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シャルロットの日常  作者: アルタ
暗号解読プログラム
12/64

5 ☆1

 学園の朝は早い。朝の食事当番の班になった者は早起きして全員分のご飯を作る。その他のものは少し遅れて起きた後、掃除と洗濯をする。日常生活をするスキルを身につけることが必須なので、生徒達はある程度身の回りのことは出来るようになっていた。


 大広間で寝ていた皆は、いつも目が覚める時間になると、目をこすりながら体を起こしだした。小さな手で毛布を綺麗に畳んで積み上げる。

 気がつけばすやすやと寝ているのは、不規則な生活に慣れきった新任の先生だけ。

 彼女のプライドのために、「シャルさん起きてー」とぷにぷにとほっぺたを突かれていたことは黙っておこう、とベルナーは決めた。


 朝食のトウモロコシパンとベーコン、目玉焼きをお腹におさめたあと、なんだか違和感の残るほっぺをさすりながらシャルロットは時間割に手を伸ばす。

 ……さて、本日の授業は何かな?



 → 数学


 というわけで本日は数学の授業です。

「シャルロットさん、教科書は使わないのですか?」

 ちょこんと椅子に座ったフォルスが緑色の髪を揺らして首を傾げた。真面目な秀才を絵にしたような彼は事実、筆記科目では優秀らしい。


「うん」

 彼女はあっさり答えて、かわりに白紙の紙と羽ペンを参加した生徒に配った。「羽ペンは、力入らないからあまり好きじゃないなぁ」と難しい顔をするツンドラに安心するよう言葉をつなぐ。

「大丈夫です。これは自動速記ペンだから、自分の手で書く必要はないですよ」


 アカデミーでは良く使われている魔法道具であるが、地上ではなかなか手に入らない。ふわふわした白い羽、ペン先のほうが見る角度によって淡いパステルブルーを帯びている。

 見慣れない生徒達のために、彼女は目の前で使ってみることにした。

 パキンとペンの先を折って少し魔力を与える。

 魔力の量はホンの僅かで良い。ペンが認識すると少し震え、羽がフワフワと浮いた。そして、サラサラと勝手に白紙の紙へ書き出す。


「これはペン先をおった人が書き留めておこうと思ったことを自動で書いてくれるの」

 魔法の修行もかねてます。と付け加えると、教室の中は一様に感心したような顔をした。

「それと今日の授業はいちいち手で書いていたら遅いから」

 にっこり笑った彼女に、セブルスがなにするんだろうという表情を顔に浮かべた。先生の手元を見ると先ほどの白紙に、大きく文字が描かれていた。


====今日は暗号解読です。====


「大事な記録を扱う……それはどこに行っても一緒なんだけど、最近大事な情報を暗号化することが主流になってきました。

 勿論、機密文書などは今日の授業のような簡単な暗号を使うことはありませんが、それでもパターンを覚えておけば、自分でも暗号文を作ることが出来ますし、解き方が失われた暗号文を読むことができるかもしれません。

 大事な情報を渡すとき、最初に暗号文を、そして別便で解き方を送るという方法もとることができます。

 情報を公開することも大事ですが、大事な情報を守る術を知ってください」


 一人一人自動速記ペンを使いこなせるか、みて回りながら彼女は説明した。

 今日の生徒は昨日よりも少し年齢が高い。また、総じてここの生徒は魔力が高く優秀なので問題ない……と思えば、数名苦戦しているようだ。

 ペンが落ちそうになりながら頭の上をぐるぐる周っている。


「なんでちゃんと飛ばないのよ」

 水色の髪に涼しげな目元のツンドラが悔しそうにきゅっと口を引き結ぶと、羽ペンはぱたりと机の上に落ちて動かなくなってしまった。

 最近の自動速記ペンは子供でもすぐ使えるように改良されている。

 シャルロットが手に取ると、ペン先だけでなく羽の部分まで折ってしまっていた。


「ツンドラ、もう一度やってみましょう」

 そっと跳ねている羽ペンを両手で包む。修理すればまた飛べるようになるだろう。魔力で折れた部分を固定し、しまいこんだ。変わりに新しい羽ペンを取り出し、ツンドラに渡す。


 今度は間違えないように、こわごわといった感じでゆっくりペン先を折った。

 すると、とたんにそれはヒラヒラパタパタと紙のところに行って「やった!」と嬉しそうに書き始め、教室のみんなを微笑ませた。



「じゃあ全員が用意できたところではじめますね」

 教室を見渡せば不安そうな顔もいくつか混ざっているが、

「今日はそんなに難しい暗号をやるわけじゃなくて、基本的な暗号解読の取っ掛かりにしようかと思うの。だから怖がらないでね」

別にテストとかないし、ゲームかパズルみたいに思ってもらえたらいいな。彼女が言葉をつなぐと、安心したような雰囲気が流れる。

 『じゃあ楽勝じゃん』と自動速記されている者もいた。

 シャルロットはクスクス笑いながら、ピンと指でその子の羽ペンをはじくと、ペンはパタパタと扇いで「じゃあ楽勝じゃん」の文字を消していく。



 その間に白いボードにサラサラと1問目が現れた。

 教室の後ろからでも見えるように、シャルロットは羽ペンではなくボードと意志を持って動く黒いインクのようなものを使っている。


 「肌に冷たい北の風」→「ツニダハキイタメゼカノタ」と表した時

 「ヒノズミノギツノンナハヒナカヒノ」?


 フォルスが手を上げてすぐさま返す。その答案に「木の日」という文字がサラサラと現れた。

 正解である。なかなかに反応が早いな、と彼女は唸った。これはもう少しレベルを上げたほうがいいものか。

「よく問題文を見てね。相談してもいいよ」

 そう付け加えると他の生徒の答案にも「木の日」と浮き上がってきた。

参考:鈴木清士 判断推理必殺の解法パターン改定第2版 実務教育出版

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