に渡したら、目をまん丸にして。
「お前が作ったのか……大学にでも発表しに行ったらどうだ?」
と言われた大変貴重な代物である。
はっきり言って元ニートが大学に行って論文を発表するなど、大変おこがましいことである。
だから丁重に断っておいた。ナイスプレイだろ?
本題に戻そう。
さっきあった心当たりは、ここにあったのだ。
“ユアース”
赤い花としてスケッチしてある。
非常に耐火性が強く、ほとんど燃えやしない。
毒性が非常に強く、小さい魔物が少しだけ舐めると瞬時に死に至るレベルである。
なるほど、これが治療薬か。
研究した時は全く思っていなかったな。
だってあの毒性だぜ? 猛毒ガスの材料にした方が儲けられるんじゃないかって考えたほどだ。
まぁそんな不穏なことはしないが……。
この花は、夏の中の夏、「夏至」にしか咲かない、正確には咲かなかった花である。
そして、なんと機運がいいことか。それがチョード明日なのである。
俺の存在のおかげだな!
主人公補正ダッ! ふふんっ!
ならば明日だ。
明日早朝から探しに行こう。
人数は多い方がいいからな、誰を連れて行こうか。
まずはシアだろ? シアの父に……も連絡入れておくか。
ブラインはどうだろう。一応休日である。
「父さまー。明日、少し付き合ってくれますか?」
「うん? なんでだ」
「詳細はまた後で言いますが、人助けです」
「……そうか。いいだろう」
結局コイツはいいやつなのだ。騎士団の鏡である。
…………――――――…………
翌朝の早朝、シアを呼びに行く。ブラインを従えて……って言うのは偉そうだから言わない。
来る途中で、4日前何があったかを教えておいた。
少し、長い話になってしまったが、皆にも教えておこう。
あの日、俺は初めて自分の技で、人を打ち負かした。
相手は獣神戦士団副隊長の座に着く、人獣式剣術の使い手である。
正直、俺がただの剣だけで戦えば、3秒で決着はついていただろう。どう考えても俺の方が弱い。
しかし俺には魔術があった。
それが功を奏した。やっぱり俺にはこれがないとダメだな。
そして、彼がきた理由は、あの岩に横たわっている子であった。
彼はその子のお父さんのような存在であるらしい。
そう、あの子は親無しなのだ。
気づいたら玄関の前にいたらしい。
それが六年前の話だ。
そして、およそ三年前のことである。
発症したのだ。この病が。
初めは少しの体調不良を訴える程度だったらしいが、今思えば、それが前兆だったのだ。
日に日に漏れ出る魔力が増えていく。
もう起き上がれないほど弱った時に初めて気づいた。
近くを通ったある人が、何か変な魔力を感知して見にきてくださって、「魔溢病」だと診断された。
それが二年前だ。
それから一年、今に至ると言う。
そして今この本を読んで納得した。
なるほど親が不明なのは、二人の関係が何か底知れないものがあると言うことである。
なんなんだこのあまりにもご都合すぎる設定は......絶対なんか起こるやん!
最近、“この森に治療法を知るもの現れたり”という占いの結果が出てここまできたという次第である。
なんて精度だ。
ピンポイントで俺を引き出すとは……やりおる!
その子の顔に布を被せていたのは、顔にコンプレックを抱いてしまいそうなフェイスをしているせいである。病気の影響らしい。
見なくて正解だったぜ!
そうなると素顔がめちゃくちゃ気になる。
絶対治さなきゃな……。
そうやって改めて決意を固めた。
そういう話をブラインにしたら、誇った顔で、
「さすが俺の息子だ」
って豪語していたのは、また別のお話……。
そんなこんなでシアの家の前まで来た。




