23.マイスウィートダンジョン
分中にお手紙の表記があります。お使いの機種によっては段がズレて見にくくなっていることもあるかもしれません。
「みんな元気にしてたー?あたしは元気モリモリよ!」
みんなにそう聞いてみると、羽を持った三人がピューンと飛んできた。
「ハルちゃんがいなくて元気なわけないじゃん!干からびてたよ!」
「そうそう。もう日々に潤いが足りなくって困っちゃうよ〜」
「ハルちゃんが元気ならあたしも嬉しいッ!」
メルちゃんはポクポク叩いてくるし、キャロちゃんはやれやれって顔して、アムちゃんは顔キラキラさせて飛び回ってる。
おばあちゃんとおじいちゃんは以前と変わらず綺麗なお辞儀で迎えてくれてる。サリーちゃんが抱っこしてるカルくんとマルくんを見つけた瞬間目ぇキラッキラさせてるのが面白い。
トカゲさんチーム改めヘビさんチームは今ダンジョンに帰還してる途中らしくて、マイマイさんチームと鳥さんチームにも変わりはないみたい。
「ハルちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
みんなの様子を確認して回ってると、冒険者ギルドの支部として唯一残っていたエレオノーラちゃんが大泣きしながら飛びついてきた。
「うわぁぁぁん!無事でよがっだぁぁぁ!!」
「心配してくれてありがとね。おーよしよし」
「だいへんだっだよぉぉぉぉ!!」
「あちゃー間に合わなかったかぁ」
後から走ってきたのはダンジョンでマイルズ達の帰りを待ってたマークくん。続けてガーラくんやサラちゃんやちびっ子達も来た。
「お帰りなさいッスハルちゃん、リーダー。みんな元気そうで良かったッズ!」
「ジークさんもザグさんもお疲れ様っす〜おかえり〜」
「おかえりリーダー!お土産は!?お土産!!」
「お前らも変わりなさそうで良かったよ」
いつも元気なサラちゃんがウルッとしてたり、目元を赤くしたちびっ子達を見るとめちゃくちゃ心配だったんだろうなって思う。
マイルズ達の旅路を聞いてたら確かに心配になるくらいの過酷な道のりだったみたいだけど。
エレオノーラちゃんは顔がグシャグシャになるくらい泣いちゃって話ができなかったから、マークくんが代わりに事情説明してくれた。
エレオノーラちゃんはあたしが帰ってくることを信じてダンジョン周辺の治安維持をした方がいいって主張したんだけど、ギルドとしても冒険者に無理強いすることができず一人で残ってたらしい。
残った以上やることはいっぱいあって、冒険者ギルドからというよりも、国からの命令でダンジョン内外の様子を日々伝えるスパイのようなことをしなければならなかった。
マークくんが業務を手伝うことで多少軽減はしたけれど、ダンジョン資源を狙う連中からは攻撃されるし、そろそろ精神的に追い詰められていたところで勇者帰還の連絡を受けて箍が外れたってことらしい。
それはそれは大変だったんだねぇ…でももう大丈夫!何たってあたしが帰って来たからね!
そう伝えてエレオノーラちゃんを宥めていると、誰かに肩をトントンとされた。
振り返って見ると、そこには見たこともない金の果実がなってる。
金の果実がなってるのは銀の枝。その枝を辿っていくと…ウッディ!?
「えっ!ウッディも進化してるの!?」
ウッディが進化したことにびっくりしてたら、あたしの手の平に金の果実をポトッて落として枝を振って見せる。これは…食べてみるしかないわよね!?
パッと見て金色の果実に見えたけど、実際はつるんと艶のある黄色い果実が光を反射して金色に見えてるみたい。半分に割ってみると、種の周りが赤くて外に向かうに連れて蜂蜜が溢れたかのような汁だくの黄金色になっていた。
あぁ、もうダメ!溢れちゃう!半分をエレオノーラちゃんに渡して、いっただっきまーす!
カプッ(香りがドーン!)
ジュル(果汁がズバーン!)
ゴクン(後味フレーッシュ!)
「うまあああああああああああああああいっ!!」
もうなんか美味し過ぎて言葉で表現できないんだけど!一人でジュースのCMみたいな動きしてたわ。
横見ると、プルプルしてるエレオノーラちゃんが何か呟いてた。
「…おい、おいし…おいしい…お、おい、おいしいぃ……」
「おーい大丈夫ー?」
目の前で手振っても全然反応なくて、そのままフラッと倒れていっちゃった!
マイクくんが咄嗟に両手で支えてくれたから怪我はないけど、一体どうしちゃったの?
「…これ、気絶してるぜ」
ワーオ。あまりの美味しさに気を失うとは!
エレオノーラちゃんが持ってた果実をマークくんがひょいと食べると「気ィ失うのも納得だわ」って言うの。
そんなことよりも!今の間接キッスじゃなぁいぃ!?キャー!
とまぁ、そんな騒動があったんだけど、マイルズ達は一度マンションに寄ってギルドに連絡してから、明日王都を目指すそう。ホルスト達は一足先に王都へ向けて出発するんだって。
「落ち着いたら勝負しにくるからな、覚えてろよ」
「はいはい、いつでもどうぞ。歓迎するわ」
「お前らとの旅も悪くなかったぜ。じゃーな!」
そう言って、ホルストは赤馬に乗って走って行った。
肩を竦めて照れ隠ししてるマイルズも、マンションに向かって歩いて行った。
さっ、あたしも色々とお片付けしなくちゃね!
そう思って振り返ったら、ウッディの金の果実をモッチャモッチャ食べてる熊さんが「よっ!」って言わんばかりに手を挙げた。
「よっ!じゃないわよ!」
『…だって、お前が帰ってくるまではお預けだってこいつが言うから…美味いのが悪い……んもんも…』
「可愛いから許す!」
ちょこんとお座りした熊さんがちっちゃい果実を器用に食べてるのめちゃくちゃ可愛いわ。
「よし!じゃあ新しく仲間になった子を紹介するわ」
二人を抱っこしてるサリーちゃんを手招きする。
カルくんは新しい景色に興味津々で、マルくんは緊張してるのかカルくんとサリーちゃんの隙間に顔を突っ込んでる。
「カエサルくんとマルクスくんよ!いっぱい可愛がってあげてね!」
細かいことを知らなくてもきっとみんないっぱい可愛がってくれると思ったんだけど、やっぱり当たってたみたい。
みんなに温かく迎え入れられた二人は緊張なんてどこ吹く風で、楽しそうに笑ってる。
こうしてまた穏やかな日常が戻ってきた。
あたしがこの世界に来てから4年が経とうとしていた。
赤く花開いたダンジョンコアが示すモニターには残り40時間と表示されている。
それは5日程前のこと、もうそろそろマイスの三回目のお誕生日会だなぁって考えてたら、いきなり迷宮主腕輪からモニターが飛び出した。
「Final Stageまで 残り168時間」
ピッ!って音が鳴ってタイマーが進み始めた。
赤くて目に痛いモニターのどこを探しても画面を消すバツ印は見当たらない。また何かやっちゃったのかと考え込んでるとマイスに呼び掛けられた。
「ハル様。そのモニターについてお話があります。ダンジョンコアまでお越しください」
マイスと一緒に頂上エリアに転移してみると、ダンジョンコアにも同じモニターが表示されていた。
マイスに指示された通りに操作していくと、メッセージ欄が開いた。そこには題名のないメッセージが一通。
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無事に生き残ったダンジョンマスターの諸君へ
四年間に亘る生存競争を勝ち抜いた諸君に
褒美として我々上位存在と謁する権利を授けよう。
これより七日後配下を含めた全員を神々の宴へと招待する。
その際ちょっとした余興をしてもらう故準備しておくように。
細かいことはマネージャーから聞くがよい。
最後まで気を抜くことのないよう。
神より
_ ______________________ _
「…ナニコレ?」
「私から説明させて頂きます」
マイスはメッセージと同時に受信した情報を分かりやすく説明してくれた。
「私達と同じように、この世界には300のダンジョンが生成されました。一ヶ月の隠蔽期間の後激動の二ヶ月を生き延びることができるかを試される第一段階、その後ダンジョンの個性や経営手腕が求められる第2段階、そして四年終了時点までにどれだけ成長することができるか問われる第3段階があり、今その最後の一週間といったところです」
「ふむふむ。じゃあ、手紙にあった余興ってのはどういうこと?」
「はい、それは今回生き残った18のダンジョンを仮想空間にて戦わせ一位を決めるトーナメントでございます。そこではそれぞれのダンジョンを離れ、集団対集団の完全なる実力勝負が行われます」
なるほど、じゃあ溜め込んだDPを使い切る勢いで強化なり何なりをする期間ってわけね!
詳しい話を聞いたら、仮想空間で行うから死ぬことはないって話だし、その話を聞いてからみんなの目がギラギラして燃えてらっしゃるから、これはいっちょやるしかないわよね!
なんか文化祭前の準備みたいでテンション上がってきた!
ダンジョンで準備に励むみんなを見てると、本当に色々とあったなぁとしみじみ思う。
カルくんマルくんを連れてダンジョンに帰ってきてからしばらく経つと、人族との交流は以前のように戻った。
勇者が魔物の活性化原因を突き止めてそれを解決したという情報が広まり、ソルアンブリード王国との正式な交流が再開した。
上層部にはもっと詳しい話が伝わったみたいなんだけど、あまりに常識外れな内容にお手上げだって話らしい。
人のこと常識外れって言うなんて失礼しちゃうよね!
ダンジョンでは熊さんことグラちゃんがあたし達の仲間に入ってくれることになって、魔の森の主モンスター達と一悶着あった。
主モンスターって知能が高い子が多いから、大体は話を分かってくれてウチの美味しいものや綺麗なものに心惹かれてお客様になってくれたんだけど、一人だけ分からず屋がいたの。
二本の角と四本の牙、六本の剛脚を持ったモウダウンボアっていうでっかい猪は話聞いてくれなくて、グラちゃんとガチンコバトルになった。
広い地下洞エリアを貸し出してタイマンバトルをしたらグラちゃんが圧倒しちゃって、舎弟になるって聞かなくなっちゃった。
押しが強くてそのまま仲間になったからモアちゃんって名前をつけてあげたの。名前をつけたら少し話が分かるようななったんだけど、勉強は得意じゃないらしくって、苦戦しながらも頑張るいい子なんだよね。
それから、不老不死になれるっていう金の果実の噂を聞きつけた貴族が押しかけてきたりもしたっけ。
金の果実はめちゃくちゃ美味しいだけで、そんな効果ないって言ってるのに嘘吐き呼ばわりするし、めっちゃイラッてした。
少ししかできないから、王国に直接販売してるから!って断ったら今度は野盗を使って盗み出そうとするし、返り討ちにしてやったわ!
しばらく平和だな〜ってまったりしてたら、亡霊型モンスターの目撃情報がだんだんと増えてるってギルドから伝えられた。
あたしも怖いっちゃ怖いけど、野良モンスターが敵意を持ってダンジョンの中に入ることはできないから安心してたの。
でも、実はウチのダンジョンにも異変が起こってた。
フレッシュベジーが育てたお野菜が勝手にふわふわ浮かび上がったり、夜になると蔓角灯の明るい実が蔓を離れて空中に浮いてたりと、怪奇現象が起こるようになった。
蓋を開けてみたらシンプルで、彷徨う魂がダンジョンに棲みついて野菜や蔓角灯の実に宿ったんだって。ジャック・オ・ランタンっていうモンスターで、その名前はあたしも聞いたことがある。
折角だからハロウィン風に飾り付けてパーティしちゃったよね。ウチのダンジョンは年中春だけど。
いつの間にか仲間になってたジャック・オ・ランタンは夜になるとふわふわ漂ってて、新しい名所にもなったっけ。
それからも、魔国に攻め入ろうとする国があったり、はぐれ妖精を保護したと思ったら実は雪の女王の孫娘だったり、ウッディの頭の上にワイバーンが巣作りを始めたり、もう退屈する暇がなかった!
特に雪の女王が来た時なんて、ウチのダンジョンに雪が降ったから雪見しながらの花見ができて最高に盛り上がったわ。
どんどこ仲間も増えて、ダンジョンエリアも広がって新エリアができて、新しく仲間を召喚して…もう数え切れなくなっちゃった!
あ、もちろん全員のことはしっかり覚えてるからね。あたしも賢くなったってことかな?
今までを振り返りながら準備してたらあっという間に一週間が経っちゃった。
DPもほぼ使い切ったし、装備もバッチリ!
さぁ!みんなで思いっきり遊んでこよう!
今回は話の雰囲気上本文中にモンスター説明載せられなかったのでここで。
シルバーブランチツリー:ベリートレントから進化した大樹型モンスター。永い時を経て魔力を蓄えた大樹は銀の枝に金の果実をつけるようになり、その果実を巡って戦争が起きた程であったと伝説に残っている。
自らの存在が争いの火種になると知った銀枝千年樹は肉体を捨てて精霊へと至ったそうだ。
ダンジョンマスターの数は開始時300人
First Stage終了時点で98人 1D100で41、16、41
Second Stage終了時点で34人 1D10で2、4、1、3、2、4、9、1、6 1D8で2
3rd Stage終了時点で22人 1D20で12が脱落
Final Stage終了時点で18人 1D6で4が脱落
って感じの計算になっています。概ね納得できる範囲なのでヨシ!




