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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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76.誘き寄せる

 夕空をひらひらと、蝙蝠(こうもり)が舞っている。


 ナイヴィスは、蝙蝠を見るのも初めてだ。

 鼠のような体だが、皮膜を使って蝶に似た動きで飛んでいる。どうやら羽虫を食べているようだ。


 外見の薄気味悪さは魔物と大差ない。


 ナイヴィスはふと、魔獣と真っ当な生物の違いは何だろう、と思った。

 文献と世間の常識。知識としては、わかっているつもりだ。


 ここ数カ月は、女騎士ポリリーザ・リンデニーから直接、消化しきれない程、大量の知識を与えられた。

 王都の外へ出て、本でしか知らなかった野生の生き物を見て、実物の魔獣とも対峙した。

 先日の赤い蛇の魔獣も、蝙蝠のような羽で飛んでいたが、あちらは、逃げることもままならないくらい、怖かった。


 魔獣の何がそんなに恐ろしいのか。

 蝙蝠は薄気味悪いが、怖くはない。


 何がそんなに違うのか。


 〈そんなコト考えたって仕方ないでしょ。それよりホラ、もう時間よ〉


 考え事をしている間に日が暮れていた。

 ナイヴィスとムグラーが、それぞれ、ワレンティナとトルストローグを起こす。


 「闇照らす 夜の主(あるじ)の眼差しの 淡き輝き 今灯す」

 ソール隊長が、泉の周囲の木々に術で【灯】を点した。

 「この明るさで、雑妖程度のモノは寄って来なくなる」


 〈魔物も魔獣も、魔力のあるものが好物だから、魔法の【灯】に寄って来るのよ〉


 「えぇッ?」

 「なんだ、ナイヴィス、雑妖と戦いたかったのか?」

 「いえ、滅相もない」

 両手を振って、全力で否定する。


 〈何しに来たか、わかってる? 魔獣の討伐なのよ? 忘れたの?〉


 「ムグラーの言う通り、ここに誘(おび)き寄せ、迎え撃てば戦いやすい」

 「簡易結界もあります。よっぽど強いのじゃなければ、それで凌(しの)げますから」

 ナイヴィスを安心させようと、隊長とムグラーが口々に言う。


 トルストローグが親指を立てて笑った。

 「肉体を得た魔獣なら、俺も戦い慣れてるから、戦うのは任せろ」


 「お兄ちゃん、食べられちゃダメよ?」

 「う……うん、頑張る」

 十二歳から自警団に所属し、魔獣と戦ってきた従妹に言われ、ナイヴィスは頷いた。

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用語は、大体ここで説明しています。
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野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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「野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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