「災い」 その8
かつて、カーレンティアは平和な世界であった。
神々は人間を管理し脅威から守り、人間は神々に信仰として魔力を資源として提供していた。
だが、突如人間の脅威が大きく進化する事態が起こった。それが三〇〇年前の「災い」であり、かつての勇者が沈静化することで何とか治まり、メザイア大同盟が結成された。
その人間の脅威――魔物や悪魔が急激に強く進化した現象を引き起こしたのが、邪神カーリーだった。かつてこの世界で神だったものは、人間を滅ぼそうと人に仇なす邪神となったのだ。人に仇なすものを急激に進化させるこの現象は当時「邪進化」と呼び、邪神の封印とともに沈静化していったのだ。
『いや、もしやと思っていたのだが、確証がなかったのでな。詳細がわからんと言えなかったんじゃ』
『………いや、先に言えよそれ!』
念話で蓮はキレた。
『いや、カーリーはかなり厳重に封印しておったからの、よもや同じ現象が起きるとは考えられなかったんじゃ』
『……私も知らなかったんですけど、それ』
『お前はもう少しこちらの資料を頭に入れるなりしろ!むしろお前が突き止めることだぞこれは!』
『そ、そんなあ……』
「……って、そんなこと言っている場合じゃないぞ!」
一人だけ詳しいことを教えてもらっていないアイシャが、はっとしたように叫んだ。
「まだ!肝心な!ドラゴンを何とかすることが残ってる!」
「…………あっ!」
蓮もエターナルも、すっかり失念していた。先ほどの闘いと「災い」の正体で、すっかり抜け落ちていた。
見やれば、もう黒い巨竜の群れはすっかり彼方へと飛んで行ってしまっている。王都にたどり着くのも時間の問題だろう。かすかに火の手が上がっているところを見ると、王都近くで戦闘状態になっているようだ。
「どうするんだ!?もう馬車もないんだぞ!」
「……仕方ねえな」
蓮は息を吐くと、グラブを地面に寝かせた。
「お前ら、こいつら連れてくか、置いてくかどっちだ?」
「連れて行く!」
アイシャが一切間を置かずに答えた。蓮はふん、と鼻を鳴らす。
「じゃあこいつら抱えろ。絶対離すなよ」
「何か方法があるのか?」
アイシャが目を輝かせるが、一方のエターナルはサーッ!と顔から血の気が引く。もしかしなくても、初めて王都に行った時のあれだ。
「え、あの、蓮、まさか」
「言っとくけど、怖いとか言ってる場合じゃねえからな。あと、おぶれねえから前より相当揺れるぞ」
アイシャがグラブ、エターナルがアルマを抱えると、その二人の腹を蓮が両脇に抱える。
「急げば五分くらいだから、舌噛むなよ」
「え、ここから一体どうs」
アイシャが聞く前に、暴走特急も顔負けの速度で一行は飛び出した。




