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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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48話 被験者の末路

 歪曲した空間の中は、どこが上か下かわからないようだった。体験した事無いけど宇宙空間みたいな感じかな? まあ無重力みたいなものだ。

 黒と紫が入り混じる奇妙な空間を漂っていると、視界が突然真っ白になる。


「……ここは、どこだ?」


 気づけば見知らぬ場所にいた。青白い壁に囲まれた通路にポツンと一人立っていると、背後からドシンと、何かが落ちて来る音が聞こえる。


「いたた……」


 後ろを振り向けばアルマが背中を押さえながら涙目で座っていた。


「大丈夫か?」


「はい、なんとか」


 手を差し出して身体を起こす手伝いをする。その手をアルマは白い手で掴むと、ゆっくりと起き上がる。


「ここなのか?」


「……おそらく、間違いありません」


 どうやらアルマも見覚えがあるらしく、ここで間違いないらしい。

 それにしても何だろうなこの施設。青白い壁で囲まれて、天上からは細長いガラスがライン上になって通路を永遠と続いており、そこから光を発している。


「場所はわかるか?」


「私がいた部屋の周辺ならわかりますけど、施設全体までは……」


「まあ、出歩く機会なんてなかっただろうしな。仕方ないさ」


 ひとまずここがどこなのかを知るべきだろう。しかしシルファスの奴、重要な場所に送ればいいのに……

 多分あいつは俺がどのような行動に出るか興味があるんだろうな。

 シルファスの面倒な性格に思わずため息が出てしまう。


「とりあえず部屋を回って、それらしい場所へ向かうか」


 静かな通路を歩いていく、途中部屋の扉らしき物や何の部屋か表示する小さな看板が見える。

 その内容は、まだ読めない。一部分なら読めない事も無いが、それだけでは理解できない。


「なあ、あれって読めるか?」


「あれは……更衣室ですね。零さん、目が悪いんですか?」


「いや、実はな……文字が読めないんだ」


「……え?」


 意外そうな顔をする。俺ぐらいの年頃の人なら文字ぐらい読めるのが常識だからだろうな。

 毎日少しずつ習ってはいるんだけど……まだマスター出来てないんだよ。三日もあれば覚えれるとか言ってた自分を殴りたい。


「ちょっと訳があってな、それで今習ってる最中だ」


「そうなんですか」


「理由はまた今度ゆっくり話すよ」


 勿論俺が異世界から来たという事を伏せてな。異世界から来た事喋ると高確率で、頭がおかしい人と思われかねない。

 先が更衣室である扉を見る。物音や話し声が聞こえないことから誰もいないのか?

 そう考えるいると、前方の通路からコツコツという足音が聞こえる。


『それで……』『なあ……』


 話し声も聞こえることから職員だろう。幸い前の通路はカーブを描いており、姿は見えない。だがこのままでは見つかるだろう。

 どうするか考えていると一つの作戦を思いつく。人の気配は感じられなかった、一か八か入ってみるしかない。


「アルマ、隠れるぞ」


「は、はい」


 黒い取っ手を掴み、壁と同じ色の扉を開ける。

 どうやら予想は当たったようで中には誰もいない。ホッと安堵の息をつく。だがそれも束の間の安心。その理由は扉越しに聞こえてきたある言葉。


『そうだ、汚れたし服変えるか』

『それもそうだな』


 一難去ってまた一難。どうやらここに入ってくるようだ。

 慌てた様子で部屋中を見渡す。入り口以外出口がない、それに窓も無いから外にも逃げれない。あるのは灰色のロッカーぐらいで殺風景だ。


「ど、どうしましょうか?」


「出口はこれだけ、逃げる場所はないか」


「倒しますか?」


「いや、戦闘は避けたい。とりあえずロッカーに隠れよう、見つかったら……倒す」


 俺達はロッカーの取っ手を掴み開けていく。だがどれも鍵がかかっているようで開かない。部屋に聞こえるガンガンというロッカーを開けようとする音。

 次、次と順番に開けていくが、開かない。どうやらアルマも一緒みたいだ。

 徐々に声と足音が近づいており、焦りがお互いの心を支配し始める。


「あ! 開きました!」


 どうやらアルマは見つけたようだ、俺はまだ見つからない、そして最後の一つ。

 ゴクリと息を呑んで、それを開けようとする。聞こえた音はガンというロックされている音だけ。マジかよ……

 声が扉の目前に近づいている。あー! こうなったらしょうがない!

 クルッと180度回転すると、向かいのロッカーに走り出す。その目指すロッカーはアルマが見つけた唯一開いた物。


「悪い! 入れてくれ!」


「え? えぇぇ!? 二人も無理ですよ!?」


「どれも開いてなかったんだ、奥に詰めればギリギリいける!」


 そんなことをしていると、扉が開きだす音が聞こえる。

 畜生、もうどうにでもなれ! 俺は無理やり入ると扉を閉める。


「あれ? 誰かいたのか?」

「まさか、この時間に他の奴はいないだろ」


 男達の会話から、夜中は職員の数が少ない事がわかった。どうりであれだけ静かなわけだ。

 すると背中からアルマの苦しそうな声が聞こえる。


「もうちょっとそっち行けませんか……?」


「これが限界だ……」


 やはり二人入るのは厳しかったらしく、かなり窮屈だ。

 そして数分と経たないうちに、中の温度は上がりだし。蒸し暑くなり始める。


『それで……』『でもあれは……』


 くそ、長々と居座りやがって。さっさと行ってほしいんだけど。


「まだ終わりませんかー?」


「まだみたいだ……」


 辛そうに喋るアルマ。俺もだんだん辛くなってきた、熱いし、息苦しいし、何より狭い。暗闇の中で顔を歪めながらそう思っていた。

 するとある会話が耳に入る。


「しかし……あれだけ試して成功したのがたったの10人だったとはな」


「300人ほど試してそのうち使い物になったのは半分ほどだが、その10人以外人の形を保てていないからな」


 300人……それだけの子供達が犠牲になっているのか。そしてその中の半分、150人は……

 考えたくなかった。だが男達の会話からは、その予想を当てるような言葉が俺の心を打ち抜く弾丸のように続々と飛び出す。


「それに半分の中にも獣みたいに理性を無くした子もいたからな……」


「もお処分作業は御免だな。見ろよこの血、うわ…肉片までついてるよ」


 俺はロッカーの上部に空いている細い横線のような穴から覗く。

 そこには赤く染まった白衣を脱ぎ、もう一人の男に見せている。あれはまさか……子供達の……


「処分係になったのが不運だな。どうだ、子供を処分する気分は?」


「最初は慣れなかったが……5人目辺りから慣れたよ。まだ俺はマシなほうだぜ? 他の奴等なんて酷いぞ……手足を切断して殺す奴もいるし、少女の形が残ってれば犯す奴もいたな……正直、あの場所にはいたくないね」


 こいつらの首を押さえて絞め殺してやりたくなった。それほどまでの殺意を心の中から感じた。

 アルマは聞こえていないフリをしているのか、黙って小刻みに震えている。


「うげ……考えたくないな。さすが狂気の集団だな」


「おいおい、俺を一緒にするな。正直きついんだぜ? まだ人の形が残ってると、処分しづらくてなぁ」


「でも人間じゃないし、いいだろ?」


「まあ人じゃないしな」


 人じゃないから殺していいのか? その人じゃない物に変えたのは誰だ? お前らだろ?

 きっと後ろにアルマがいなければ、俺はこいつらを尋問した後、塵に変えて殺していただろう。それほどまでの殺意を覚えていたんだ。

 グッとその感情を押し殺して、我慢した。今は……耐えるんだ。

 男達が去って行き、俺達は静かにロッカーから出てくる。俺の瞳は負の感情に支配された憎悪の目つきをしていた。


「行こう……」


 静かに呟き歩き出す。


「もうこれ以上犠牲を出さないように、子供達を助けよう」


「そうですね……お願いします」


 重い足取りで歩む。こうなる事はわかっていたつもりだった。アルマから話を聞いた時点で在る程度は予想はしていたんだ。

 だが――数が違いすぎる。300人? 狂ってる。そしてまだその数を増やそうとしている。


「早く止めないとな」


 そう呟きながら通路を寂しく二人で進んでいった。




 リリナ達の手がかりを探しながら、通路を進んでいった。色々な部屋などを調べたが特に有力な情報はなく、わからない研究データばかりだ。

 周りを見渡しても窓一つ無い。これだけ窓が無い事から、ここが地下に作られた施設だと判断する。そして来た場所からもうすでに二階は下りている。


「一体どこにいるんだ……」


 どこ見ても青白い壁ばかりの景色。それらしい場所が見当たらない。

 予想としては、ガルム帝国の時のように頑丈な作りになっていると考えているが……


「……ん?」


「どうしてんですか?」


 急に立ち止まった俺を不思議そうに見るアルマ。

 なんだか突然何か腐敗したような臭いがした。


「なあ、何か臭わないか?」


「……そうですね、ちょっと臭いです」


 胸に嫌な予感を抱きながらもその臭いの場所へ導かれるように歩いていく。

 だが先ほどの男達の会話から……心の底ではわかっていたのだろう。だが認めたくなかった、あれは幻聴だと信じたかった。

 そして臭いが発生しているであろう部屋へとたどり着く。他の部屋とは違い、大きめの鉄製の扉だ。そして上に着けてある白いプレートには。


「処理室……」


 アルマが教えるように恐る恐る呟いた。処理室、一体中はどうなっているのか……見たくもないし考えたくもない。

 だが俺は震える手をそっと伸ばし、その扉を掴む。このとき何を考えていたのだろう? あれを見れば俺は感情を暴走させるに違いないと思っていたのに。

 でも開けてしまった。目の前に入ったそれは――地獄だった。


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