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番外編~木箱の中から、こんにちは~

 僕、リュシーは現在、木箱の中に隠れていた。


「まさかこんな画期的な方法があったなんて、何で僕は今まで気づかなかったんだろう」


 そう得意気に呟きながら、上の開いた空の木箱をかぶって、四つん這いになりながら逃げていた。

 この格好ならばただの木箱でしか無く、しかも移動も出来る優れ物なのだ。

 たまたま台所の周辺で見つけた人参が入っていたと思しき木箱。


 それを見てたまたま何となくその箱のなかに座ってみて気づいてしまったのだ。

 この中なら、僕一人くらいなら入れると。

 しかも裏返しにしてかぶれば移動できると。


 外からは中に僕がいるなんて分からないし、隠れるにはうってつけの箱。

 本当は台所でお菓子を作って、また見逃してもらおうかと思ったのだが、こんな素晴らしい方法に気づいてしまったのだ。

 この才能が憎い、そう僕は思いながら箱に入ったまま移動していた。


 そもそもどうしてこんな事になったかといえば、またもロランにゲームで負けてしまったからだ。

 今度は単純なゲームで、心を読む僕の能力を使えば容易に勝てると思った。

 なのに、なのに!


「さて、また俺の勝ちだ」

「う、嘘だ、そんな……」

「さて、約束通り……」


 襲い掛かられそうだったので、僕は逃走しました。

 この前はお菓子を渡して見逃してもらったので、今回も……そう思って台所に逃走したのである。

 そこでこの人参の木箱を見つけたのだ。


 大体、ロランはおかしいと僕は思うのだ。

 何で目が合った瞬間襲いかかってくるのか。

 物語の悪役じゃあるまいし。


 あんなに求められたらどんなに好きでも逃げたくなるに決まっている。

 僕はそう思いながら、木箱にはいったまま移動して止まりを繰り返す。

 なぜ同じ場所にとどまっていないかといえば、一つの場所よりも、移動した方が出会う確率が少なくて済むかもと期待したからだ。


 ロランの能力は“確率操作”である。

 一箇所に留まっていればすぐに見つけられるという事象の確率が上がってしまうかも……そう僕は考えたからだ。

 なので僕は、この移動型木箱で逃走していたのである。が、


「ん? 何だこの木箱は。……野菜の木箱か?」

(人参て書いてあるな)


 よし、ばれてないと僕は心のなかで思っているとそこで、


「しかし台所からは遠いのに、何でこんな場所に木箱があるんだ?」

(怪しいが、まさかリュシーが入っていたりしないだろうな)


 即効で勘づかれました。

 何故、と僕は思うけれど更にロランは、


「……まさかそこまでアホな行動は取らないだろう。幾らリュシーでも」

(試しに挑発してみるか。リュシーの淫乱ビッチ、ビッチ、ビーッチビチ。何だか生きのいい魚みたいな響だな。確かに生きがいいので、つつくと楽しいが)


 僕は我慢した。

 必死で我慢した。が、


「それで、何時までその中に隠れているんだリュシー」

(ちょっと考えれば分かるよな……)

「……ナカニハ、ダレモイマセン」

「……」

「……」


 小さな沈黙の後、僕はその場から逃走した。

 四つん這いで。

 四足歩行、つまり二足の二倍なので二倍の速さに違いない!


 そう思いながら、シャカシャカとそこから逃げ出した僕だけれどすぐに木箱を掴まれたらしく、動けずにじたばたする。


「まったく、こんなもので欺けると思っている当たりが、リュシーらしいよな」

(アホだな)

「こんなものって、ぼ、僕だって考えがあって」

「考え? 俺から逃げておいてどうするつもりだったんだ?」

(まさか他の男のもとにでも行って、浮気しようと? おかしいな、毎日浮気なんかできなくなるくらい、満足させてたはずだが)

「だから、やり過ぎなんだってば!」

「……俺、随分我慢しているんだぞ?」

(え?)

「え? じゃない! 手加減して欲しい」

「……」

(嫌に決まっているだろう。そもそも勝ったのは俺だから)


 無言になったロランはそのようなことを考えておりました。

 もうどうにでもなれと僕は思って抵抗をやめると、木箱が外されてそして、


「……泥だらけじゃないか」

(俺の銀髪が……)

「相変わらずの髪フェチっぷりに、さすがの僕も苦笑い」

「……こんな状態なのは……はあ、まずは風呂だ。木箱に泥がついていたんだ、一緒に入ろう」

(まったくもう少し、俺がリュシーを大事に思っているって分かれよ)


 嘆息するような心の声とともに、ハンカチで頬の泥が拭かれる。

 それを聞いた僕は目を瞬かせてから僕は微笑み、


「うん、知っているよ。ロランが僕を大事にしてくれていることくらいね」


 そう答えた僕。

 その日はお風呂に入った後、いちゃいちゃして過ごしたのでした。

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