第1章5話
錬金術。それは、施設と素材と術師がいれば何でも生み出す技術。そう、技術。才能がゼロでも、錬金方法や錬金レシピ、それを覚えれば誰にでも使える物。だが、それを覚えるのに長い過程を乗り終えれる人は多くはない。
だが今の俺には錬金工房どころか、自分の家すら無い。昨日、泊まったのは宿屋だ。アゾットに家を造らせるのは悪く無いが、生憎アゾットはかなり大忙しである。アゾットの兄弟分であるアルバに頼むという線で行こうと思う。彼はこの村で家とかを造っており、村の周りを囲っている柵と門を造ったのは本当はアゾットでは無くて、アルバである。
取り敢えず、アルバを探してみる。20分くらい村を彷徨ってようやく見つける事が出来た。俺はアルバに声をかける。
「おーい。アルバ!」
アルバはその声に気付いてこっちに来る。
「レブルさんじゃねえか。どうしたんだ?」
「俺の家と錬金工房を造って欲しいんだが……」
レブルは急な話で断られるかな~と思ったらしく、声が小さめになっていた。アルバはレブルの肩を叩くと言う。
「おう! 任せておけ!! どんな感じで設計すればいい?」
アルバはそう言って来る。レブルはあらかじめ用意していた家の設計図を渡す。
設計図は家の部分は最低限の設備しかない小屋という感じで、錬金工房を小屋の地下に設置するという物だった。錬金工房は場所を取るため、地下に造ってもらおうと思っていたが、無理かな~と思っている。だが、アルバの返事はその予想を上回った。
「あらかじめ用意してくれるとは嬉しいな。これくらいなら日が落ちる前に完成するな。任せておけ!!」
わーお。俺がかつていた日本ですら何日かかかる作業だと思っていたのだが、流石はドワーフ。数時間でこれを完成させるのか。
アルバは設計図を持って、自分の工房に向かって行った。レブルはその背中を見て、一つの目標だと思い、その場を後にする。
俺はログハウスで暇をしていた。やることが完璧に無くなったからである。コクロウも暇をしている。日が落ちるまでかなり時間があるから、俺はコクロウを連れて村の外に出ることにした。
何故、村の外に出たかと言うと、うん、まあ、自分の戦闘能力について知りたいからである。魔法とかも使い方がいまいち分からない為、いざという時の為に身体は動かしておく必要がある。
コクロウによると、帝国の人間が整備した道の周辺には強力な魔物は存在しなくて、整備されていない道の辺りが強力な魔物が存在するらしい。俺はコクロウに案内されて、魔物の出る地域に向かう。
少しすると、二足歩行をする熊がいた。全長は2mくらいで爪が異常なまでに大きい。また、目もかなり赤くなっていて、息も荒い。
レブルは左手をそっと前に出す。ロベルトの本によると、魔法は呪文の詠唱を必要とするがスキル、超魔法により、呪文の詠唱は必要ないらしい。そして、呪文を詠唱しない場合は魔法をイメージすることが大切らしい。
俺は魔力が左手に集まるイメージをする。心無しか左手が光って見える。そして、魔力が黒い炎に変化するイメージをする。………成功だ。左手が黒い炎を纏い始めた。
そして、黒い炎が圧縮され、熊に飛んで行くイメージをする。黒い炎は高速で飛んで行き、熊に直撃する。
熊は動く事は無かった。反応する前に全てが終わったのか、立ったままで死んでいた。
「流石は我が主人。狩猟部隊が苦戦した魔物を一撃で倒すとは」
あれ、苦戦したんだ。まあ、今のステータスじゃ余裕か……? 駄目だ。何を基準にしていいのか分からない。そうだ! ステータスブックを使えばいい!!
「コクロウ! 少しお前の血を分けてくれ!」
「了解しました!」
そう頼むと直ぐに血を分けてくれた。そして、ステータスブックに血を垂らす。白紙のページにステータスが表示される。
コクロウ 獣人 伝説王牙 熟練度45(C)
筋力3000
体力1万
耐性4500
知識2000
魔力1000
常時スキル 五感強化 魔力感知 気配感知 言語理解 消音 超高速移動 全属性耐性 全属性適応
任意発動スキル ステルス[魔力感知無効][気配感知無効] 赤の眼光 瞬間移動
戦闘スキル 烈風牙 烈風撃 暴風の咆哮 超連撃 影分身
少し表記が変わってる!? 少し見やすい気がするが……。知識のステータスが上がったからか? ちょっと自分の奴も……。
レブル 魔人 熟練度??(?)
筋力6500
体力5500
耐性5000
知識5万
魔力300万
常時スキル 暴君 魂 錬金王 魔力超回復 肉体超再生 剛腕 全属性超耐性 全属性適応 魔力感知 気配感知 魔力圧縮 吸収 捕食者 念話 消音 言語理解 知識の宝物庫
任意発動スキル ステルス[魔力感知無効][気配感知無効] 威圧 瞬間移動
戦闘スキル 超魔法 剣術 真・二刀流 超分身 獄門 黒炎
何か色々とおかしい。錬金系のスキルが一つになって錬金王になっているな。なんだよ知識の宝物庫って。魂とか暴君とかって今考えるとどういうスキルなんだよ………。数字の方も何もしてないのに強化されているし……。
そんな事を考えていると声が聞こえる。
『知識の宝物庫解説。このスキルは対象を何かを知ることが出来るスキルです。ほぼ全ての事が分かります』
声が聞こえた……。ちょっとしたホラーだけど、慣れれば問題ないかな?
そんな事を考えている時だった。とても微量な魔力を感じた。今にも消えそうな魔力。俺は魔力のする方に走った。距離もそう離れてはいない。
そして、魔力の感じた所についた。そこに居たのは…………。
「帝国の女性……?」
そこに居た、いや、倒れていたのはボロボロになった帝国の軍服を着ていた女性であった。
第1章6話は今日か明日に投稿します