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シャルロットの日常  作者: アルタ
暗号解読プログラム
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13/64

5 ☆2

 机の上に残された手紙や書類を分類し、返事の必要な招待状類は欠席へ返信した。自動速記ペンが、過労死するといわんばかりに、羽で肩をぺしぺしと叩いてくるが無視する。

 多分、今俺の眉間には盛大に皺が寄っているだろう、と考えたところで、のんきなノックが堅い樫の扉から聞こえてきた。


 帰れ!というよりも先にそのノックの主はズカズカと部屋に入ってくる。

「みっかちゃーん。シャルロット様の亜空間理論のデータ見せて欲しいんだけど……」

「みかちゃん言うな!」

 キッとなって多忙な助手が怒ると「シャルロット様だけしか許してもらえないなんて寂しいん」などと体をくねらせたので、とりあえず彼はそのままの状態で固まるように呪文を唱えた。

 まるで南国ダンスを踊っているかのような格好のまま止まった同僚をそのままにしてキャビネットを開けると、アルファベット順に整理されたデータから亜空間理論について書かれてあるものを探し始める。


 あの人は整理整頓があまり得意ではなかった。

 召喚したものがどこから来るのかわかったら、逆にそこへ物を押し込めるのかしらーとのんきに話していた部屋の主を思い浮かべると、ミカエリスは苦いものを口に含んだような顔をした。


「あった、これ。持っていけ」

 ミカエリスの呪文などすぐに破ってしまった同僚は、少し痛々しいものを見るような目で研究データを受け取る。

「この部屋も随分寂しくなったな」

 うずたかく積まれていたたくさんの蔵書はある日突然消えてしまった。それは、シャルロットが一時的であれ定住する場所を決めたということになる。

 昔から、重要な調べ物をするときには、ふといなくなる癖があったが、それでも自分にだけはメッセージを残してくれたのに。

 もう戻ってこないのだろうかと考えて、ミカエリスは心が痛むのを感じた。

(俺じゃだめなのか? あの方をつないでおくことは出来ないのだろうか?)






―― 学園3階 教室


「この問題は“転置式”と言われる初歩の暗号で、4つずつ区切って反転させると答になります」


「ツニダハ キイタメ ゼカノタ」が

「ハダニツ メタイキ タノカゼ」→「肌に冷たい北の風」だから

「ヒノズミ ノギツノ ンナハヒ ナカヒノ」は

「ミズノヒ ノツギノ ヒハナン ノヒカナ」→「水の日の次の日は何の日かな」?

となるわけで……と説明すると、全ての生徒が分かったよというような誇らしげな顔で頷いている。

 この世界は、月の日から始まり、火の日、水の日、木の日、金の日、土の日、日の日の7日を1週間としている。これを4回繰り返すと1月だ。そして13月で1年となる。



 では第2問!

「スープ」→「ZSYOXUWPV」と表した時、

昨日の夕飯に出された「ZSYAXLWAVDU」には何が入っていたでしょう?



 今度はツンドラの答案にすぐ「カリフラワー、ニンジン、アスパラガス」と現れた。

 少し遅れて、勘の良い子供達が気づきだす。


「シャルロットさん、一字おきに Z、Y、X……と後ろからアルファベットを抜くと、例題は『SOUP』となりますよね。同じ要領で問題を解くと『SALAD』という字が出ます。簡単な分置式の問題です」

「あっ!そっか。ツンドラすっげーな」

 ワンドが感心したように頷くと、彼女は水色の髪を揺らして当然だとばかりに胸を張った。



 ではでは調子が出てきたところで3問目に行きましょう。


「賢者の塔」→「HBKGVXKLQLR」と表した時、

「YIXZH」は何色でしょう?


――今度は皆が黙り込んでしまった。


 先ほどはピンとひらめいたツンドラも眉間にしわを寄せて、順番を入れ替えたり、カタカナに変換している。この暗号はなかなかひらめきにくいのが特徴だ。

 しばらくしてまだ考えている皆にシャルロットはヒントを出した。

「漢字のままだと分かりにくいわ。ローマ字に変換してみて?」


 賢者の塔を「KENJYANOTOU」と変換し、

 これを例文「HBKGVXKLQLR」と照らし合わせてみる。


 それでもどう解釈してよいものかと必死で考えているらしく、自動速記ペンが次々考えたことを書き込んでは横に線を引いて消していった。「ハゲそうっ」と誰かが呟くのと同時に、フォルスが「あ、わかった」と呟いた。

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