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勇者邂逅 その5

「どうしてあんなことになっちゃったのよーーーーーーーーーっ!」

 その日の晩。蓮たちはそれぞれ別行動とし、宿で一晩過ごしてから出発、ということなった。蓮たちはほかの宿も知らないため、ヴェロナの宿に泊まることとなったが、アイシャは王城に泊まるといってそこで別れた。グラブ・アルマの二人も別の宿をそれぞれ取っているらしい。

「なんで勇者様、いや、本当は違うけど!アイシャさんと喧嘩することになっちゃったのよお!私の、なんで彼女が勇者を名乗っているのか、聞こうとするタイミングも全然なかったじゃない!」

「しょうがねえだろ。むしろあいつが勇者でいいよ、もう」

 昨晩と同じくそれぞれ個室を取り、現在は蓮の部屋で女神の説教中だ。当の説教されている方は、ふてくされてベッドに寝転んでいるが。

「大体、あんな奴連れてけるわけねえだろ。どう考えたって役に立たねえぞ、あいつ」

「でも、荷物持ちとか、いろいろ……」

「金さえもらえりゃいいんだから、適当に金つませときゃ害はねえだろ」

「それにしても、自分のお金全部渡す?普通!アイシャさん、あなたへの印象最悪だと思うんだけど」

「まあ、……仕方ねえわな」

 女神の話半分に、蓮は自分をにらみつけるアイシャの顔を思い出していた。

(……怒り顔までそっくりでやんの………)

 ついこの間喧嘩した、愛の表情を思い出す。あの時と違って、ビンタされていないだけまだマシだろうか。

 それにしても、あの表情は脳裏にちらつく。

(やっぱり、怒らせないようにするべきだったかなあ)

 とにもかくにも、「勇者」様とやらの第一印象は最悪だ。どうしたもんか、と考える。

 自分では、どうにも答えが出そうになかった。

そして、ふとズボンのポケットに手を入れた。

 紙切れの感触だ。


「女の子との仲直りの仕方?」

 エターナルが自分の部屋に帰った後、蓮は娼婦ミネルバとベッドに座っていた。

 ポケットに入っていたのは、彼女の名刺だった。いざ呼んでみるとかなりとんでもないことをしている気はしたが、相談するにもエターナルは不安だった。

「まあ。ほぼ初対面で、仲良くなろうとは思うんだけど、その、……喧嘩しちまって」

「……それって勇者様のこと?」

 ミネルバの言葉に、蓮はぎくりとして彼女の方を向く。

「いや、もう町中、その噂で持ちきりよ?あの女の子が勇者様だっていうのは驚いたわあ。そのあと、仲間としてあなたたたちが選ばれたっていうのもね。何、あなたたち、喧嘩してたの?」

 蓮は、今日あったことについて、大まかに説明した。

 勇者の仲間としてのバトルロイヤル、お情けで助けた男、ピーター。怯えていた彼に、金を渡して返してやったこと。それが、アイシャの怒りを買ってしまったこと――。

「それで「嫌いだ」はすごいわねえ。よっぽど気に障ったんだ?」

「そうだと思う。ただ、あの場をどうにかするには、誰かが折れりゃ済むと思ったんだよ。で、誰も折れねえから、俺が折れるしかなかった、と思う」

「……そう」

ミネルバは子供をたしなめるように、蓮の頭を撫でた。

「喧嘩しちゃったことはともかく。あなたは一番みんなが傷つかずに済むようにって思ったわけよね?」

 蓮は口では答えず、首を縦に振った。

「だったら、それには自信を持ちなさい。そして、その子にはちゃんと謝るの。その子の意志を尊重できなかったことに対してね。それから、どうすればよかったのか話し合うといいわ」

 頭を撫でる手が、首筋に移る。そのまま、蓮の頭を優しく胸元に近づけた。

「大丈夫。あなたが正しいと思った理由を、ちゃんと話してあげて?そうすれば、彼女もきっとわかってくれるはずだから」

 蓮は彼女の声に導かれるように、こくりと頷いた。

 昨日ヴェロナが言っていた、話し相手が欲しいだけという理由が、なんとなくわかった気がした。

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