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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第三章 討伐の任務

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56.鼻つまみ者

 そいつはね、この村に古くから住んでる一族の長男なんですよ。

 去年の春から行方知れずになってたんです。


 そいつが居なくなった時、もうよぼよぼの母親が哀れっぽく、みんなに探すように頼んで回ったんですけどね、誰も首を縦に振らなかったんです。


 勿論(もちろん)、ウチも断りましたよ。

 行方知れずになった理由が理由ですからね。


 どこから言ったもんか……そうさねぇ……そいつの子供時代から……いや、もうちょい後からでいいやね。

 そいつは十代半ばくらいから、聞かれもしないのに、女の好みを言うようになったんですよ。


 「女は若い方がいい。常命人種(じょうみょうじんしゅ)はすぐ劣化するから論外。長命人種(ちょうめいじんしゅ)こそ至高」


 そんなことを(はばか)りもなく言うもんだから、みんなに白い目で見られてたんですよ。

 なんせ、この村には長命人種は居なくて、そいつも含めてみんな、毎年、年取る常命人種なんですから。


 そりゃ、何百年も若いままで過ごせて、人によっちゃ千年近く生きるなんて、羨ましく思うこともなくはないんですけど、長命人種には長命人種の悩みがあるって言いますからね。いいことばっかりでもないんでしょう。


 そいつには姉と妹も居ましたけど、勿論(もちろん)、常命人種ですよ。


 姉妹からしょっちゅう(たしな)められてましたけどね、聞く耳持っちゃいませんでしたよ。

 「ババアの僻みだ」

 「女の醜い嫉妬だ」

 「若い女が羨ましくて言うんだろう」

 ……なんて憎まれ口ばっかり叩くもんだから、仕舞(しま)いに姉妹からも愛想尽かされてましたね。


 当時健在だった祖父も父親も、何も言わなかったんですよ。あいつと同じ考えだったんでしょうかね?

 姉妹はずっと遠くの村に嫁いで、村に全く寄りつかなくなったんで、今、元気でいるかどうかも……

 親戚連中は姉妹の婚礼の後、その一家との付き合いを減らしましたよ。とばっちりが嫌で。


 そんなことになっても、そいつの家族は、何も言わなかったんですよ。



 「ふむ……一家を上げて、倫理観が希薄だったのだろうか」

 「この親にしてこの子あり……って奴ですか?」

 「そうなんでしょうねぇ……姉妹は真っ当に育ったのにねぇ……」

 おかみさんは、隊長とトルストローグに頷いて話を続けた。



 それから、成人の儀をする年頃も過ぎて、そいつと同年代の若いコたちは、恋仲になって次々婚礼が挙げられたんですよ。

 そいつは、村の若いコたちを祝福するどころか、(あざけ)り笑ってましたね。


 「あんな、すぐ劣化するのとくっついて」


 そいつと同年代の若夫婦に子供が産まれても、そいつは幼馴染たちを祝福するなんてことは、とうとう、一回もなかったんですよ。


 母親になったコたちに、酷い侮辱の言葉を投げつけて、卑猥なことばっかり言うもんだから、一人、また一人、一応付き合ってくれてた友達も失くしてましたね。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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