ルーブル王国 その1
物語的には第二章になります。
紅羽蓮たちはレッドレッド王国からルーブル王国へ向かう馬車に揺られていた。
城下町の復興やら療養やら、もろもろの問題もあらかた片付いたため、いよいよ本題であるメザイア大同盟の協力要請に向かうこととなったのだ。
馬車には蓮と彼を連れてきた女神エターナル、さらに現地にて突如現れた勇者、アイシャ=レヴンヘイム。蓮たちは彼女の仲間ということでこの旅に同行することとなっている。
レッドレッド大平原を抜け、馬車は山道を走っていた。この山道を抜けると、ルーブル王国の首都が見えてくるらしい。
「ルーブルは海に面した国なんで、漁業や貿易で儲かってるんですよ」
馬車を運転する御者は、朗らかに笑った。
アイシャは御者の言葉に笑みを返し、馬車にいる同行者を見やる。
エターナルが暇そうに髪をいじる傍ら、蓮は寝転がって爆睡していた。
「……まだ起きないのか?」
「山道なのにすごいわよね。結構揺れてるわよ、これ」
蓮は馬車でしばらく時間がかかるとわかると、「じゃあ俺寝るわ。着くころには起きる」と言って、出発からこっち、一度も目を開けずにいびきをかいている。
「全く、魔物とか出てきたらどうするんだ、一体」
「いやあ、でもこの間のドラゴン騒動のせいか、ここいらの魔物はみんな引っ込んじまってますよ。不幸中の幸いですわ」
先日レッドレッド王国を襲った大量の巨竜襲来事件。その影響は国中に広がっていた。
その首魁であった巨竜ジャバウォックは「邪進化」し暴走した。邪神カーリーの憎悪に飲まれ人間を滅ぼそうとレッドレッド王国を襲ったが、蓮たち勇者の活躍により巨竜たちは退散。ジャバウォックは正気を取り戻し、さらなる進化を遂げた末に、蓮と闘い、敗れた。
結果、王国中の集落や貴族領では大規模な防衛政策が敷かれることとなった。これは、あわや王都壊滅まで追い込まれた国王の判断だ。いつ「邪進化」した魔物が襲来するかもわからない。
さらに、これは非公式だが、人間も「邪進化」する可能性がある。アイシャの仲間候補だったグラブ、アルマの二名がこの例だ。彼らは敵として立ちはだかってきた。
これは由々しき事態だった。外部の魔物だけならまだしも、内側にも敵が現れるかもしれないのだ。
アイシャたちが同盟国に向かうのはこれを伝えるためでもある。人間側でもこの事実を知っておくべきだが、多くに報せすぎると皆が疑心暗鬼になってしまうからだ。ならば為政者に伝え、秘密裏に対策してもらう方がいい。
レッドレッド国王にはもちろん話してある。彼を通してルーブルの国王にも伝えてあるので、詳細な説明をするのがアイシャたち「勇者」の役目だった。




