2(お小言)
授業を終えて出てきた先生が、座ってるあたしを見て心底呆れたって顔をしたけど、何も云わずに歩き去った。お尻をはたいて立ち上がって、あたしも黙って教室に戻った。クラスの喧騒がぴたりと止んだ。
四時間目とお昼休み、午後の授業も残っていたけど、あたしは荷物をまとめて廊下に出て、保健室に行った。残りの授業なんて知ったこっちゃない。
保健室のベッドは埋まってて、保健の先生に云われるままに丸イスに座って足をぶらぶら時間を潰して、担任が迎えに来なかったから昼休みには帰宅した。学校って退屈。なんでこんなのあるんだろうな。どうして毎朝、出かけちゃうんだろうな。時間通り着いちゃうんだろうな。
どうしてみんなお行儀良くしてられるんだろう。お仕着せの世界。学校、教室、授業と行事。不思議。
*
返却の中間テスト。どうにか二ケタの答案の束とお小言。「今のうちにどうにかなさい」でないと困るわよ。「再来年なんてあっと云う間に来るんだから」
それってもしかしなくても高校受験? 実感ない。一年だから? お誕生日がまだだから? 十三歳になったら焦ったりするのかな。二年生になったら慌てたりするのかな。
担任の吉川先生は若い女の先生で、あたしの心配より自分の心配してるみたいだった。
大丈夫だよ先生。来年は受け持ち違うだろうから。再来年も違うだろうから。そもそも高校って行くものなの? 行かなきゃいけないものなのかな。
でもまぁ、そうだね。
考えるほどのことでもないかな。
「ちゃんと聞いてる?」
眉間に縦じわ、吉川先生。
はい、聞いてました。もちろん格好だけなんだけど。そんな次第で放免。教室に戻る道すがら、職員室ってどうしてあんなに辛気臭いんだろうって考えた。そりゃ先生たちも暗くなるってもんだわ。なんか音楽でも流してたらいいんでないかな、お店みたいに。そしたら少しは楽しくなるんじゃない?
そういうのをイノベーションって云う。
テレビでやってたよ。
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春からの学校行事。クラスマッチ、体育祭。そして秋には文化祭。間近に控えて準備に教室そわそわ。どうにも気分が鬱陶しい。
云われたことはするよ。割り当て? オーケー。担当? オーケー。終ったら帰っていいんでしょ? でも頼まれないなら帰ってもいいんじゃない? なんかオカシイ? どうしてそんな目で見るかなぁ。あたしの割り当て終ったじゃん?