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痛み

朝から快晴!

今日も暑くなりそうだ。


「おはようございます」


『おはよう』


挨拶をして朝食の席に着くと、今朝の食卓には魚がなかった。

代わりに目玉焼きが2つ……


おじいちゃんが、永遠の目を見て「ふふっ」と笑った。

永遠もつられて「ふふっ」と笑った。


朝食が済むといつも通り畑へ向かった。

汗だくで草むしりをし、お昼は冷たい素麺を食べ、


「行ってきます‼︎」

と元気に出かけて行った。

永遠の行く先はもちろん川。


暫く水と戯れていると、黒コートのカースケがやって来て水遊びに加わった。

「いつも思うんだけどさ、その黒づくめの格好、なんとかならないの?」


『うーーん。難しいな。俺、元に戻っても黒いし……』


「見てるだけで暑いし、イケメンが台無しだよ」


『うるさいな!俺は、結構気に入ってるんだが……』


「脱げないの?」

永遠がカースケに水をかけた。


『やめろよ!脱げないよ!このコート、羽根と一体化してるから』


「マジ?なんか笑える」


『うるさいっ‼︎』


カースケが水で猛攻撃して来た。

「もう、興奮するとカラスに戻っちゃうよ!」


案の定、キャーキャーやってるうちにカースケはカラスに戻っていた。

ひとしきり遊ぶと疲れてしまい、両者は岩場に腰かけた。


「カースケ、うちのお父さん達の事、知ってたんだね」


『最初に仲良くなったのは省吾だったな……』


「どうして?僕の時もそうだったけど、どうして僕達の前に突然現れたの?」


『それがさ、俺にもよく分からないんだ。ただ、ここが痛むんだ。

ここが痛んで教えてくれる。俺を待ってる奴がいるって……』


カースケが「ここ」と言ったのは胸の白い模様の事。


「痛む?なんで?」


『さあ……昔、昔についた傷だからな、この模様は……』


「ふーん……あのさ省吾さんって、どんな人だった?」


『変わらないと思うよ。不器用だけど、情に熱い少年だった。

お前のお母さんの事、本当は省吾だって好きだったのに、

あいつ、永斗との友情を取ったんだぞ!今だって、永斗の代わりになろうと

必死になってるだろう?』


「どこが⁉︎腹たつ事ばっか‼︎」


『そうか……俺は、省吾も永斗も大好きだし、どっちも友達だからなぁ。

それぞれ、良いとこあると思うんだが……』


「あの人、ガサツなんだもん。飲兵衛だし……口悪いし、

僕の嫌いな鯵フライ、大好物だし……」


『鯵フライは関係ないだろう?』

カースケが笑った。


『そんなに悪い奴じゃないよ。仲良くしてやってくれよ』


「やなこった!」永遠が舌をだした。


「ねえ、もうひとつ聞いてもいい?」


『何だよ?』


「ショウキチって誰?」


『……お前、何でその名を?』


「この前、ここで寝言言ってた。ゴメンって……」


『そうか……庄吉は、俺の初めての友達』


「へえ」


『人間はみんな俺を嫌ってた。なのに庄吉だけは俺を可愛がってくれて、

餌をくれて、名前をくれた』


「名前?カースケ、名前あるの?」


『庄吉がつけてくれた名前は「ユキ」っていうんだ』


「ユキ?そんなに黒いのに?変なの」


『ずっと昔、俺は真っ白なカラスだったんだ。でも、人間は白いカラスを忌み嫌って、

俺の仲間も随分殺された。そんな中で庄吉は俺を庇って、飢え死にしてしまった。

あいつの亡骸の横で泣き続けてるうちに今の姿になっていた』


「だから、さっき胸の模様を〈傷〉って言ったんだね。

ゴメン!辛い事聞いちゃったね、カースケ……あ、ユキ、ゴメン‼︎」


『カースケでいいよ。お前がくれた名前だ。省吾もそう呼んでた。

もういいよ。大昔の話だ。忘れてくれ』


永遠は恥ずかしかった。

悩んでいるのは自分だけ、辛いのは自分だけだと思っていたから……

カースケが、こんなに深い傷を抱えて生きて来たなんて想像もしていなかったから……


永遠は、カースケの胸の辺りにそっと掌を当てた。

まるで傷を癒すかのように……


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