表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/91

77.普通の魔獣

 各自、簡易結界の中で別の方角を見て、思い思いの姿勢で警戒する。


 ガサリ。


 一斉に、音の方を見る。木立の間を埋める闇で、双眸が輝いている。

 「兎です」

 ムグラーの声で、ナイヴィスの膝から力が抜けた。その膝を抱えて座り、顎を乗せて自分の持ち場の方向を見詰める。


 何事もないまま、時が過ぎる。

 遠くで(ふくろう)が鳴く声を聞きながら、交代で夕食を摂った。

 いつ、魔獣が襲ってくるのか。ナイヴィスは気が気でなく、携行食の味もよくわからない。水で流して、無理矢理、飲み下した。


 〈そんな怖がらなくても、大丈夫よ〉

 ……そうでしょうか?

 〈三界の魔物より、ずっと楽よ〉

 ……どうしてです?

 〈三界の魔物は、私たちでないとトドメを刺せないけど、普通の魔物や魔獣なら、他の人でも倒せるもの〉


 ナイヴィス一人に重責が掛かるのとは、訳が違う。他の四人は、普通の魔獣が相手なら、実戦の経験を積んでいる。


 〈あなただって、ついこの間、農具小屋の魔獣と戦ったばかりでしょ〉


 あの時の情けない自分を思い出し、ナイヴィスは小さく溜め息をついた。

 ……せめて、足を引っ張らないように、自力で結界に逃げるくらいはしよう。

 気合いを入れ直し、闇に目を凝らす。


 「来ました」

 月が高く昇る頃、ムグラーが警戒の声を発した。


 「何体だ?」

 「二体です」

 隊長の問いに剣で方向を示し、短く答える。


 「一度に二体も……」

 「手間が省けていいじゃない」

 〈早く帰れるんだから、頑張りなさい〉

 震え上がるナイヴィスに、ワレンティナと魔剣ポリリーザ・リンデニーが同時に言った。


 柄に手を触れると、平素よりはっきりと、手を繋ぐ感触があった。いや、手を掴まれたと言うべきか。

 間もなく始まる戦闘に、魔剣の戦意が高揚している。反対にナイヴィスの心は、恐怖に萎縮していた。


 「ナイヴィス、ムグラー、【白銀の網】で右の奴を抑えろ」

 「はいッ!」

 ムグラーが素早く歩み寄る。ナイヴィスは震える膝に力を入れ、何とか立ち上がった。


 「ナイヴィスさんは、結界の中でじっとしてて下さい。【網】は俺が広げます」

 「だっ、大丈夫かい?」

 「任せて下さい」

 余裕のある笑顔に、ナイヴィスは頷き返し、年下の先輩と声を合わせて、呪文を唱えた。


 「白銀(しろがね)の蜘蛛の糸編み網と成し (あや)かしを絡める(あや)現世(うつしよ)の物は掛からじ 魔を捕る網よ」


 震えてはいるが、とちることなく、詠唱できた。

 ムグラーが、合わせていた(てのひら)を離すと【白銀の網】が発動する。すり足でじわじわ、ナイヴィスから距離をとる。


 「天地(あめつち)(あわい)隔てる風含む 仮初(かりそ)めの不可視(みえず)の壁よ、触れるまで (たぎ)真水(さみず)に姿似て ここに建つ壁」


 隊長が【真水(さみず)の壁】を建て、左の守りを固めた。トルストローグとワレンティナは、抜き身の剣を構え、左右に展開する。


 ナイヴィスの目にはまだ、魔獣の姿は見えない。

 (かす)かに、葉擦(はず)れの音が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
【関連が強い話】
野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ