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『シークレットガールズ 新世代へ――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『シークレットガールズ Season 3――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』
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3/19

第1話「二代目シークレットガールズ、始動!」


二十五年前、日本中を熱狂させた初代シークレットガールズ。


そして今、その五人の娘たちに新たな運命が訪れます。


母親たちがかつてEYE、MORM、YAH、BEE、LIZ☆だったことを何も知らないまま、芸能事務所へ呼び出された五人。


そこで待っていたのは、小林前社長の実の息子である新社長と、まさかの「二代目シークレットガールズ」結成計画でした。


さらに学校の歴史教師・崇道康熙にも、彼女たちが知らなかったもう一つの顔が――。


普通の中学生だった五人に、新しい「シークレット」が生まれる第1話。


母親たちが二十五年前に歩いた道を、今度は娘たちが歩き始めます。



二十五年前、日本中を熱狂させた五人組アイドル――シークレットガールズ。


EYE、MORM、YAH、BEE、LIZ☆。


その正体が普通の中学生だったことを知る者は、ごくわずかだった。


そして現在。


かつてステージに立っていた五人は、それぞれ母親となった。


その娘たちは、母親たちがシークレットガールズだったことを何も知らない。


だが今日――。


五人の娘たちの人生が、大きく動き始めようとしていた。


◇◇◇


「莉央奈、起きなさい! 遅刻するよ!」


「んー……あと五分……」


「昨日も同じこと言ってたでしょう?」


柴崎家の朝。


柴崎リオは娘・柴崎莉央奈の部屋のカーテンを勢いよく開けた。


「まぶしい!」


「ほら、起きる!」


「分かったってば……」


布団からようやく顔を出した莉央奈を見て、リオは苦笑する。


二十五年前。


自分もこんな普通の中学生だった。


学校へ行き、友達と笑い合い――その裏ではLIZ☆としてステージに立っていた。


だが莉央奈は、その事実を知らない。


「今日、放課後って予定ある?」


突然リオが尋ねた。


「ないけど。陽向と琴音と帰ると思う」


「そう」


「なんで?」


「ちょっと聞いただけ」


「……怪しい」


「何が?」


「お母さん、なんか隠してない?」


一瞬、リオの動きが止まった。


「隠してないよ」


「本当に?」


「早く着替えなさい」


「話そらした」


「遅刻するよ?」


「はーい」


莉央奈はまだ疑わしそうな顔をしていたが、制服を手に取った。


部屋を出たリオは、小さく息を吐く。


「……やっぱり親子だなあ」


秘密に敏感なところまで、自分に似ている。


そしてリオのスマートフォンには、昨日届いた一通のメッセージが残っていた。


――今日、計画を開始します。


送信者は、小林社長の実の息子である新社長だった。


◇◇◇


「おはよう、莉央奈!」


校門前で大きく手を振ったのは藤宮琴音だった。


その隣には相沢陽向もいる。


「おはよう」


「遅い」


陽向が言う。


「まだ遅刻じゃないでしょ」


「俺たち何分待ったと思ってるんだよ」


「十分くらい?」


「十五分」


「ほぼ同じじゃん」


「五分違う」


「細かい!」


琴音が笑った。


「朝から仲いいねえ」


「どこが!」


莉央奈と陽向の声が重なる。


「ほら、そういうところ」


「琴音まで!」


三人は幼い頃から一緒だった。


陽向と琴音にとって、莉央奈は昔から何でも話せる幼馴染。


莉央奈にとっても同じだった。


少なくとも――今日までは。


教室へ入ると、すでに多くの生徒が集まっていた。


「おっ、柴崎!」


早川翔太が声を掛ける。


「おはよう」


「聞いた? 最近、新しいアイドルグループ作るって噂」


「知らない」


「芸能事務所が極秘オーディションやってるらしいぞ」


西野彩花がすぐ話に入る。


「私も見た! SNSで噂になってる!」


「極秘なのにSNSで噂になってるの?」


莉央奈が笑う。


「確かに」


橘ひよりも笑った。


少し離れたところでは、山本結菜が水瀬颯真と話している。


「今日、一緒に帰れる?」


颯真が尋ねる。


「うん。たぶん大丈夫」


「たぶん?」


「お母さんから、放課後は予定を入れないでって言われてるの」


「何かあるの?」


「分からない」


「家族の用事かな」


「たぶんね」


その近くでは森川美空と神谷悠斗も話していた。


「美空」


「なに?」


「今日帰りに寄り道しない?」


「いいよ」


「決まりな」


美空が笑う。


彼女もまだ知らない。


今日から、その「普通の日常」が少しずつ変わっていくことを。


◇◇◇


一時間目。


歴史。


教室へ入ってきた男性教師が、教科書を机に置いた。


「おはよう」


「おはようございます」


崇道康熙。


学校では真面目で穏やかな歴史教師として知られている。


「今日は前回の続きから始める」


康熙は黒板に文字を書き始める。


その視線が一瞬だけ、教室にいる五人へ向けられた。


高野栞。


森川美空。


山本結菜。


荒木美羽。


柴崎莉央奈。


五人は当然、その意味に気づかない。


康熙だけが知っている。


この五人が、新しいシークレットガールズ候補であることを。


そして自分が、二十五年前に初代シークレットガールズを支えた佐藤先生の後継者として、彼女たちを守る立場になることを。


授業終了のチャイムが鳴った。


「今日はここまで」


康熙が教科書を閉じる。


すると次の授業を担当する女性教師が廊下から入ってきた。


「崇道先生、お疲れさまです」


「宍戸先生、お疲れさまです」


英語教師・宍戸美和。


明るく華やかな雰囲気を持ち、生徒からも人気の教師だった。


二人はごく普通の同僚教師として言葉を交わす。


だが――。


本当は婚約者同士。


その事実を知る生徒は、まだほとんどいない。


康熙は何事もなかったように教室を出た。


美和もいつもの教師の表情に切り替える。


「はい、それでは英語の授業を始めます」


誰が見ても普通の教師同士。


二人の間に婚約という大きな秘密があるとは、クラスメイトたちは想像すらしていなかった。


◇◇◇


放課後。


五人のスマートフォンに、ほぼ同時に母親から連絡が入った。


莉央奈が画面を見る。


「え?」


『放課後、指定した場所に来て。大事な話があります』


「何これ」


美羽もスマートフォンを見る。


「私も来た」


「え?」


美空が顔を上げる。


「私も」


結菜も驚く。


「私にも」


栞が静かにスマートフォンを見せた。


五人は顔を見合わせる。


「……全員?」


莉央奈が呟いた。


そこへ琴音が来る。


「莉央奈、帰ろ」


「あ……ごめん」


「え?」


「今日、急に用事できた」


陽向もやってくる。


「なんだよ、朝は何もないって言ってただろ」


「私だって今知ったの」


「何の用事?」


「分かんない」


「じゃあ一緒に――」


「ごめん。今日は一人で行く」


陽向が怪訝そうな顔をする。


「……莉央奈」


「なに?」


「なんか変じゃね?」


「何が?」


「朝から」


莉央奈は一瞬言葉に詰まった。


「気のせい」


そう言って鞄を持つ。


「また明日ね!」


莉央奈は教室を出ていった。


琴音と陽向は、その背中を見つめていた。


「何だろうね」


琴音が呟く。


陽向は答えなかった。


◇◇◇


指定された場所へ向かった五人。


そこは、大きな芸能事務所だった。


「……ここ?」


莉央奈が建物を見上げる。


「芸能事務所だよね?」


美空が言う。


「なんで私たちが?」


美羽も困惑している。


結菜はスマートフォンを確認する。


「場所は合ってる」


栞が入口を見る。


「入るしかないんじゃない?」


五人は恐る恐る中へ入った。


受付では、すでに話が通っていた。


案内されたのは、最上階にある大きな会議室。


扉を開ける。


「失礼します……」


中には、一人の男性が待っていた。


「ようこそ」


五人は緊張しながら並ぶ。


「突然呼び出して申し訳ない」


男性は立ち上がった。


「私は、この事務所の新社長だ」


「社長!?」


美空が思わず声を上げる。


「なんで社長さんが私たちを?」


新社長は微笑んだ。


「それを今から説明する」


そして机の上に、一冊のファイルを置いた。


表紙には――。


SECRET GIRLS PROJECT。


五人はその文字を見つめた。


「シークレット……ガールズ?」


莉央奈が読む。


結菜が首を傾げる。


「昔のアイドルですよね?」


「知っているのか?」


「名前くらいは」


美羽も頷く。


「伝説のアイドルって聞いたことあります」


新社長は五人を見る。


「その通りだ」


そして壁のモニターをつけた。


画面に映ったのは――。


二十五年前のシークレットガールズ。


EYE。


MORM。


YAH。


BEE。


LIZ☆。


五人の娘たちは映像を見つめる。


もちろん気づかない。


画面の中にいる五人こそ、自分たちの母親だということに。


「この人たちが……」


美空が呟く。


「シークレットガールズ」


新社長が頷いた。


「二十五年前、日本中を熱狂させた五人だ」


莉央奈はLIZ☆をじっと見る。


「なんか……」


「どうしたの?」


美羽が尋ねる。


「いや……どこかで見たような気がして」


新社長の表情がわずかに動く。


だが何も言わない。


「今日、君たち五人を呼んだ理由は一つだ」


新社長がリモコンを操作すると、画面が切り替わった。


そこに映ったのは――。


莉央奈。


美羽。


美空。


結菜。


栞。


五人自身の写真だった。


「えっ!?」


「私たち!?」


新社長は立ち上がる。


「君たち五人に――」


一呼吸置いて。


「新しいシークレットガールズになってほしい」


沈黙。


数秒後。


「…………え?」


莉央奈が声を漏らした。


「ええええええっ!?」


五人の声が会議室に響いた。


◇◇◇


「ちょっと待ってください!」


結菜が最初に冷静さを取り戻した。


「どうして私たちなんですか?」


「私、歌手になりたいって言ったことないですよ?」


美羽も言う。


「私も!」


美空が続く。


栞も戸惑っている。


莉央奈は新社長を見る。


「そもそも、どうして私たち五人のことを知ってるんですか?」


もっともな疑問だった。


新社長は答える。


「君たちについては以前から見ていた」


「以前から?」


「もちろん怪しい意味ではない」


新社長は苦笑する。


「新しいシークレットガールズを作るにあたり、候補者を探していた」


「それで私たちが?」


「ああ」


「でも……」


莉央奈はもう一度モニターを見る。


LIZ☆。


なぜか気になる。


理由は分からない。


新社長が続ける。


「今すぐ答えを出す必要はない」


五人を見る。


「ただ、一度だけレッスンを受けてほしい」


「レッスン?」


「その上で、自分には無理だと思えば断ってくれて構わない」


五人は顔を見合わせた。


「どうする?」


美空が小声で言う。


「一回だけなら……」


美羽も迷っている。


結菜は考え込む。


栞も黙っていた。


莉央奈が最後に言った。


「……やってみようよ」


四人が莉央奈を見る。


「私たちがアイドルになるなんて全然想像できないけど、一回やってみてから決めてもいいんじゃない?」


美空が笑った。


「私も、それならやってみたい」


「私も」


美羽が頷く。


結菜も小さく息を吐く。


「分かった」


栞も頷いた。


「一回だけ」


新社長が微笑んだ。


「決まりだな」


そして会議室の扉へ視線を向ける。


「入ってください」


扉が開いた。


五人は一斉に振り返る。


そして――。


「ええっ!?」


そこに立っていた人物を見て、五人は再び驚いた。


「崇道先生!?」


歴史教師・崇道康熙だった。


「どうして先生がここに!?」


莉央奈が叫ぶ。


康熙は学校とは少し違う表情で五人を見る。


「驚くのも当然だな」


「先生、なんで芸能事務所に?」


康熙は答えた。


「今日から私は、君たちのコーチになる」


「コーチ!?」


「学校では歴史教師」


康熙は五人を見る。


「ここでは、二代目シークレットガールズのコーチだ」


五人は完全に言葉を失った。


学校の先生まで秘密を持っていた。


「嘘……」


美空が呟く。


康熙は微笑む。


「君たちには今日から覚えてもらうことがたくさんある」


「まず何を?」


結菜が尋ねる。


康熙の表情が真剣になる。


「最初に覚えてもらうのは歌でもダンスでもない」


五人が康熙を見る。


「秘密を守ることだ」


部屋が静かになった。


「君たちがシークレットガールズとして活動することは、学校では絶対に話してはいけない」


莉央奈が目を見開く。


「幼馴染にも?」


「駄目だ」


結菜が尋ねる。


「恋人にも?」


「話せない」


結菜と美空の表情が変わる。


颯真。


悠斗。


二人の顔が頭に浮かんだ。


「家族は?」


栞が尋ねる。


「家族には事務所から説明する」


五人はまだ知らない。


その家族――母親たちは、すべてを知っていることを。


それどころか、二十五年前に自分たちと全く同じ秘密を抱えていたことを。


◇◇◇


その日の夜。


柴崎家。


「ただいま」


「おかえり」


リオがいつも通り迎えた。


莉央奈は母親の顔を見る。


言いたい。


今日、とんでもない話があった。


自分がシークレットガールズ候補になった。


学校では秘密にしなければならない。


歴史教師の崇道先生がコーチだった。


全部話したい。


だが家族には事務所から説明すると言われている。


「……お母さん」


「なに?」


「今日さ……」


「うん」


「……やっぱり何でもない」


リオは娘を見る。


「そう?」


「うん」


莉央奈は二階へ上がっていった。


リオはその背中を見送りながら、小さく微笑む。


「……頑張ってね、莉央奈」


娘には聞こえない声だった。


その夜。


荒木家。


森川家。


山本家。


高野家。


五人の母親も、それぞれ娘の様子を静かに見守っていた。


娘たちはまだ知らない。


自分たちよりずっと前に――。


母親たちも同じ秘密を抱えたことを。


◇◇◇


翌日の放課後。


五人は初めてレッスン室へ集まった。


鏡張りの部屋。


康熙が五人の前に立つ。


新社長も後ろから見守っている。


「それでは始めよう」


五人が緊張した表情になる。


「今日が、君たちの最初の日だ」


康熙が言う。


「二十五年前、五人の少女がシークレットガールズになった」


壁には初代五人の写真。


EYE。


MORM。


YAH。


BEE。


LIZ☆。


その写真の前に、五人の娘たちが並ぶ。


高野栞。


森川美空。


山本結菜。


荒木美羽。


柴崎莉央奈。


「そして今日――」


康熙が五人を見渡す。


「新しい五人の物語が始まる」


莉央奈は写真のLIZ☆を見上げた。


なぜだろう。


やはり、どこか懐かしい。


美羽もBEEを見つめる。


美空はMORM。


結菜はYAH。


栞はEYE。


誰一人、真実には気づいていない。


自分たちが今見つめている少女たちが――。


二十五年前の母親であることを。


母から娘へ。


初代から二代目へ。


そして――。


二十五年間眠っていた「シークレット」が、再び動き始めた。


二代目シークレットガールズ。


その最初の一歩が、今、踏み出された。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


第1話では、ついに五人の娘たちが「二代目シークレットガールズ」への第一歩を踏み出しました。


突然芸能事務所へ呼び出され、


「新しいシークレットガールズになってほしい」


と告げられた五人。


さらに、学校では歴史を教えている崇道康熙が、実は自分たちのコーチだったという驚きの事実も明らかになりました。


そして彼女たちに課された最初のルールは――「秘密を守ること」。


幼馴染にも、クラスメイトにも、そして結菜と美空にとっては大切な恋人にも、自分たちのもう一つの顔を明かすことはできません。


しかし、娘たちが知らない最大の秘密は別にあります。


自分たちが目標として見つめていたEYE、MORM、YAH、BEE、LIZ☆こそ――二十五年前の自分たちの母親だったこと。


娘たちはいつ、その真実に気づくのでしょうか。


次回、第2話。


五人はいよいよ本格的なレッスンへ。


「普通の中学生」と「秘密のアイドル」。


二代目シークレットガールズの二重生活が、本当の意味で始まります。


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