17 ボス②
南では現在攻略組がボス討伐を行っているから北にはまだ来ないだろうし、来たとしても東の探索も兼ねて数日は大丈夫だろう。
けどこのままゴーレムを放置していても、すでにここは探索組がボス部屋だろうと推測してる場所はもう割れている
どちらにしても時間の問題かな…?
「ゴーレムさんは地形…というかマップに詳しいですか?」
『いえ、俺はこの部屋から出たことないんで…』
たしかに入口はゴーレムが通れるほど大きくはないし、出口らしき場所も大きい方ではあってもゴーレムの方が明らかに大きい
それに若干忘れがちになってしまうけど、エリアボスを倒さなければそのエリアより先のマップに行けないとか言っていたはずだから北エリアだけは見逃してもらえないだろう…
『あの…俺やっぱり殺される運命なんですかね?』
不安そうな声がとても辛い…私は魔王なんだから守ってあげなくちゃと思うけど、人間なんだからみんな助け合っていかなきゃなんてこともこんなときでも考えてしまう。
優柔不断とか偽善者とかいわれても仕方ないかな…それでも救えるなら救わなくちゃいけないって思ってしまう
「大丈夫ですよ、きっとなんとかなります…」
『そ、そうですかね…!』
気休め程度の言葉、気休めになっているかすら怪しいけど、それでも喜んでくれたから私が頑張らなきゃ
ずっといても仕方ないし、さいあく北のボスが攻めてくるなんて心配もなくなったのでとりあえず町に戻ることにして、ゴーレムにはこの場に残ってもらい端っこの方で石の振りでもしておいてもらった
とりあえず攻略組が戻ってきたら北の坑道ではボスは見当たらなかったと報告するとして、ほかのボスも中身が人間なら…人間なら…助けないといけないのかもしれない
ちなみに坑道内のモンスターはいつもどおりに出てきたけど、行きよりも帰りが妙に時間がかかった気がした。
町に戻り、そんな長かった感覚はないけど意外と時間が経っていた
攻略組はまだ戻っておらず、町に残った人たちが相変わらず復興作業をしている。
一旦部屋に戻…いや、いままで散消極的になっていたから後悔したってそろそろ気づかなければいけない
それなら南のボスも助けにいかないといけない
「あの…!すいません南のダンジョンどこにあるかわかりますか?」
私は…町の人に聞いて、数人目でようやく知っている人がいて、走って向かった。
なんというか、走ってる途中でさっきまでの興奮が少し冷めてきて考えてしまうんだ
こんなふうに一生懸命するのは私には向いてないって…けど、言い訳というかなんというか、あのゴーレムが人間で、死にたくないのに殺されたくないのに殺したくないのにどうしようもないのかなって思っているのが自分の未来と重ねてしまっているんだと思う。
「お願いだから…」間に合って欲しいって思う
南西にある海が見渡せる場所の近くに岩が無数ある地帯があって、そこのどこかにダンジョンの入口があると聞いたけど実際にたどり着いてみてもすぐにどこにあるのかわからない
まぁ、すぐに見つかるようなところにあるわけ無いとは思っていたけど、予想していたより岩地帯が広い
闇雲に探してる間、胸がすごくざわついて嫌な感じがする。
また弱音を吐きそうな時に岩と岩の間に空洞のような穴があり、結構深いようでこれがダンジョンかなと魔眼を使い中に入る。
奥の方へただ走り、地面の岩が若干ヌメっているのか滑りそうになりつつも進んで、人の声が聞こえた
「よし!もう少しだ!」
もう少し…?
「あと少しで倒せるぞ!」
「ま、まって!」
倒したらだめと思って大声を出してみんなの元へ着くと、そこにいたみんなが一斉にこっちを向いて一瞬ギョッとした顔になってすぐに私と気づいてくれた。
「し、シュリ?どうしてここに?」
アインさんが声をかけてくれるけど、今はそれよりも南のボスがどうなっているのかと見てみるとそこにはゼリーみたいな壁があるだけだった…
「シュリ?」
「えと…ボスですか?これが」
「いや、これはただのスライムだな」
そのやりとりを見ていたライダーさんが大笑いしながら、みんなもその空気に若干和みはじめた
私的には恥ずかしかったりするから助かるけどアインさんだけやたら怖い顔をしていた
「なんでここに来たんだ?ちゃんと教えてくれ、あとその目どうしたんだ?」
ちょっと心配しすぎですよ、とかいったら怒りそうだから言わないけど、とりあえず目に関しては暗視スキルですと言うとアインさんは納得してくれた。
正直苦し紛れでしかないけど、なぜか納得してもらえたので良しとしよう
けど、暗視スキルって言ったとき、ちらっとライダーさんの方を見たのだけど、そのときすごい胡散臭い笑みで見ていたのが少し怖かった
「ここへ来たのは皆さんにお願いがあって来たんです」
「攻略が終わってからでもいいんじゃなかったのか?」
「アイン、シュリちゃんがせっかく話そうとしてるのにあんま邪魔しても仕方ないだろ」
アインさんがまだ言い足りない顔だけどライダーさんが止めに入ってくれて助かった。
「ライダーさんありがとうございます、私が来たのはみなさんにボスを倒すのをやめてもらいにきました」