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すかふぇらいね。

教えられません。

浜沿いに一時間。

アオモリの喉元と言うべき橋を更に一時間。

大橋を更に一時間。

合計三時間。

この長い旅路の末に、俺の通う桔梗ヶ丘中学校がある。

他校からは白の楼閣とも形容されているらしい、純白5階建ての建物。

三年前に出来たばかりのこの学校には、笑えない噂がいくつかある。

例えば、地下にはシェルターがあるとかアンドロイドの開発に携わっているとか。

七不思議を通り越して都市伝説入りしそうな勢いである。

だが、火のないところに煙は立たない。

なぜそんな噂が立つのかといえば……まァ、心当たりがない訳ではない。

ただ、そういう説明はもう少し登場人物が増えてからの方が作者的に好都合だと思われるので今は控えておく。

と、いう訳で。


「良川ぁ、正夢を正夢にしない方法教えてけろー」

「何を言ってんの、美玲」

桔梗ヶ丘中学校、一階、宿直室。

そこに、ソイツは居る。

いや、住み着いている。

いや、寄生している。

多分、そのうち繁殖し始める。

そして良川が2匹になり4匹になり、ゆくゆくは1億万匹になり地球を覆い尽くし全人類は滅亡する。

「あのー、全部口に出てるんだけどもー」

「ん?」

「しらばっくれてんじゃねーよ」

「いや、ほら、良川は新キャラだからどんなディスりかまされんのか知っといてもらおうと思ってさ」

「……あ、そういえば正夢って何のこと? 」

「あ、んだ。実はさ…」



***



「残念だけど、美玲が見たのは夢じゃなさそうだね」

そう言うと、良川は立ち上がり、俺の目の前のデスク上のパソコンを起動させ、昨日俺が開いたのと同じ動画を開いた。

流れるような動作。

もしかして、良川も昨日観たんだべか?

広告の後、画面が数秒暗転。その後は、あの粉塵舞う街の、あの映像が三十秒ほど。

それも終わると、緩々と赤いライトが灯り始めた。

「あ」

そこには、あの老人がいた。

ただし、昨日とは違ってあの引き込まれるような感覚は全くない。

二次元と三次元の境界が、今は確かにある。

「このおじいちゃんが喋ってる相手…この声は美玲だよね? 」

俺は耳を澄ました。

『夢から逃げるなよ』

覚えのあるセリフだ。

そして、これは紛れもない自分の声。

「なして? 」

俺は目を疑った。

何で。

だって、そんな筈ない。

画面には、俺が映っていたのだ。

画面の中の俺は、簡素な木の椅子に座らせられて、腕は後ろで縛られていた。

良川を見る。

良川はわらっていた。

それは、いつもコイツがする、ナメクジの欠伸のような笑顔では、全くなかった。

画面を見つめる良川の眼鏡の奥の邪眼は、危険な輝きを放っている。

薄い唇を破って出てきたかのように鮮烈に白い歯は、気味悪いぐらいに、びしりと整列していた。

背筋が冷たくなるのを感じた。

「良川…? 」

俺が呼ぶと、

「美玲、大変な奴に目を付けられちゃったね。御愁傷様」

良川はいつも通りの笑顔に戻って、俺を見た。

「なぁ、どういう事? なんで俺が映ってんの? 俺は昨日、自分の部屋に居たのに……」

「んーと、それを説明するには、少し時間が欲しい」

「なら、良川とこのジジイとの関係は? 」

「ああ、それは簡単だよ」

良川はニコリと笑って、眼鏡を外して俺を見た。

それをしたせいで、やつれた顔が露わになる。

俺は良川のどんな言葉も聞き漏らすまいと、彼の口元を注視した。

どんな言葉が紡がれるのか?

ふ と、その色のない唇が、動いた。


「無関係」




始業のチャイムが鳴った……。





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