我らは死獣神(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。
平成17年5月22日。殺し屋集団として新たに活動を開始した龍達だったが、この日、3人揃って雲雀の店で頭を抱えていた。
というのも、サイト統合自体は無事済んだのだが、『殺し屋チーム』と名乗るのは味気ないと翔馬が言い出し、現在、チーム名を決める会議の真っ最中なのである。
話し合いの中で、『ナニワ殺し屋組』や『四聖獣』、『告死神』等各々がいろんな案を出してくるものの、しっくりくるものがなく、3人はテーブルに向かって唸っていた。
そんな会議が難航している彼らの元に、死獣神サイトから依頼のメールが届いた。
一斉メールで届けられた点から、全員参加しなければならないほど難易度が高い仕事と思った龍達は、メールの内容を確認した。
内容は家族を殺した暴力団・鎌瀬組の組員全員を殺してくれという、未亡人からの依頼で、その幹部・乾は特に強く、警戒するようにというものだった。
「……報酬は1200万、か。組員全員ってことはけっこうな大所帯やな。乾って奴もヤバそうやし、初っ端からだいぶヘビーな仕事やな」
雲雀の言葉に龍も同意し、他に情報がないかメールを詳しく調べてみた。
すると、依頼文から3行ほど空けて書かれた短い文章をみつけた。それは、まだ顔も見たことがないサイトオーナー・玄武からの追伸だった。
そこには、『君らは、ターゲットに死を与える獣神だ。存分に暴れるがいい』
という激励の言葉が書かれていた。
応援してくれる気持ちは伝わったが、独特の言い回しに、龍と雲雀は首を傾げた。
だが、玄武と長い付き合いの翔馬だけは、その意味がすぐにわかった。
彼は納得してから2人に、玄武が言いたかったのは自分達のチーム名の候補だと語り、彼が提案したチーム名を代弁した。
午後10時頃。青龍らに呼び出された鎌瀬組の暴力団総勢400人が、大阪市内の埠頭で待っていると、呼び出した張本人である3人が颯爽と現れた。
「お前らが、あのなめくさった手紙を出した殺し屋か?」
組長の質問に3人は頷き、
「いかにも。僕らはあなた達にしを与える獣神」
「その名も……死獣神!」
「現在、新入り募集中やでー」
青龍達は自らのチーム名である『死獣神』をかっこよくそう名乗った。
普通なら決まった感じの空気になってもよかったが、最後の朱雀のセリフに脱力したのか、組長や組員達はズッコケた。
「あのガキ、力の抜けることを……が、所詮ガキはガキやな。この人数相手に無事で帰れる思っとんのかい。お前ら、やったれ!」
組長の合図を受けて、下っ端398人は青龍達めがけて一斉に向かって行った。その猪突猛進っぷりを前に3人は余裕を崩すどころか見下した。
「アホやな」
「僕らはいわば、一騎当千の力を持つ者。なのに、突っ込んでくるなんて、戦力差を把握できないのかな?」
「だね。こんなの朝飯前だよ。さぁ、楽しもうか」
そう言ったあと3人は、青龍の高笑いを合図に組員達の相手をした。
『ナニワ殺し屋組』を提案したのは雲雀。『四聖獣』を提案したのは龍。『告死神』を提案したのは翔馬です。




