表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

第三十一章

 ある晴れた月曜日、望は休暇を取り、二人で遠出のドライブをすることにした。行き先はN県にある高原の湖だった。望は朝早くから起きて弁当を作り、いつになくはしゃいでいた。僕も久しぶりのドライブを楽しんでいた。

 湖畔に着くと、望は車を降り、思い切り深呼吸した。そして足元に咲く野花に顔を近付け匂いを嗅いだ。


「あんまりいい匂いがしないわ」

「野草は大抵がそうなんじゃないの?」

 僕は笑いながら答えた。

「そうね。匂いのいい薔薇なんて、みんな人が改良したものだものね」

「それにしても気持ちがいいなぁ」

「ええ。晴れだし、とっても気持ちがいい」

「今日は日曜じゃないし、どこも空いてて得した気分」

 僕は空に顔を向け、思い切り伸びをした。望も僕を真似て伸びをした。

「ねえ、康平君が見る夢ってこんな風景なんじゃない?」

「うん、よく似てる」

「へぇ、綺麗な夢なんだね」

「綺麗といえば綺麗なんだろうけど、そんなことを考えたことがなかったな」

「サンシャインと話に夢中になっているから?」

「うん」

「希さんとも?」

「そうだね。でも、最近、夢は見ていないんだ」

「そうね……そうだと思った。だって、最近の康平君、真夜中に起きてることが多いから。でも、残念だな。サンシャインの話が聞けるのを楽しみにしてたもの。サンシャインは、いつものグリーンの服を着ているの?」

 僕は望のその言葉を聞いて、自分の耳を疑った。彼女に何度かサンシャインの話をしたが、サンシャインがグリーンの服を着ているということを、彼女に話した記憶がなかったからだ。僕は言葉を失い、望をじっと見つめていたが、やっとのことで口を開いた。


「ねえ、何故、サンシャインがグリーンの服を着ていることを知っているの?」

「……」

 望ははっとし、湖を眺めていたのに、あらためて僕のほうに向き直り、僕の顔を見つめた。今度は望が黙り込む番だった。僕はもう一度、訊ねた。

「どうして知っているの? もしかして、君は宮崎望じゃなくて葉山希じゃないの?」

「いいえ、違うわ。私は宮崎望よ」

「本当に?」

「……」

 

 望はしばらく黙って考え込んでいるようだったが、意を決したかのように僕に向かって言葉を発した。

「康平君、ごめんなさい。私、嘘を吐いてる」

「君は葉山希なの?」

「ええ、でも、この身体は宮崎望のものなの」

「ど、どういうこと!?」

「あなたと話をするために、彼女に身体を借りたのよ」

「君は亡くなっているの?」

「ええ」

「……!」

 僕は驚きで息が詰まりそうになった。

「驚かせてごめんなさい」

「い、いつから入れ替わったの?」

「康平君と一週間の旅行に行ったときからよ。でも、ずっと入れ替わっているわけじゃないわ。望は私のために時々、身体を貸してくれているの。でも、この頃はほとんど私に貸してくれていたんだけど……」

 あんなにおとなしかった望が、何故急に明るくなったのか、その理由が漸く分かった。僕は頭を振り「君に訊きたいことがありすぎて、一体何から訊いていいのか分からないよ」と言うと、希は「時間はたっぷりあるわ」と言った。



第三十二章に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ