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『シークレットガールズ 新世代へ――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『シークレットガールズ Season 3――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』
PR
19/19

第11話(最終話)「母から娘へ――受け継がれる五人の秘密」


ついに――。


二十五年間守られてきた、最大の「シークレット」が明かされます。


SHI☆、MIKU♪、YUNA◇、MII♡、LiZ☆。


二代目シークレットガールズとして活動してきた五人が、ずっと疑問に思っていたこと。


どうして母親たちはアイドルのことに詳しいのか。


なぜ歌やダンスについて、まるで経験者のような助言ができるのか。


どうして小林前社長と二十五年前から繋がっているのか。


そして――。


EYE、MORM、YAH、BEE、LIZ☆。


初代シークレットガールズの本当の正体は誰だったのか。


今回、五人の母親たちはついに娘たちへすべてを語ります。


高野愛――EYE。


森川未紀――MORM。


山本麻子――YAH。


荒木まや――BEE。


柴崎リオ――LIZ☆。


母親たちこそが、二十五年前に日本中を夢中にさせた初代シークレットガールズ本人だった――。


そして真実を明かすだけではありません。


普通の中学生だった五人が、どのようにシークレットガールズになったのか。


初めてのレッスン。


初めてのステージ。


学校ではどのように正体を隠していたのか。


友人たちの前で自分自身の話題が出ても、なぜ知らないふりをしなければならなかったのか。


佐藤先生、小林前社長と過ごした日々。


五人で悩み、笑い、時にはぶつかりながら守り続けた、


「何があっても五人」


という絆。


初代シークレットガールズの物語が、母親たち自身の口から一から娘たちへ語られます。


そして今度は、娘たちが自分たちの秘密を母親へ告白しようとします。


「実は私たち、二代目シークレットガールズなの」


ところが――。


母親たちから返ってくる、思いもよらない一言。


「知ってるよ」


母が隠していた二十五年前の秘密。


娘が隠していた現在の秘密。


二つの世代に分かれていた「シークレット」が、ついに一つになります。


Season 3、最終話。


母から娘へ受け継がれる五人の物語を、最後までお楽しみください。



その日。


高野栞。


森川美空。


山本結菜。


荒木美羽。


柴崎莉央奈。


五人は、いつもとは違う場所へ呼ばれていた。


学校でもない。


芸能事務所のレッスン室でもない。


そこは、小林前社長が用意した静かな会議室。


部屋の中央には、大きなテーブル。


そして。


その向こう側には――。


五人の母親たちが座っていた。


高野愛。


森川未紀。


山本麻子。


荒木まや。


柴崎リオ。


さらに。


小林前社長。


新社長。


初代シークレットガールズのコーチだった佐藤先生。


そして二代目のコーチ・崇道康熙。


宍戸美和もいた。


部屋へ入った瞬間から。


娘たちは分かっていた。


今日。


何か大きなことを聞く。


これまで何度尋ねても、


「まだ言えない」


と答えられてきた秘密。


その答えを。


今日こそ――。


聞くことになる。


◇◇◇


「座って」


リオが言った。


莉央奈は母の向かいへ座る。


栞は愛。


美空は未紀。


結菜は麻子。


美羽はまや。


それぞれ、自分の母親の正面。


五人の娘たちは、いつもより静かだった。


美空ですら。


今日は冗談を言わない。


結菜が母親たちを見る。


「今日……話してくれるんだよね」


麻子が頷く。


「うん」


「全部?」


「全部」


栞が小さく息を吸う。


莉央奈はリオを見る。


「この前言ってた秘密?」


「そう」


リオは娘の目を見た。


「私がまだ莉央奈に言えないって言ったこと」


莉央奈は何も言わず頷いた。


その時。


小林前社長が立ち上がった。


「今日ここへ君たち五人を呼んだのは、二十五年間守ってきた秘密を話すためだ」


美空が呟く。


「二十五年間……」


「君たちが最近ずっと調べていたものについて」


五人の表情が変わる。


小林前社長は、壁の大型モニターをつけた。


そこに映し出されたもの。


二十五年前の写真。


EYE。


MORM。


YAH。


BEE。


LIZ☆。


初代シークレットガールズ。


五人の娘たちは、もう何度も見てきた。


莉央奈がLIZ☆を見る。


栞はEYE。


美空はMORM。


結菜はYAH。


美羽はBEE。


小林前社長が静かに言う。


「まず、君たちがずっと知りたがっていた質問に答えよう」


五人が顔を上げる。


「二十五年前のシークレットガールズの正体は誰だったのか」


部屋が静かになる。


娘たちの目が。


モニター。


そして母親たちへ。


自然と行き来する。


「答えは――」


小林前社長は五人の母親を見る。


そして。


「君たちのお母さんだ」


沈黙。


五人は動かなかった。


いや。


動けなかった。


「……え?」


最初に声を出したのは美空。


未紀が娘を見る。


美空はモニターを見る。


「お母さんが……」


声が震える。


未紀はゆっくり頷いた。


「そう」


「MORM……?」


「うん」


美空の目が大きくなる。


その隣。


栞は愛を見た。


「じゃあ……」


愛が頷く。


「私はEYE」


「……」


結菜は麻子へ。


「お母さんは?」


麻子が答えた。


「YAH」


美羽。


「お母さん……」


まやが微笑む。


「BEEだった」


そして。


莉央奈。


最後まで何も言えなかった。


視線はずっと。


モニターのLIZ☆。


母・リオ。


LIZ☆。


リオ。


二つを何度も見比べる。


リオが静かに言った。


「莉央奈」


「……」


「お母さんは」


少し息を吸う。


「LIZ☆だった」


莉央奈の唇が震えた。


「……本当に?」


「うん」


「この人……?」


「そう」


「LIZ☆が……お母さん?」


「うん」


莉央奈はしばらく何も言わない。


そして。


「やっぱり……」


小さく呟いた。


リオが驚く。


「え?」


「やっぱり似てたんじゃん!」


「……」


「ずっと似てるって言ってたのに!」


突然。


莉央奈が立ち上がった。


「お母さんずっと『似てない』って言ってたじゃん!」


「ごめん!」


「笑い方も!」


「うん」


「目元も!」


「うん」


「髪を耳にかける癖も!」


「……そこまで見てたの?」


「見てた!」


リオは苦笑した。


「だって本人だもん……」


「それ最初から言ってよ!」


「言えなかったの!」


美空も立ち上がる。


「じゃあうちのお母さんのターン!」


未紀。


「……MORM時代の」


「やっぱり!」


結菜も麻子を見る。


「康熙コーチと同じアドバイスしたのも」


「YAH時代に覚えたこと」


美羽。


「MII♡のダンス見てすぐ分かったのも」


まや。


「BEEとして踊ってたから」


栞。


「ステージで緊張した時の視線の話も?」


愛。


「EYEとして経験したから」


娘五人。


「……」


答え合わせ。


これまでの違和感が。


全部。


一気に繋がった。


◇◇◇


美空が両手で頭を押さえた。


「ちょっと待って!」


結菜が言う。


「美空」


「無理! 情報多い!」


「落ち着いて」


「落ち着けないよ!」


未紀が苦笑する。


「気持ちは分かるけど」


「お母さんが言わないで!」


「はい……」


美空はモニターを見る。


「じゃあ私、ずっとMORMの動画お母さんに見せてたの?」


「そう」


「『この人すごいね』って?」


「そう」


「本人に!?」


「そう」


「恥ずかしい!」


未紀は笑った。


「私は嬉しかったよ」


「それ言わないで!」


一方。


美羽はまやを見ながら目を潤ませる。


「私……BEE好きって言ったよね」


「言った」


「その時……」


「嬉しかった」


まやが優しく答える。


「すごく」


美羽は俯く。


「なんか……恥ずかしい」


「どうして?」


「だって知らないで自分のお母さん推してたんだよ?」


「いいじゃない」


まやは笑う。


「娘に推してもらえるなんて、すごく嬉しいよ」


美羽も少し笑った。


◇◇◇


結菜は麻子へ尋ねる。


「じゃあ……小林前社長とは」


「昔から知ってる」


小林前社長が答える。


「私はこの五人をずっと支えていた」


「中学生の頃から?」


「そう」


莉央奈が尋ねる。


「じゃあこの前カフェで会った時」


「全部知っていた」


「なのに知らないふり?」


「申し訳ない」


小林前社長が頭を下げる。


美空が言う。


「前社長、嘘下手だったよ」


「二十五年前はもっと上手かったんだけどね」


未紀が笑う。


「私たちが下手になった」


「そうだな」


少しだけ、緊張が和らぐ。


◇◇◇


栞が静かに尋ねた。


「でも……どうして?」


愛が娘を見る。


「何が?」


「どうして二十五年間も隠してたの?」


その質問。


五人の母親たちが顔を見合わせる。


リオが答える。


「簡単に言えば、シークレットガールズだったから」


莉央奈。


「でももう活動終わってたんでしょ?」


「うん」


「だったら私たちには話しても良かったじゃん」


「そう思うよね」


リオは頷く。


「でも、まず一つ」


母親五人を見る。


「私たちは、あの頃のことを大切な思い出として五人の中に残しておきたかった」


愛。


「それに普通の母親として子どもを育てたかった」


未紀。


「『元アイドルのお母さん』じゃなくてね」


麻子。


「子どもたちが、自分の人生を自分で選べるように」


まや。


「私たちの過去の影響を受けすぎないように」


リオが続ける。


「だから言わなかった」


莉央奈は黙って聞く。


「でも」


リオの表情が変わる。


「二代目シークレットガールズの話が出た時、本当に悩んだ」


美空。


「私たちが選ばれた時?」


「そう」


未紀が答える。


「言うべきか、言わない方がいいか」


麻子。


「結局、小林さんと新社長と相談して、最初は言わないことにした」


結菜。


「どうして?」


新社長が立ち上がった。


「それは私から説明します」


五人が新社長を見る。


「君たちには、自分自身の力で二代目シークレットガールズになってほしかったからです」


「自分自身……」


「もし最初から『君たちは初代の娘だから選ばれた』と知ったら」


新社長が続ける。


「君たちはどう思った?」


五人は考える。


美羽が答える。


「……親のおかげ?」


「そう思ったかもしれない」


新社長は頷く。


「でも実際は違う」


「違う?」


「初代の娘ということは、きっかけの一つだった」


五人を見る。


「でも最終的に選んだのは、君たち自身を見たからです」


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


「歌が最初から完璧だったわけではない」


「ダンスも」


「秘密を守ることも」


「失敗もした」


莉央奈が少し気まずそうにする。


メンバーパス事件。


康熙が苦笑。


「でも」


新社長は続ける。


「今ステージに立っているのは、君たちだ」


「初代ではない」


「母親たちでもない」


「君たち自身が努力して、二代目シークレットガールズになった」


娘五人は静かに聞いていた。


その言葉。


何度か聞いた。


でも。


今は意味が違う。


◇◇◇


莉央奈が言った。


「じゃあ」


全員が見る。


「初代シークレットガールズのこと」


「うん」


リオが答える。


「最初から全部教えて」


母親たちが顔を見合わせる。


「全部?」


「全部」


莉央奈はモニターを見る。


「どうやって始まったのか」


栞。


「どうして秘密だったのか」


美空。


「どんなレッスンだったのか」


結菜。


「学校ではどうしてたのか」


美羽。


「どんなことがあったのか」


そして。


「どうやって終わったのか」


五人の娘たち。


真剣な目。


愛が微笑む。


「じゃあ」


「うん」


「最初から話そう」


二十五年前。


初代シークレットガールズの物語。


母親たち自身の口から。


一から。


娘たちへ。


語られることになった。


◇◇◇


「最初はね」


小林前社長が話し始める。


「まだ五人全員が今のような仲だったわけじゃない」


モニター。


昔の写真が切り替わる。


まだ幼さの残る五人。


愛。


未紀。


麻子。


まや。


リオ。


「普通の中学生だった」


リオが言う。


「今の莉央奈たちと本当に同じくらい」


未紀が笑う。


「学校行って」


麻子。


「勉強して」


まや。


「友達と遊んで」


愛。


「恋とか将来とか、普通に悩んでた」


美空。


「本当に普通?」


「本当に」


未紀が笑う。


「少なくとも表向きは」


そして。


小林前社長。


「そこから、芸能活動へ関わるきっかけが生まれた」


話は続く。


歌。


ダンス。


初めてのレッスン。


初めて衣装を着た日。


そして。


五人に伝えられた最大のルール。


『正体は絶対に秘密』


「どうして?」


栞が尋ねる。


小林前社長。


「普通の学校生活を守るため」


「人気が出れば、学校が知られたら大変なことになる」


「生徒が集まる」


「マスコミも来る」


「家族にも影響する」


「だから」


愛が続ける。


「学校では普通の中学生」


未紀。


「学校を出たらシークレットガールズ」


麻子。


「二つの顔を使い分けてた」


娘五人は顔を見合わせる。


今の自分たちと同じ。


「じゃあ」


結菜が言う。


「学校で自分たちの話題が出たら?」


五人の母親が一斉に笑った。


「知らないふり」


麻子が答える。


「本当に?」


「本当に」


未紀が笑う。


「『私MORM好き!』って本人の前で言われたことある」


美空。


「ええ!?」


「私もLIZ☆好きって言われた」


莉央奈がリオを見る。


「どうしたの?」


「知らないふり」


「絶対笑うでしょ」


「我慢した!」


美羽。


「BEEも?」


「もちろん」


栞。


「EYEも?」


愛が頷く。


「何度も」


結菜。


「YAHも?」


麻子。


「同じ」


娘たちは笑った。


自分たちも。


今。


同じ経験をしている。


学校の友達。


クラスメイト。


ファンたち。


本人とは知らずに。


目の前で推しについて話してくる。


二十五年前も同じだった。


◇◇◇


そして。


佐藤先生の話。


「この人が」


リオが佐藤先生を見る。


「とにかく厳しかった」


佐藤先生が笑う。


「今さら言うのか」


「本当じゃん!」


未紀も。


「めちゃくちゃ厳しかった!」


「お前たちが下手だったからだ」


美空が康熙を見る。


「同じだ」


「何が?」


「康熙コーチと同じ」


康熙。


「俺は佐藤さんの後継者だからな」


莉央奈が佐藤先生へ尋ねる。


「LIZ☆もターン何回もやった?」


「やった」


「私と同じ?」


「驚くほど同じ」


リオが苦笑。


「そこまで似なくていいのに」


佐藤先生は続ける。


「五人に一番伝えたかったのは、技術だけじゃない」


娘たちが見る。


「五人で一つ」


母親五人の表情が変わる。


二十五年前。


何度も言われた言葉。


「一人だけ上手くても意味がない」


「誰かが失敗したら支える」


「誰かが悩んだら聞く」


「誰かが前へ出る時は残りの四人が背中を押す」


そして。


「何があっても五人」


未紀が懐かしそうに呟く。


「それ、私たちの合言葉みたいだった」


美空。


「何があっても五人……」


結菜が他の四人を見る。


自然と。


今の二代目にも重なる。


◇◇◇


母親たちは。


さらに一つ一つ。


語っていった。


ステージデビューの日。


「緊張した?」


栞。


愛が即答。


「した」


「EYEでも?」


「EYEだからって緊張しないわけじゃない」


リオ。


「私、舞台袖で手震えてた」


莉央奈。


「私と同じじゃん」


「親子だからね」


初めて歓声を浴びた瞬間。


歌詞を間違えそうになったこと。


ダンスが揃わなかったこと。


五人で意見がぶつかった日。


「喧嘩したことも?」


美羽。


まやが頷く。


「あるよ」


「五人とも?」


「ずっと仲良しだけじゃない」


麻子。


「意見が違うこともある」


愛。


「でも最後にはちゃんと話した」


恋の悩み。


学校の成績。


家族。


将来。


芸能活動。


普通の中学生。


人気アイドル。


どちらも捨てたくなかった。


だから苦しんだ。


そして。


秘密。


「友達に話したくなったことある?」


莉央奈。


リオ。


「何度も」


美空。


「恋人には?」


未紀が少し笑う。


「言いたかった」


結菜は颯真の顔を思い出す。


美空は悠斗。


今の自分たちと。


本当に同じ。


「じゃあ」


結菜が麻子を見る。


「第5話の時に私が相談したこと」


「うん」


「お母さん、自分も経験してたんだ」


「そう」


「だからあんなに分かったんだ」


「うん」


麻子は娘へ優しく微笑む。


「言いたいのに言えない気持ち、知ってたから」


◇◇◇


そして。


学校で正体がバレそうになった出来事。


「あるの?」


莉央奈が食いつく。


「ある」


リオ。


「どんな?」


「色々」


「色々って!」


未紀が笑う。


「あなたのメンバーパス事件みたいなのもあったよ」


莉央奈が固まる。


「……やっぱり」


リオ。


「お母さんも芸能関係の物を学校に持ってきたことある」


「なんで親子で同じミスしてるの!?」


「知らない!」


娘たちが笑う。


だが。


母親たちは、同じ怖さも経験していた。


一歩間違えば。


正体が発覚する。


五人の学校生活が変わる。


ファン。


マスコミ。


家族。


全部に影響する。


「だから」


リオが言う。


「莉央奈がパスを持って行ったって聞いた時」


「うん」


「本当はすぐ言いたかった」


「何を?」


「『お母さんも同じ失敗した』って」


莉央奈は少し笑った。


「言ってくれればよかったのに」


「LIZ☆だったってバレるでしょ」


「確かに」


二人が笑う。


◇◇◇


次に。


小林前社長との思い出。


「小林さんは」


愛が言う。


「私たちが学校生活を続けられるように、本当に色々守ってくれた」


未紀。


「スケジュールも」


麻子。


「秘密も」


まや。


「家族のことも」


リオ。


「何度も助けられた」


娘たちは小林前社長を見る。


「だから」


栞が言う。


「お母さんたちとあんなに仲良かったんだ」


「そう」


小林前社長が微笑む。


「私にとって、この五人は特別だった」


そして。


新社長を見る。


「だから息子へ」


新社長が頷く。


「父から、この五人の話は小さい頃から何度も聞いていました」


美空。


「だから最初から知ってたんだ」


「はい」


「私たちのお母さんが初代だって」


「もちろん」


五人がため息。


「大人たちみんな知ってた……」


康熙。


「俺も」


美和。


「私も」


莉央奈。


「先生たちまで!」


美和が苦笑。


「ごめんね」


◇◇◇


そして。


佐藤先生と康熙。


「本当に親戚なんですよね」


美羽。


「そうだ」


佐藤先生が答える。


「遠いけどな」


康熙。


「佐藤さんの父親の兄、その妻側の親族関係を辿った先が俺」


美空。


「やっぱり説明長い!」


部屋に笑いが広がる。


佐藤先生。


「でも不思議な縁だ」


二十五年前。


自分が初代を指導。


二十五年後。


親戚である康熙が二代目を指導。


「アイドルも世代交代」


「コーチも世代交代」


「社長も世代交代」


美羽が言う。


小林前社長から息子へ。


佐藤先生から康熙へ。


初代から二代目へ。


本当に。


全部繋がっていた。


◇◇◇


そして。


初代シークレットガールズの活動の終わり。


娘たちの表情が少し真剣になる。


「最後は?」


栞が尋ねる。


「どうして終わったの?」


母親五人は少し静かになった。


愛が答える。


「大きな喧嘩が原因とかじゃない」


麻子。


「誰か一人が辞めたからでもない」


まや。


「私たちが、それぞれの未来へ進む時が来たから」


未紀。


「いつかは普通の女の子に戻る時が来る」


そしてリオ。


「五人で話して決めた」


寂しかった。


泣いた。


最後のステージ。


最後の曲。


最後の挨拶。


「これで終わるんだ」


そう思った時。


五人とも泣いた。


でも。


後悔はなかった。


「だって」


リオは四人を見る。


「シークレットガールズが終わっても」


未紀。


「五人の関係は終わらない」


麻子。


「二十五年経っても」


まや。


「今も」


愛。


「こうして五人だから」


娘たちは母親たちを見る。


初代シークレットガールズ。


もうステージには立たなくても。


五人は今も。


初代のままだった。


◇◇◇


その時。


美空が言った。


「……ずるい」


未紀が驚く。


「何が?」


「こんなすごい話、今まで秘密にしてたこと」


「ごめん」


「でも……」


美空は少し笑う。


「聞けてよかった」


栞も。


「私も」


結菜。


「なんか、今までのお母さんの言葉の意味が全部分かった」


美羽。


「BEE好きって言った時、なんであんなに驚いたのかも」


まや。


「本当に嬉しかったから」


そして莉央奈。


「じゃあ……」


「うん」


「LiZ☆って名前」


リオを見る。


「やっぱり、お母さんのLIZ☆から?」


新社長が答える。


「少し意識しました」


「やっぱり!」


「ただし」


「?」


「初代の完全なコピーにはしたくなかった」


モニター。


LIZ☆。


LiZ☆。


「だから表記も少し変えた」


莉央奈は二つの名前を見比べる。


母から娘。


同じ響き。


でも。


別のアイドル。


「……好き」


「え?」


リオ。


「この名前」


莉央奈は笑う。


「今までよりもっと好きになった」


リオの目が少し潤む。


「ありがとう」


◇◇◇


すると。


結菜が言った。


「じゃあ今度は」


母親たちを見る。


「私たちからも話す番だよね」


母親五人が顔を見合わせる。


もちろん知っている。


でも。


娘たちは。


母親が全部知っているとは思っていない。


美空も気づく。


「あ!」


莉央奈。


「そうじゃん!」


美羽。


「私たちも秘密ある!」


栞。


「お母さんたちが話してくれたんだから」


結菜が頷く。


五人は立ち上がる。


「私たちも話そう」


母親五人。


小林前社長。


新社長。


佐藤先生。


康熙。


美和。


全員。


少し笑いを堪えている。


莉央奈が言う。


「お母さん」


「なに?」


「実は……」


「うん」


「私」


少し緊張。


「二代目シークレットガールズなの」


リオ。


「……」


「LiZ☆」


「……うん」


莉央奈が止まる。


「……え?」


リオ。


「うん」


「反応薄くない?」


美空も未紀へ。


「私MIKU♪!」


「知ってる」


「え?」


結菜。


「私はYUNA◇」


麻子。


「知ってる」


美羽。


「MII♡」


まや。


「知ってる」


栞。


「SHI☆」


愛。


「知ってるよ」


娘五人。


「…………」


沈黙。


そして。


「ええええええええええっ!?」


会議室が揺れるほどの声。


◇◇◇


「ちょっと待って!」


美空が叫ぶ。


「知ってたの!?」


未紀。


「うん」


「いつから!?」


「最初から」


「最初から!?」


莉央奈がリオを見る。


「お母さん知ってたの!?」


「うん」


「私がLiZ☆だって!?」


「うん」


「じゃあ!」


莉央奈は頭を抱える。


「私がお母さんにアイドルの相談してた時も!?」


「全部知ってた」


「LIZ☆の動画見せた時も!?」


「知ってた」


「メンバーパス事件も!?」


「新社長から聞いた」


「全部じゃん!」


リオが笑う。


「ごめん!」


結菜も麻子へ。


「じゃあ私が颯真に秘密にして悩んでたことも」


「ある程度」


「……」


美空。


「悠斗のことも!?」


未紀。


「相談されたから」


「私だけ全部しゃべってた!」


部屋に笑い声。


美羽が小さく言う。


「なんか……お互い秘密持ってるつもりだったのに」


栞が続ける。


「お母さんたちは全部知ってた」


小林前社長が笑う。


「初代の母親たちだからね」


◇◇◇


莉央奈は少し頬を膨らませる。


「ずるい」


リオ。


「何が?」


「お母さんは私の秘密全部知ってたのに」


「うん」


「私はお母さんの秘密知らなかった」


「ごめん」


でも。


莉央奈は笑った。


「まあいいや」


「いいの?」


「うん」


母を見る。


「だって今日、全部聞けたから」


リオも笑う。


「ありがとう」


そして。


莉央奈は少し迷った後。


母へ抱きついた。


リオが驚く。


「莉央奈?」


「LIZ☆」


「え?」


「ずっと動画で見てたLIZ☆が」


母の胸元へ顔を寄せる。


「お母さんだったんだ」


リオは娘を抱きしめ返した。


「そうだよ」


「なんか不思議」


「私も」


隣。


美空も未紀へ抱きつく。


「MORM!」


「急にステージネームで呼ばないで!」


「だってMORMなんでしょ!」


「今はお母さん!」


結菜は麻子へ。


「YAH」


「なんか照れるね」


美羽。


「BEE」


「久しぶりに呼ばれた」


栞。


「EYE」


愛は微笑む。


「懐かしい」


母と娘。


初代と二代目。


二つの世代が。


初めて。


本当の意味で繋がった。


◇◇◇


少し落ち着いた後。


小林前社長が、古い箱を持ってきた。


「これは」


机の上に置く。


開ける。


そこには。


初代シークレットガールズの思い出。


写真。


ライブのパンフレット。


当時のメンバー証。


レッスンノート。


そして。


五人のステージネームが書かれたカード。


EYE。


MORM。


YAH。


BEE。


LIZ☆。


娘たちは目を輝かせる。


「本物?」


「本物」


愛が答える。


栞がEYEのカードを持つ。


美空。


MORM。


結菜。


YAH。


美羽。


BEE。


莉央奈。


LIZ☆。


そして。


隣へ。


現在のカード。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


二世代。


十枚。


机の上に並んだ。


誰もすぐには言葉を発しなかった。


二十五年。


長い時間。


その時間を越えて。


シークレットガールズという名前が。


母から娘へ。


受け継がれている。


◇◇◇


佐藤先生が言った。


「二代目」


五人が見る。


「はい」


「一つだけ覚えておけ」


「何ですか?」


「初代を超えようとする必要はない」


五人が驚く。


「え?」


「初代は初代」


佐藤先生は母親五人を見る。


「二代目は二代目」


康熙も頷く。


「俺も同じことを言うつもりだった」


「お前たちは、お前たちのシークレットガールズを作れ」


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


「母親たちの真似じゃなく」


「自分たち五人で」


「新しいものを」


娘たちは頷く。


「はい」


◇◇◇


新社長も立ち上がった。


「そして」


全員が見る。


「ここで一つ、報告があります」


美空。


「何ですか?」


新社長は父・小林前社長を見る。


前社長が頷く。


「二代目シークレットガールズは、これから活動をさらに広げます」


五人の表情が変わる。


「今まで以上に?」


「はい」


「テレビ出演」


「新曲」


「ライブ」


「学校との両立」


「そして、新しい出会い」


康熙が言う。


「忙しくなるぞ」


MIKU♪。


「今でも忙しいのに!」


LiZ☆。


「康熙コーチ絶対もっと厳しくなる!」


「当然」


「やっぱり!」


笑い。


だが。


新社長は少しだけ意味深な表情になる。


「それだけではありません」


結菜。


「まだあるんですか?」


「あります」


「何?」


「それは――」


一瞬。


間を置く。


「次のシーズンで」


美空。


「ええー!」


全員が笑う。


◇◇◇


その日の帰り。


母娘十人は、建物の外へ出た。


夜。


空には星。


莉央奈はリオの隣を歩いていた。


「お母さん」


「なに?」


「今度、LIZ☆だった時の映像一緒に見よう」


リオが驚く。


「いいよ」


「昔の写真も」


「今度は隠さなくていいからね」


「全部見せる」


「本当に?」


「多分」


「多分?」


「恥ずかしい写真もあるから」


莉央奈が笑う。


「絶対見る!」


「やっぱり隠そうかな」


「駄目!」


少し前。


美空と未紀。


「MORMの振り付け教えて!」


「覚えてるかなあ」


「ターンできたじゃん!」


「全部は無理!」


結菜と麻子。


「今度、YAHの時の話もっと聞かせて」


「いいよ」


美羽とまや。


「BEEの衣装残ってる?」


「一部なら」


「見たい!」


そして。


栞と愛。


「EYEだったお母さんも」


「うん」


「今のお母さんも」


愛が娘を見る。


栞は微笑んだ。


「どっちもお母さんなんだね」


愛も微笑む。


「そうだよ」


◇◇◇


翌朝。


学校。


何も変わらない。


莉央奈は陽向と琴音と登校。


結菜は颯真。


美空は悠斗。


クラスメイトたちは。


今日も二代目シークレットガールズの話。


「昨日のLiZ☆見た!?」


「見た!」


「SHI☆最高!」


「MIKU♪!」


「YUNA◇!」


「MII♡!」


本人たちは。


今まで通り。


知らないふり。


でも。


一つだけ違う。


母親たちに。


もう隠す必要はない。


◇◇◇


歴史。


康熙が教壇に立つ。


「授業を始める」


五人は普通の生徒。


授業終了。


廊下。


美和。


「崇道先生、お疲れさまです」


「宍戸先生、お疲れさまです」


二人の婚約関係。


それも。


まだ一般の生徒には秘密。


五人は顔を見合わせる。


美空が小声。


「秘密、まだいっぱいあるね」


結菜。


「声」


「ごめん」


莉央奈が笑う。


「でも」


四人が見る。


「秘密があるのも悪くないかも」


栞。


「どうして?」


「だって」


莉央奈は笑った。


「私たち、シークレットガールズだから」


五人が笑う。


◇◇◇


放課後。


芸能事務所。


レッスン室。


壁。


二つの写真が並べられた。


二十五年前。


EYE。


MORM。


YAH。


BEE。


LIZ☆。


初代シークレットガールズ。


その隣。


現在。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


二代目シークレットガールズ。


康熙が五人の前に立つ。


「準備はいいか?」


「はい!」


「今日からまた新しいスタートだ」


LiZ☆。


「昨日全部知ったから?」


「それもある」


SHI☆。


「初代のことも?」


「知った」


YUNA◇。


「でも私たちは二代目」


「その通り」


MIKU♪。


「じゃあ!」


MII♡。


「いつも通り」


五人が並ぶ。


手を重ねる。


母親たちが二十五年前。


同じように。


五人で手を重ねたように。


LiZ☆が言う。


「何があっても?」


四人が笑う。


「五人!」


康熙も微笑む。


「よし」


音楽。


五人が踊り始める。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


母親たちのコピーではない。


初代の代わりでもない。


自分たち自身の。


新しいシークレットガールズ。


◇◇◇


その日の夜。


初代五人のグループチャット。


リオ。


『やっと話せたね』


未紀。


『長かった!』


麻子。


『二十五年』


まや。


『でも良かった』


愛。


『うん』


少しして。


新しい写真。


母娘十人。


EYEとSHI☆。


MORMとMIKU♪。


YAHとYUNA◇。


BEEとMII♡。


LIZ☆とLiZ☆。


二世代のシークレットガールズ。


そして。


小林前社長から新社長へ。


佐藤先生から崇道康熙へ。


夢。


友情。


秘密。


すべてが次の世代へ。


二十五年前。


五人の普通の中学生から始まった物語。


そして今。


その娘たちが。


同じように。


普通の中学生と秘密のアイドル。


二つの顔を持ちながら。


新しい青春を走り始めている。


母から娘へ。


初代から二代目へ。


受け継がれたのは。


名前だけではない。


五人で支え合うこと。


秘密を守ること。


夢を諦めないこと。


そして。


何があっても――。


五人でいること。


シークレットガールズ Season 3。


「母から娘へ、受け継がれる五人の秘密」


その物語は。


ここで一つの区切りを迎える。


しかし。


二代目シークレットガールズの青春は。


まだ始まったばかり。


テレビ。


新曲。


ライブ。


学校。


恋。


友情。


そして。


新たな秘密。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


五人の前には。


まだ誰も知らない、新しい物語が待っている。


そして――。


『シークレットガールズ Season 4』


へ。


二代目シークレットガールズの、新たな青春が始まる。



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


『シークレットガールズ Season 3――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』


第11話をもって、Season 3は完結となります。


ついに明かされた、二十五年間の真実。


高野愛は――EYE。


森川未紀は――MORM。


山本麻子は――YAH。


荒木まやは――BEE。


柴崎リオは――LIZ☆。


これまで娘たちが映像や写真で見てきた初代シークレットガールズは、知らない誰かではありませんでした。


ずっと一番近くにいた――自分たちの母親だったのです。


特に莉央奈は、何度もLIZ☆を見ながら、


「お母さんに似てる」


と感じていました。


目元。


笑い方。


仕草。


そしてダンスの癖。


当然です。


LIZ☆と柴崎リオは、同一人物だったのですから。


そして、美空が未紀のターンを見て感じた違和感。


結菜が麻子から聞いた、五人で動きを合わせるための助言。


美羽がBEEに惹かれ続けたこと。


栞が愛のステージに関する知識を不思議に思ったこと。


これまで積み重なってきたすべての疑問に、ようやく答えが出ました。


さらに今回は、初代シークレットガールズの物語についても、母親たち自身の口から一から娘たちへ語られました。


学校では普通の中学生。


放課後には秘密のアイドル。


クラスメイトが目の前で、


「EYEが好き」


「MORMが好き」


「YAHが好き」


「BEEが可愛い」


「LIZ☆が好き」


と話していても、自分が本人だとは絶対に言えない。


友達にも、恋人にも、簡単には話せない。


正体が知られそうになって焦ったこともある。


レッスンで失敗したこともある。


五人でぶつかったこともある。


それでも、佐藤先生から教えられた、


「シークレットガールズは五人で一つ」


という言葉を胸に、五人は青春を駆け抜けました。


そして二十五年後――。


今度は娘たちが、まったく同じ道を歩いています。


SHI☆――高野栞。


MIKU♪――森川美空。


YUNA◇――山本結菜。


MII♡――荒木美羽。


LiZ☆――柴崎莉央奈。


しかし、二代目は初代のコピーではありません。


新社長や佐藤先生、康熙コーチが語ったように、


「初代は初代。二代目は二代目。」


母親たちが築いた伝説をそのまま再現するのではなく、今度は五人自身が、自分たちだけのシークレットガールズを作っていくことになります。


そして今回、娘たちも母親へ自分たちの秘密を打ち明けようとしました。


ところが――。


「知ってるよ」


母親たちは最初から知っていました。


自分の娘が二代目として選ばれたこと。


レッスンに苦戦していたこと。


恋人や幼馴染に秘密を話せず悩んでいたこと。


莉央奈がメンバーパスを学校へ持ち込んで正体発覚寸前になったこと。


娘たちは母親に秘密を隠しているつもりだった。


母親たちもまた、二十五年前の秘密を娘に隠していた。


けれど最終話で、ようやくその二つが一つに繋がりました。


初代から二代目へ。


母から娘へ。


小林前社長から、実の息子である新社長へ。


佐藤先生から、親戚でもある崇道康熙へ。


二十五年前から続いてきた人々の想いも、役目も、秘密も、次の世代へ受け継がれています。


しかし――。


二代目シークレットガールズの物語は、まだ終わりません。


むしろここからが、本当の始まりです。


母親たちの正体を知ったSHI☆、MIKU♪、YUNA◇、MII♡、LiZ☆。


これからは初代の経験を直接聞くこともできます。


けれど、学校ではこれまで通り秘密。


陽向や琴音。


颯真や悠斗。


クラスメイトたち。


そして校内に増え続ける二代目シークレットガールズのファン。


彼らには、まだ五人の正体を明かすことはできません。


さらにテレビ出演。


新曲。


ライブ。


より大きなステージ。


学校生活との両立。


恋と友情。


そして、まだ誰も知らない新たな出来事。


母親たちの過去を知ったからこそ始まる、新しい二代目シークレットガールズの物語があります。


Season 3――完。


そして物語は――。


『シークレットガールズ Season 4』へ。


母親たちから真実を受け継いだ二代目五人の、本当の挑戦が始まります。


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