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第二十一章
春が来て僕は二十九歳になり、夏が来て望は二十七歳になった。交際を続けて一年あまり、僕は望との結婚を真剣に考えるようになっていた。ずっと一人ぼっちだった分、家族を持つことへの憧れが人一倍あるからだと自分でも思う。
望と交際するようになって、彼女の私的なことをいろいろ知ることになったが、彼女は自分の家族に関することをあまり喋りたがらなかった。望は生まれてすぐ養女に出されたらしく、その事実を中学生のときに初めて知り、それ以来、両親との仲がなんとなくうまくいっていないのだと言う。育ててくれた両親には感謝しているが、妙な遠慮があって、就職して家を出てからというもの、電話は何度かしたが帰省したのは一度きりだと言っていた。
そんなとき、僕は「時が解決してくれるよ」と言ったが、望が養女だということが気に掛かって仕方がなかった。彼女が養女ではなく普通の家庭の一人娘として生まれていたなら、僕と彼女が兄妹であるわけがなく、何も悩まなくていいのに、と思った。
第二十二章に続く




