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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 一部 神と呼ばれる少女
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9話 さようならの意味

 ここはリンのアパート。あの後俺はリン達と合流して無事に帰った。

 俺は部屋でボーと窓からみえる空を見つめていた。空は暗く二つの惑星が月のように光っている。


『――さようなら』


 どうしてもあの言葉が引っかかる。


「なんで……さようならなんだよ……」


 ボソっと呟く。

 考えても、考えてもわからない。でも気になる、俺の中で何か嫌な予感がしているんだ。

 すると俺の様子に気づいたのかリンが部屋にやってきた。


「あなたさっきからずっと上の空だけど……どうしたの?」


「いや……なんでもない」


「なんでもないわけないよ、零がそんな顔してるの初めて見るもん」


 いつの間にか俺の目の前にリリナがいてびっくりする。

 リリナは俺の瞳をジッと見ていた。こいつらに隠し事は出来ないか……いや俺が下手くそなだけか。


「で? 何があったのよ?」


「まさか軍に追われたの?」


「違うよ。ただ、ある女の子に会ったんだよ」


 女の子と言った瞬間、二人の顔が俺を軽蔑するような目に変わった。

 ちょっとまてなんでそんな眼差しで俺を見てるの?


「……あなたって女たらし?」


「……私を守るって言ったくせに……」


「ちょっと待て、お前達は誤解をしている。女の子って言ってもリリナぐらいの子だぞ?」


 そう言うと今度はリンが少し引いたように俺を見る。今度はなんだよ……


「まさかとは思ってたけど、確信に変わったわ。あなたやっぱりロリコンね」


「おい! 人の話を聞いてからそういうことは言え!」


 どいつもこいつも人の話を聞きやがらない。

 とりあえず誤解を解きつつ、俺はさっきの出来事を話してみた。これで何かが変わるとは思えないけど、何もしないよりはいい。


「妙な女の子ね……確かに不思議な子ね……」


「俺どうしても最後の「さようなら」って言葉が気になるんだよな……」


 リンと二人で悩む。するとリリナが真剣な瞳で俺にとあることを聞いてきた。


「ねえ零。その子の名前ってわかる?」


「確か、ミーシャ・ルーフェルトだっけ?」


 リリナの表情がまるで雷でも撃たれたかのように驚いた顔になる。

 なんだ友達か? 待てよ、友達……いや、まさかそんな偶然はありえない。


「その子……私と一緒で神の子だよ……」


 当たってほしくない、そう思っていたがリリナの口から出たのは悪い結果だった。

 ミーシャは神の子だった。あの手の包帯も天のファートを隠すためのものだろう。

 どうして早く気づいてやれなかったんだ俺は……気づいてやれば保護出来たはずなのに!


「ミーシャは私を外に逃がしてくれた子なの……」


「友達だったのか?」


「……初めて知り合ったのは研究所。ミーシャは私を研究所から逃がしてくれたの。私みたいにならないようにって……」


 まさか……あいつが「さようなら」なんて言ったのは……駄目だ考えたくない。

 俺の中に最悪のケースが想定される。俺はそれを振り払うように頭を振る。


「なあ……あいつが俺に「さようなら」って言ったのどうしてだ?」


「多分……ミーシャ自信の神力が残り少ないんだと思う」


「神力が尽きるとどうなるんだ?」


「……神力が尽きた神の子は……死ぬの」


 「死ぬ」俺はその言葉に絶望した。そして後悔した、何故あの時手を伸ばさなかった? 周りの奴らを消してでも助けてやらなかった?

 それだけの力を持っているはずなのに俺は何も出来なかった。ただ、連れて行かれるのを見ていただけだった……


「だから神の子の寿命が短いわけね……」


「どういうことだよ……?」


「あなたは知らないと思うけど。神の子は1年から長くて3年しか生きられないの。こうやって神力を吸い取られてるから」


 今まで神の子は死んで、また別の子が神の子になり。またその子が死んで……こんなことを、繰り返していたのか? この世界は……

 腐っていると思った。少女の命をなんだと思っているんだと。手が痛い、無意識に拳を力いっぱい握っていた。


「なあリリナ……その子の居場所ってわかるか?」


「零、助けに行くの?」


「ああ。俺はあいつを助ける」


 俺はかけてあるコートを掴み羽織ると、腰に白い刀を挿す。

 するとリンが声を荒げるように俺の肩をつかんだ。


「ちょっと正気なの!? 相手は軍よ?」


「わかってる。でも俺は行く」


「いくらあなたのスキルが強力だっていっても限度があるわよ!?」


「知ったことか。邪魔する奴は全部消す、それだけだ」


 軍だろうと、世界だろうと相手にしてやる。俺はそう誓った。


「あなたねえ! あなたが死んだら、リリナちゃんはどうなるのよ!?」


「…………」


「言ったんでしょ! この子を守るって!」


「わかってるさ!! でもよ……死にそうな奴が……あいつが死ぬかもしれないんだぞ? ほっとけるかよ!」


「そんなの私だってわかってるわよ……でも!」


「零!」


 俺とリンの口論の中、割って入ったのはリリナだった。

 その目はとても凛々しくて、とても11歳の少女とは思えない、そんな感じだった。


「零は助けに行きたいの?」


「当たり前だろ……俺の力は……お前達を、神の子を助けるためにあると思う」


「……零、ミーシャを……助けてくれる?」


「お前は……いいのか?」


「零は私を守るって言ってくれた。でも同じ神の子達も助けてほしいの。あんな運命は嫌だから……」


 お前も、ミーシャだけじゃない。他の神の子達を助けたいと思ってるのか。自分が神の子だから。だからこそ、その痛みが、辛さがわかる。

 俺の命はお前の物。だから俺はお前の意思に従うまでだ。


「零……あの子を助けて、お願い」


「任せろ。運命の鎖なんて……俺が全て消し去ってやるから」


 この全てを消滅させる力で俺は、その運命の鎖なんていうくそったれ、消してやる。

 するとリンが頭を悩ませるように深くため息をつくと、俺の目を見る。


「……全く……あなた達ってバカね。バカ二人組ね」


「バカでもいいさ。バカだから世界に逆らうんだからな」


「わかったわ……その研究所まであなたを送ってあげる」


 リンは俺とリリナを見るとそう言った。

 こいつもなんだかんだ言って俺達と一緒だ。世界に逆らうバカだ。


「ただし、行くのはあなただけよ? 私はリリナちゃんと遠くで一緒にいるわ。最悪、万が一……あなたに何かあったとき、この子だけでも逃げれるように」


「そうしてくれ。その時は、リリナを頼む」


「そんなことが起きないのを願うけどね……」


 リンは「さて!」というと仕度を始める。


「それじゃあ行くぞ!」


 俺達はこうしてミーシャがいるであろう研究所へと向かった。

 たとえ軍だろうと世界だろうと邪魔をするなた消し去る。俺の力であいつを助けてみせる。

 だって約束したもんな、もう一度あの店に、今度はみんなで行くってさ。




 とても研究施設とは思えないほど頑丈な壁や、魔法の結界などによって囲まれている施設。

 その中の一室。床も壁も天井も白く、何もない部屋。その中にオレンジ色の髪をした少女が一人座っていた。


「……どうして……私はこの世界に生まれてきたんでしょうか?」


 自分で自分に質問するように呟く少女。悲しそうに、自分の運命を呪うかのような感じだった。


「未練はないって決めたのに…………どうして……あのお兄さんのことを、思い出すのでしょうか?」


 何もない白い天井を見つめると、そっと目を閉じる少女。

 するとその素っ気ない部屋に一人の青白い白衣を着た男が入ってくる。


「そろそろ時間だNo2」


「わかりました」


「これでお前とも最後になるな……何か言いたいことはあるか?」


「……とくにないです」


「そうか……まあ恨むなら自分の運命を恨むんだな。神の子として選ばれた、自分の運命を」


 そして白衣の男は少女を連れて部屋を出る。部屋の外には数人の武装した黒い軍服を着た男達が二人立っていた。

 少女はその男達と共にその何もない通路を歩いていた。

 突然通路に鳴り響くように「ビー!!」という音が鳴る。その音を聞いて周りの男達は持っていた武器を構える。


「なんだ! 警報!?」


「何が起きている!?」


 その時遠くの通路から別の黒い男が急いで走ってくる。

 焦っているのか、途中でこけそうにもなる。


「た、大変です!!」


「落ち着け! 何があった!」


「侵入者です!!」


「侵入者だと? バカなここはガルム帝国でも2番目に警備が厳しく、ガードが固い場所だぞ?」


「それが、第一ゲートが突破されまして……現在交戦中です……」


 黒服たちが侵入者の情報についてやりとりをしている。どうやらこの研究所はかなり防御が硬いようだ。

 それを破ってきた侵入者というのはかなりすごいのだろうと思わせる。


「数は何人だ? 魔力ランクは測定したか?」


「数は一人……魔力ランクはE……魔力値0です」


「0だと? しっかり計測したのか、0などありえないぞ。それに一人なわけがないだろう」


「それが本当なんです……何度計測しても0です」


 異様な報告に戸惑う男達。この世界では魔力値0はありえない。全国民に魔力は存在する。ない者などはいない……はずなのだ。

 とその時報告に来た男の無線らしき物から声が聞こえる。


『第二ゲート突破されます!! 至急応援を!!』

『なんだあの霧は!?』

『うぁぁぁ!! 身体がぁぁ――』


 無線はその断末魔を最後に消える。おそらく絶命したのだろう。

 男達は鉛を飲んだかのようにゴクリと喉を鳴らす。ただ事ではないと感じたのだろう。

 そして白衣の男が静かに答えた。


「狙いは……神の子か……」


 白衣の男は横目で少女を見る。どうしていまさらこの子を狙って来たのか、それが分からないとった表情をしていた。


「君達は応援に行きなさい。私は予定通り連れて行く。シルファス博士に知恵を貸してもらうとしよう」


 男達はその言葉を聞いて急いで現場へと向かった。

 白衣の男は少女の手を掴むと早歩きで、シルファス博士と呼ばれる人の下へ向かった。


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