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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第24話:死神の逆行、狂った乱数(ランダム)

第24話をお読みいただきありがとうございます。

絶対無敗の死神・リボルの崩壊。

ついに迷宮の主との決着の瞬間。明かされるシステムの真実とは…

大広間に響き渡った爆発音の余韻が、鉄錆の壁に反響して不気味な唸りとなって消えていく。

火花を散らし、黒煙を上げるスロットマシン。そのリールは、停止することなく高速で回転を続け、天界システムの制御を失った機械の悲鳴を上げ続けていた。


「……っ、ハァッ、……ハァ……っ!」


リボルの肩が、激しく上下している。

玉座から立ち上がったその姿に、先ほどまでの「死神」としての余裕は微塵もなかった。逆立った黒髪の下、三つの赤い瞳は血走り、困惑と怒りで濁っている。


「テメー……、何をしやがった……! システムが、俺の『確約』が、弾かれただと……!?」


リボルの足元、影のように広がっていた13の紋章が、ノイズのように激しく明滅する。

彼にとって、この迷宮での勝利は「絶対」だったはずだ。天界の寵愛を受け、因果を書き換え、負けるはずのないゲームを繰り返す。それが彼の存在意義だった。だが今、目の前に立つ戦闘力5の男によって、その前提が根底から覆されようとしている。


「……ふぅ。…さてな、俺の運命がお前より強かった…そういうことだろ?…なあ、三奈。」


俺はわざとらしく肩をすくめながら、隣の三奈に視線を送った。


「うん、マスターは戦闘は弱っちいけど、運命は飛び切り強力。」


三奈はそう言って、俺の腕に柔らかく自らの腕を絡めた。

その仕草は親愛に満ちているが、リボルを見据える瞳には、(かたき)を見るような鋭さが宿っている。彼女はこの状況を、エイトと共に戦うこの「ロール」を、心の底から愉しんでいた。


「……エイト、大丈夫なの? 本当に……」


イチカが、俺の背後から恐る恐る顔を出す。彼女の瞳には涙が溜まっているが、俺が倒れないことを信じ、その場に踏み止まっていた。彼女の純粋な祈りが、この狂った確率の檻の中で、唯一の「正しい因果」として機能しているような気がした。


「ああ、大丈夫だ、イチカ。……さあ、リボル。お喋りの時間は終わりだぜ。……四発目、いや、通算五発目だ。次はあんたの番だろ?」


俺はテーブルの上に置かれた魔導銃を、リボルの方へと指先で押し出した。

シリンダーは既に停止している。残る薬室は二つ。そのうちの一つには、行き場を失った膨大な殺意が込められている。


「……ふ、ふざけるな……。俺が、この俺が、こんなゴミみたいな男に……っ!」


リボルは震える手で銃を掴み取った。

その瞬間、迷宮全体の振動が激しくなる。壁のスロットマシンが次々と図柄を狂わせ、揃うはずのない『7・7・7』が不吉な黒い光を放って並び始める。


「マスター、気をつけて。あいつ、ヤケクソになってる。自分の命ごと、システムの基幹エンジンを回して……無理やり『当たり』をこっちへ飛ばそうとしてる」


三奈の声に、緊張が走る。

リボルは銃を自分のこめかみに当てるどころか、その銃口を俺たちの方へと向けようとした。ルールを、ゲームそのものを破壊しようとする暴挙。


「……そこまでだ、リボル」


俺の声は、低く、重く、広間を支配した。

戦闘力などは関係ない。勝負の「理」を握っているのは、今やこの俺だ。


「あんた、忘れてるぜ。……このゲームの主権は、もう天界システムにはねえ。……俺と、あんたの『意地の張り合い』に変わってんだよ」


俺は一歩、リボルの懐へと踏み込んだ。

銃口が俺の胸元に向けられる。だが、俺は微塵も怯まなかった。

リボルの指が引き金にかかる。だが、その指は石のように固まって動かない。


「……な、……動かねえ……っ!? 指が、言うことを……っ!」


「マスターの言う通り。……おっさんは天界に依存しすぎた。システムが混乱してる。……この迷宮にとって、おっさんは『取り除くべき失敗作(エラー)』なんだよ」


三奈が冷たく告げると同時に、リボルの左手の紋章が焼けるような音を立てて煙を上げた。

「ぎぁぁぁぁっ!!」

絶叫と共に、リボルは銃を取り落とす。

重厚な金属音が響き、銃は床を滑って俺の足元へと戻ってきた。


「……皮肉なもんだな。システムを味方に付けていたつもりが、最後はシステムに見捨てられるとは」


俺は銃を拾い上げ、リボルの目の前でゆっくりと構えた。

シリンダーを弾く。

カチカチカチ……。

死のカウントダウン。


「……待て、待ってくれ! 悪かった、俺の負けだ! 触媒でも何でも持っていけ! だから、その引き金を……っ!」


「ギャンブラーが、命のやり取りの最中に命乞いか? ……興醒めだぜ」


俺は冷ややかに言い放ち、銃口を空へと向けた。

あいつを殺すのに、この呪われた銃を使う必要はない。

システムの崩壊は止まらない。リボルの身体は、彼が殺してきた冒険者たちと同じように、足元からノイズとなって消え始めていた。


「三奈、イチカ。……行くぞ。ここが崩れる前に、一番奥にある『触媒』を回収する」


「了解、マスター。……死神、口ほどにもなかった。」


三奈はリボルを一瞥することなく、俺の隣を歩き出した。

イチカも、俺の腕をしっかりと抱きしめ、前を向く。


背後では、リボルの絶望に満ちた叫びが、迷宮の回転音に飲み込まれて消えていった。

彼は誰に撃たれることもなく、自らが愛し、依存したシステムそのものに食い潰されたのだ。


俺たちは、崩れゆく迷宮の最深部へと、光を求めて突き進んだ。

三十路のギャンブラーにとって、本当の「勝ち」は、ここからイチカを連れて生還することだけだ。

第24話、いかがでしたでしょうか。

リボルという強敵に対し、力ではなく「システムの矛盾」を突いて自滅させる。

次回、第25話。

迷宮の最深部で待つ『器』の触媒。

しかし、そこにはリクドウやニカをも凌駕する、さらなる世界の『歪み』が隠されていました。

お楽しみに!

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